そういう時に限って裏切られる

風が強くなってきているが、探索は非常に順調。

ルーフェイスがいるお陰で、モンスターの不意打ちを食らうこともない。


あと、盗賊に関しては……まぁ、こんなところに現れないな。

個人的にちょっと警戒してたけど、さすがに盗賊たちもこんなエリアに来てまで、誰かを狩ろうと思わないってことか。


「ラガス坊ちゃま、そろそろ準備を始めた方がよろしいかと」


「……そうだな。よし、野営の準備を始めるぞ」


既に雪原での野営経験は体験しているが、それでもちょっと吹雪が鬱陶しい。

岩の壁をつくったのでテントが吹き飛ばされてしまうことなどはないが、それでも邪魔であることに変わりはない。


とはいっても、チートアビリティを持ってたとしても、天候までは変えられないからな。


「あんたたち……ちょっと良いアイテム持ち過ぎじゃない?」


外で夕食を食べるのは不可能なので、俺のマジックテント内で夕食を食べることになったのだが、その際初めて入ってきたイーリスがまた文句? を言い始めた。


「どうだろうな。まっ、これも努力した結果……だと思うぞ」


「いや、努力だけでどうにかなるものじゃないでしょ」


別にそんなことはないと思うけどな。

魔靴の依頼料とかで貯金している金を使えば、こんな感じのマジックテントは買えると思うぞ……多分な。


「まっ、別に良いだろ。ほら、食べようぜ」


マジックテントの中にはキッチンもあるので、メリルたちが本日狩ったモンスターの肉などを使ったささっと料理を作ってくれた。


疲れたというほど動いてはいない気がするが、食べる手が止まらない。


「……なぁ、見張り大丈夫か?」


「えぇ、大丈夫です……そうですね、心配してくださるなら、防寒対策の付与弾を貰っても良いでしょうか」


あらら、心の内を見透かされてたみたいだな。


「分かった。寝る前に全員に撃っとくよ」


さすがに翌朝までは持たないけど、幾分かまっしになるだろ。


防寒対策のマジックアイテムを身に付けてるから、凍え過ぎて超動きが鈍くなるってことはないと思うけど。


「ありがとうございます。ところで、後何日探索を続けますか?」


「……二日だな。三日目に入ったら、街に戻る」


今のところ順調だから、もっと探索期間を伸ばせそうだけど、自分たちが解らないだけでかなり消費してるかもしれない。


できれば明日、明後日以内にお目当てのモンスターが見つかって欲しいところだけど……天候次第では、明後日も内に帰ることも視野に入れておくか。


ただ、翌日……起きてテントの外に出ると、吹雪の音は聞こえなかった。

上は入ってくる雪を防ぐために閉じている。


真っ暗になると何も見えないので、木に火を灯して明かりにしているから出口がどこにあるかは解る。


「止んだ、みたいだな」


岩の壁から外に出ると、吹雪は完全に止んでいるのが確認出来た。


涼しい程度の気温になってるし……今日、明日は大丈夫そうだな。

だからといって、それ以上雪原に留まるつもりはないけど。


そして俺が起きてから数分後、セルシアとイーリスも起きたので朝食タイム。

朝食を食べ終えたら、再びお目当てのモンスターを探し始める。


つっても、全然見当たらないから正直、諦めてる部分があった。

でも、予想ってそういう時に限って裏切られるんだよな。


『ラガス、あれ』


『おう、お目当てのモンスターみたいだな……一名多いけど』


昼食を終えてから一時間後、ようやく探していたモンスター、ヘイルタイガーと遭遇。

あちらは殺る気満々といった面をしているので、逃げるようなことはないだろう。


ただ、ヘイルタイガーは一頭ではなく、二頭。

これはちょっと予想外だ。


ヘイルタイガーはあんまり群れないモンスターって聞いてたんだけどな……今そこを気にしてもしょうがないか。


『ルーフェイス、片方を頼んでも良いか』


『任せて。あんまり傷付けない方が良いよね』


『そうだが……あんまり無理しなくて良いからな』


それを気にし過ぎて怪我を負って欲しくないしな。

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