過保護は鬱陶しい?
「……分かったわ」
「随分すんなり受け入れるんだな」
俺だけの言葉では、すんなり納得するとは思っていなかったので、ルーノさんとリタさんにも協力を仰いだ。
なのに、俺がヘイルタイガーとアイスドラゴンの戦闘には参加しないでくれと伝えると、意外にもあっさり頷いた。
少しの間があったから、あっさりではないかもしれないが、それでも少しは駄々をこねると思ってたんだけど……これはちょっと予想外だな。
どういう心境の変化なんだ?
俺だけじゃなくて、メリルとシュラ……護衛の騎士であるルーノさんとリタさんまで驚いてるぜ。
「今日の戦いで、今の私がCランクモンスターと戦えば実力は互角……相手の戦闘スタイルによっては、相手の方が
有利だって解った」
「基本的にその考えで間違っていないな」
属性の相性ってのもあるけど、Cランクモンスターからは全体的に身体能力が高くなる。
魔法使いタイプであるイーリスにとって、どの相手も厳しいと感じるだろうな。
「Bランク以上の相手なら、尚更私が割って入れる部分はない……強くなりたいという気持ちはあるけど、私はラージュ先輩みたいに素早くは動けないし。使う攻撃の相性も良くない」
「……珍しく冷静に分析出来てるじゃないか」
「そうしないと、成長出来ないって……今になって気付けたのよ」
それは良かった。
でも、才能がある人物なら十三歳ぐらいだと……まだ自分の才能に酔いしれているってイメージがあるし、そう考えると早い成長なんじゃないかな。
「気付いてくれて幸いだ。というわけで、イーリスには目的のモンスターと遭遇した際には、戦闘中に他のモンスターが乱入してこないかを見張っておいて欲しい」
「分かったわ……ところで、セルシアはその戦いに参戦するの?」
「…………」
厄介な質問が来たな。
イーリスにとっては不満で不屈な答えかもしれないが……正直に答えておこう。
「ヘイルタイガーとの戦闘には、参加してもらおうと考えてる。セルシアの全力の速さなら、Bランクモンスターのスピードにも対応出来る」
紫電崩牙のお陰という点に関しては、セルシアにとって不服かもしれないが、紫電崩牙込みで攻撃力もヘイルタイガーと戦うには十分。
「…………アイスドラゴンとの戦いにも、参加させるのかしら」
「アイスドラゴンとの戦いに関しては、決定的な攻撃場面だけだな」
「決定的……つまり、通常時は戦闘に参加させないってことね」
アイスドラゴンはAランクのモンスターだからな。
情報によると、Aランクの中でもそこまでスピードに優れてはいないが、ドラゴンの中でも比較的攻撃範囲が広いという情報を得ている。
つまり、高くないスピードを補う攻撃方法がある。
その点を考えると、常時戦闘に参加してもらうのは超不安が残る。
てか、Bランクモンスターとの戦闘でも、不安は残るんだけどな。
でもセルシアとしては、ヘイルタイガーとの戦いであれば……引きがりたくないラインだと思う。
パートナーである俺が戦闘に参加するからとかそういう理由ではなく、集団で戦うなら、丁度良い壁と認識している。
「俺もだけど、セルシアは防御力が高くないからな。一撃でも致命傷を食らえば、マジで危ない」
一応魔弾の技の中に回復弾があるけど、致命傷といえるほどの傷は治せない。
そんで、うちのパーティーにはヒーラーがいない。
先日のオーガの群れを潰した件で、他家の当主から貰ったお礼の品の中に高級ポーションとかあるけど……結局、攻撃を食らわない事に越したことはないんだ。
「だから、アイスドラゴンとの戦いでは局所的な攻撃を任せるかな……それとイーリス、ちょっとは丸くなったみたいだけど、まだセルシアのことを心配してるみたいだな」
「当たり前でしょ。友達の心配をしないわけないじゃない」
そうかも。
当たり前かもしれないが、お前のそれはちょっと違う気がする。
「イーリス、お前はセルシアの親じゃないんだよ。セルシアの性格的に、過保護だといずれ鬱陶しがられるぞ」
「ッ!!!???」
はは、変な顔。
でも……間違ったことは言ってないからな。
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