元の姿になって
「ラガスさん今の戦意は……」
「結構強そうなやつが近くにいるみたいだな」
人とモンスターの戦意の違いはなんとなくだが分かる。
少し離れた場所から感じた戦意はかなり強烈という、荒々しいというか……聞こえてくる戦闘音からしてもそこら辺にいるモンスターとは思えない。
「ふむ……どうするかね? 判断はラガス君に任せる」
えっ!? ここはロウレット公爵様が判断してくれる場面じゃないの?
最年長なんだし俺じゃない方が……アリスタさんは何も言わなさそうだし、本当に俺に判断を任せるっぽいな。
「私は、気になる」
「俺も気になるっすね」
セルシアとシュラはいったいどんなモンスターが戦ってるのか気になるみたいだな。
俺も気になるから戦うか否かはおいといて、強烈な戦意を放つモンスターの正体は知りたい。
「私はラガス坊ちゃまの判断に任せます」
『僕もラガスの判断に任せるよ!!!』
メリルとルーフェイスも俺に判断を任せる形か……いや、二人だけじゃなくてキリアさんとルーンも一緒か。
ん~~~~…………この面子ならある程度強くても負けないか。
よし、とりあえず近づいてみよう。
「戦うか否かは実際に見てから決めます。ひとまず戦闘音がする方向に向かいます」
Aランクモンスターが戦ってるなら、急いで離れる。
戦力を考えると……ロウレット公爵様とアリスタさんがいても五分五分?
もしかしたら少し有利かもしれないけど、全員が無事に戻れるか分からない。
「ふふ、良い判断だ」
い、良い判断なんですか?
危険な場所に向かうから決して良い判断ではないと思うが……アリスタさんが何も言わないみたいだから、厄介なモンスターがいても二人がなんとか出来るんだろうな……本当にヤバかったら、存分に頼らせてもらおう。
昼飯は少し残っていたが、そのまま残して戦闘音が聞こえる場所へと向かった。
すると……そこには数体のフォレストタイガー……の、死体が転がっていた。
「ワイバーン?」
パッと見、先程まで戦闘音や咆哮が聞こえていた場所に生存しているモンスターはワイバーン……なんだけど、何か違和感を感じる。
過去にワイバーンと戦ったことがあるので、その見た目と雰囲気は覚えてる。
ただ……違う。何かが違う。
「あれは、アサルトワイバーンだ」
「ッ!? あ、あれが……なるほど、どうり普通のワイバーンとは見た目が少し違い、雰囲気も異なるわけだ」
一般的なワイバーンはCランクのモンスターだが、アサルトワイバーンは一つ上のBランクに位置する実力を持つ。
ランクが上なだけあり、通常のワイバーンよりも身体能力が高いらしいけど、一番違うのは……その獰猛な戦闘欲と狂暴性。
らしいんだけど…………うん、そのどちらも分かる。
フォレストタイガーのランクはアサルトワイバーンの一つ下のC。
アサルトワイバーンが上から攻撃出来るって利点を考えればアサルトワイバーンが有利なのは分かるけど………それでも四体を一度に倒してる。
それに、多分………体に付いてる血は返り血だよな。
「さて、ラガス君。多分、逃げられないね」
「そうみたいですね………ロウレット公爵様、戦闘に加わってもらって良いでしょうか」
「当たり前じゃないか」
「ありがとうございます」
既にフォレストタイガーとの戦いに勝利した要因に浸り終わり、こっちに意識を向けている。
アサルトワイバーンがいる場所から俺たちがいるところまでそれなりに距離があると思うんだけどな。
戦いが終わった後だから、感覚が冴えてるってところか。
「ルーフェイス、お前も参加してくれ。敵はそれなりに強いから、元の姿になって良いぞ」
『良いの!? よぉ~~~し!!!』
念には念を入れて、ルーフェイスにも参加してもらう。
ブラックウルフの姿ではなく、狼竜の姿でな。
「ッ!!!??? 姿を偽っているとは思っていたが、まさか狼竜とは…………驚きだな、アリスタ」
「そうですね。大きな幸運に巡り合えたかと。ただ、バルンク様。そろそろアサルトワイバーンがこちらに来ますよ」
木々を華麗に避け、血まみれの姿のままアサルトワイバーンが襲い掛かってきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます