自分だけに意識を向けさせる

「うぉぉおおおあああああッ!!!!!」


楽しそうだな~、シュラの奴。

ワイルドグリズリーの群れに一人で突撃するのは傍から見れば頭おかしいだろうけど。


「全く……考え無しに突っ込むのは止めてほしいところですが、案外そうでもないようですね」


「そうだな」


ワイルドグリズリーの群れと遭遇した瞬間、俺に行っても良いかという目を向けてきた。

勿論、先程強いモンスターと遭遇したら戦っても良いと言ったので、挑んでも良いぞという目を返した。


そしたら一直線に突撃。

ちなみにワイルドグリズリーのランクはC。

Cランクのモンスターの中でもパワーは上位鵜の位置し、数は五体。


ハンターの中でもランクが高い接近戦タイプの人じゃないと、ワイルドグリズリー五体に一人で挑んだりしないだろうな。


「ラガス君、彼は凄いな」


「俺の自慢の従者ですからね。それに、執事枠のトーナメントでは他の従者を押しのけて一位になってます」


「ふむ、そういえばそうだったな……君の従者でなければ、是非ともスカウトしたいところだよ」


ロウレット公爵様がスカウトしたいと思う、か……中々良い評価を付けられてるってことだな。


まぁ、恐れ知らずなだけじゃなくて突っ込んだ瞬間に全力で殺気をワイルドグリズリーたちに向けた。

そのお陰で三体ぐらいがシュラの相手をして、他二体がこっちに襲い掛かって来るということはなかった。


殺気一つで、全員で攻撃しないと倒せないって思わせた……やっぱりただ猪突猛進なだけじゃないんだよな。


「……鬼人族という考慮しても、彼の身体能力は非常に高いですね」


「鬼人族なら当たり前かもしれませんが、シュラは大剣や素手での接近戦をメインに鍛えています。学園に入学する前では、今の様に多数のモンスターに一人で挑むことは決して珍しくありませんでした」


「なるほど。であれば、あれほど上手く……敵の数に惑わされることなく戦えることに納得です」


確かに五対一だとどっかのタイミングで良い一撃を貰ってしまうか。


でも、スピードではシュラの方が上。

それに加えて羅門は使ってないけど、その状態を除けばかなりガチで戦ってる。


シュラがワイルドグリズリー五体という戦力を嘗めてない証拠だ。

ワイルドグリズリーの毛皮や骨は脆くないと思うけど、シュラは魔闘気を全力で使用してる。


がっつり当たらなくても、骨に罅が入る……もしくはチョップや蹴りで切られる場合もある。

シュラの攻撃はワイルドグリズリーにとって、どれも必殺になる一撃だ。


アビリティの技を使用しなくても、十分に戦えている。


「……やっぱり、シュラも凄い、ね」


「そりゃシュラだからな」


あまりシュラ以外の鬼人族が戦うところは観たことないけど、それでも鬼人族の中で跳び抜けた存在だと思う。

後はまぁ……俺やメリルと同じで、鍛錬と実戦を重ねてるからな。


五対一という戦いでスムーズに攻撃を加えて、相手の攻撃を躱すにはそれなりに慣れてないと……うん、それこそ本当にボコボコにされる。


俺もそれなりのモンスターと三対一で戦った時は、正直魔弾がないと危ないって思う場面があった。

シュラも同じく、初めてある程度強い複数体のモンスターを相手にする時、今ほど上手く戦えてはいなかった。


こう……もっと腕力と防御力に身を任せて戦ってる感じ? って印象が強かった。


でも、今は鋭い攻撃を与えるだけじゃなく、上手く躱して受け流している。


「私は、あそこまで上手く、戦えない」


「ん~~~~……それはどうかな? 上手く戦うことは不可能じゃないと思うけどな」


「紫電崩牙を使えば、上手く倒せるかもしれない、けど……使わなかったら、シュラほど上手く、早くは倒せない」


上手く早くか……そこはセルシアの言う通りかもしれないな。

セルシアのスピードなら相手が複数でも、そう簡単に捕まらないと思う。


ただ、サクッと首を断つか脳か心臓を刺せるかは……ちょっと微妙なところ、か。


シュラも一撃は骨を砕いて内臓を潰す威力がある。

もう戦闘が終わりそうなところを考えると、セルシアがまだシュラに敵わないと思うのは当然か。

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