まだ候補生だ
目的の街に到着した後、一泊だけゆっくりベッドで睡眠を取り……翌日からようやく演習がスタート。
宿で朝食を食べ終えると、直ぐに街を出て森の中の開けた場所に向かう。
「全員に紙を一枚ずつ渡す。なくすんじゃないぞ」
各パーティーに一枚、同じ内容が書かれた紙が配られた。
紙を受け取ると……森の中で主に生息しているモンスターの名前と、素材と魔核のポイントが書かれていた。
「見て解ると思うが、ランクの高いモンスター素材や魔核ほど、ポイントが高い」
そりゃそうだろうな。
ランクが低いモンスターの方がポイントが高かったら、訳分からんくなる。
「先生、えっと……何ポイント取れば、どういった評価が付くのか書かれていませんが」
ハンター科を専攻している生徒の一人がそんな質問をした。
そういえば……確かにそういった評価の基準? 的なものは掛かれていないな。
書き忘れか? でもアルガンツ先生がそんなミスをするとは思えない。
「あぁ、それはな……お前らが無茶しない様にわざと書いてないんだよ」
「無茶をしない様に、ですか?」
「その通りだ。お前たちが高ポイントのモンスターを遭遇した時、そのモンスターを倒して素材と魔核を手にいれば、高い評価を得られる状況に遭遇したら……俺は迷うことなく、お前たちには今回の演習の為に雇ったハンターたちに助けを求めてほしいと思っている」
今回の演習では、俺たちがモンスターに万が一殺されない為に、それなりに腕が立つハンターを多く雇っている。
生徒たちにもしものことがあれば、学園としても非常に困るだろうし……この辺りはキッチリお金使ってるみたいだな。
「普段であれば、お前たちも冷静な判断を下せるだろう。だが……我々は人だ。目の前の高ポイントという欲が存在すれば、冷静に対処出来ずに欲を取ろうとし……死んでしまうかもしれない。そうならない為にも現役のハンターたちを雇っている訳だが、基本的にはモンスターと戦う権利はお間たちが持っている」
そうなんだよな~~~。パーティーメンバー全員が手を上げれば、それが周囲にいるハンターたちに助けを求める合図となる。
どうしようもない場合であれば、ハンターたちは生徒たちの判断を待たずにモンスターを潰すらしいが……それでも、生徒たちが死力を尽くせば敵を倒せていた……なんて未来が決してゼロではない。
ゼロではないからこそ、後々そこが問題になることもある。
雇われたハンターとしては、ギルドから……もしくは学園から良い評価を貰いたいので、絶対に生徒を死なせたくない。
だが、演習に参加する生徒たちは今回の演習でなるべく良い評価を得たい。
その為なら、自分たちよりも格上の相手に挑む覚悟は持っている……って感じの目をしてるな。
そこら辺の塩梅というか、バランス? が難しいんだろうな……生徒が死ぬにしろ、もう少しで倒せたのにハンターがこれ以上は無理だと判断して倒したとても……後々面倒な事になりかねない。
「言っておくが……誰か一人の判断で、仲間の命が奪われる可能性がある……これは今回の演習に限った話ではなく、お前たちが実際にハンターとなって活動を始めれば……その一つの判断ミスで、仲間を殺してしまうことがある」
……多分だけど、実際に知り合いにそういう事をやってしまった人がいるんだろうな。
それで、亡くなった人もアルガンツ先生の知り合い……かな?
目の奥に、薄っすらと怒りの火が見える。
「勝てないと思えば、素直に助けを求めるんだ。ハンターとして活動を始めれば……いずれ死ぬかもしれない。死んだとしても、戦闘職である以上……それは仕方ない。だが、お前たちはまだハンター候補生といったところだ。まだ……自分の命を戦場にベットする必要はない」
先生が言ってることは正しいし、話を聞いてる現役のハンターさんたちもうんうんと頷いてる。
同級生たちも分かってるとは思うけど……さてさて、どうなることやら。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます