爆弾で重荷
夕食を食べ終わり、自室に戻って……一人で頭を悩ませていた。
「そうだなよな……あんまり先延ばしにはしてられない」
ザックス、レイア、ミリア。
あの三人の人生に関わる問題だ。
リーベの元婚約者であるフィーラ・アザルトが起こした問題。
本人の気持ちを考えれば……本当に少し、一ミリ以下ぐらいは理解出来るが、その気持ちがゲインで起こした問題だ。
貴族の家に生まれた者として、基本的には避けられない内容。
リーベが漫画やラノベに出てくるような糞ったれゴミ野郎なら、アザルトさんの味方をしていたと思う。
ただ……リーベは本当に良い奴過ぎる。
アザルトさんに対して好き勝手にふるまうのではなく、丁寧に……自分に心を許してくれるように、十分に気を使ってアザルトさんと心を通わせようと努力していた。
俺との特訓も……本人にとっては、かなり厳しい内容だったみたいだし、それを乗り越えてライバルと向き合った。
本当なら、実家の権力を使ってひとまずライド君を学園から退学させて、王都から追放……なんてことも出来なくはない、筈。
なのに、実家の力……権力を使わずに俺に頼み込んでライド君に勝てる力を手に入れようとして……見事勝った。
その勝負には見事勝利した。
あれは本当に良い勝負だった……こんな事思うのは失礼なんだろうけど、十分に金が取れるほど白熱した戦いだった。
その戦いにリーベは勝った。
でも……試合に勝って、勝負には負けた。
あの涙は今でも忘れない。
勿論、リーベの気持ちを踏みにじったアザルトさんはそれ相応の罪というか罰を背負うことになった。
ただ………………そこからが問題なんだよな~~~~。
「はぁ~~~~~……くそったれ」
「どうしたんですか、いきなり悪態をついて」
「言わなくても分かるだろ」
「……アザルト様に対して、ですね」
「そうだ」
様なんて付ける必要はねぇ……って思いだけど、それをメリルに言っても無駄か。
「私的には、随分と愚かな事をしたと思っています」
「メリルと同意見っすね。リーベ様みたいな漢を捨てるとか、普通はあり得ないっすよ」
「俺もそう思うよ……でも、そういうことなんだろ」
その普通の考えを、アザルトさんは出来なかったんだ。
いや、脳内がお花畑過ぎたというべきか。
「ただなぁ~~。ザックスたちにとって、ライド君は……俺からすれば、セルシアやロックス、リーベと同じ存在だ」
おそらくだが、ライド君は今のところアザルトさんを見捨てるようなことはしない。
平民出身というだけなら、貴族の事情は知らなくてもおかしくは……平民出身ってだけでも、多少の事情なら解るか?
そこはひとまず置いといて、ハンターの学校とはいえそこには貴族の令息や令嬢も多くいる。
そんな場所で生活を続けていれば、多少なりとも事情は分かる筈だ。
「それでも、戦ったんだよな……それはそれで漢なんだが、お先真っ暗だ」
「金の話っすよね」
「そ、お金の話だ」
親友の彼女が、恋人が大量の借金を背負ってるからって……じゃあ、その縁を簡単に切るような奴らか?
いや、それはそれで良い判断なんだ。
寧ろザックスたちが自らその判断をしてくれるなら、特に言うことはない。
その判断を悔んでいたとしても、立派な判断だと俺は言葉にする。
「ハンターとして成功すれば金は稼げる。でも、当然だがその金を稼ぐには……それなりに金を使って準備しなければならない」
そんなこと、ハンターを育成する学園に通ってるザックスたちなら、もう十分解ってる筈だ。
にもかかわらず、あんな爆弾というか重荷を背負った状態でスタートとか……どんな罰ゲームだよって話だ。
「ラガス坊ちゃま。彼らが決断したのであれば、その意思を尊重するべきではないでしょうか?」
「……そういった考えもなしではないだろう。けど、今は良かったとしても……後々、歳を取ってから後悔したんじゃ、遅いんだよ」
それは前世がある俺だからこそ、現時点で解る考えだ。
その想いを上手く伝えられたら良いんだが……あいつらに嫌われる覚悟で、厳しい事を言わないと駄目なのかもな~。
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