誰が戦うという選択ならば、一人しかいない

「それじゃ、確実自由に動いてくれ。ただし、あまり深い場所には行くなよ」


……先生の表情を見るに、多分俺以外の生徒に対して言ってるんだろうな。

逆に、俺らは深い場所に行った方が良さそうだ。


でも……俺たちだけじゃなくて、リーベにとってもあまり浅い場所にいたら、良い経験にならないと思うんだが……リーベが一緒に組んでる同級生のレベルを考えれば、無理して奥に行かないのが賢明か。


「ラガス、僕らはどうする?」


「俺たちは深い場所……というか、他の生徒たちとあまり場所が被らないところに行こうと思う」


「他の生徒たちの獲物を取ってしまわない様に、ということですね」


「上から目線な考えかもしれないけど、そうした方が良いと思うんだよ」


低ランクのモンスターが相手なら、例えどんなに数が多くても倒し切れる。

俺たちの実力がぶっちぎりに高いということもあるけど、ロックスだって低ランクのモンスターぐらいなら苦戦せず倒せるだろう。


そういう事情を考えると……やっぱりDランクかCランクのモンスターを相手にするのが一番だ。


「確かに、その通りかも…………でも、Bランクモンスターの、ポイントまで、書かれてある」


「過去に生徒がBランクモンスターを倒したって例があるからじゃないか」


「いえ、ラガス坊ちゃまがいるからではないでしょうか」


俺がいるから? 実力を評価してくれるのは嬉しいけど……過去に例があるからって理由の方が正しいと思うんだが。


「大会で余裕を残しながら全勝したのですよ。先生方も、ラガス坊ちゃまであればBランクのモンスターを倒せてもおかしくない……そう考えていても不思議ではありませんよ」


「メリルさんの言葉が正しいと僕は思うよ。確かに貴族の令息や令嬢の中でとび抜けた強さを持つ生徒ってのは毎年いると思うけど、ラガスみたいに出れる試合に全部でて全勝して……尚且つ余力を残していた生徒はさすがにいないと思うね」


……ロックスまでそういうなら、俺が先生達から評価されてるって考えの方が正しいのかもな。


「でもさ、普通に考えてBランクのモンスターとそう簡単に遭遇はしないだろ」


「この前は、遭遇したよ、ね」


ま、まぁ確かに前回は超珍しくアサルトワイバーンと遭遇してから、また後日にオルトロスと遭遇したけど……あれはいくらなんで偶然過ぎるって話だ。


「短期間でアサルトワイバーンとオルトロスに遭遇したって話だよね。基本的に恐ろしい内容なんだろうけど……ラガスからすれば、楽しい内容だったんでしょ」


「楽しいというか……貴重な体験ではあったな」


簡単に体験できる戦闘ではないからこそ、悪いとは思わなかった……素材としても優秀だから、討伐出来て良かったと思ってる。


オルトロスに関しては、結果的に色々と重なって鉱石を採掘する時間を削られる形になったけどな!!


「しかし……配られた洋紙にBランクのモンスターが記されているのであれば、遭遇する可能性がゼロとは言えません。仮に遭遇した場合はどうなさいますか」


「誰が戦うかってことか?」


「誰が、という選択肢ですと、どう考えても一人で戦えるのはラガス坊ちゃましかいませんよ」


「うん。そうだと、思う」


「メリルさんの言う通りだね。少しずつ強くなれてるって感覚はあるけど、さすがにBランクのモンスターをソロで倒せるのはラガスだけだよ」


ん~~~……ルーフェイスでも一人で狩れるとは思うけどな。

それに、セルシアも紫電崩牙を使えば……激戦にはなると思うけど、それなりに勝機はある気がするんだよな。


まぁ、でもアルガンツ先生の言う通り、俺たちはまだ候補生なんだから無茶する必要はない、か。


それなら俺とルーフェイスで倒すのが一番手っ取り早いな。


「ワゥ!!」


「おっ、早速一体目の獲物と遭遇だな」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る