とっさの判断

オーガと四人の戦闘が始まってから数分が経ち、そろそろ戦いは終わりそうだった。


オーガの耐久力が高くとも、魔力や闘気には限界がある。

それはレアードやセリスたちにも言えることだが、それでも四対一で戦ってる時点でその差は大きい。


そしてスタミナに関してはあり得ないだろと思うぐらい持ってるモンスターだが、それでもセリスやエルシャの斬撃を食らって、それなりに血が流れている。

失血の影響でオーガの動きは徐々に鈍り始めている……本当に、俺が手を出す必要はないかもな。


「やっ!!!!」


セリスが魔闘気を纏った刃でオーガの首を斬り裂き、勝負は終った……と思ったが、やはりモンスターは完全に殺すまで油断ならない。


「ッ!!!!!!」


セリスの一撃は確かにオーガの喉を斬り裂いたが、首を斬り落としてはいなかった。

脅威的な生命力を持つオーガは最後の力を振り絞り、全力で棍棒を振り回した。


「よっと」


エルシャやレアード、ニルナの援護が間に合わないと思い、俺はオーガの両目を狙って魔弾を発射。


最後の力でセリスをぶっ飛ばそうとしていたオーガに魔弾の気配を察知する気力はなく、魔弾は両目を破壊。

視界がいきなり消えたオーガは痛みの影響もあり、狙いを逸らしてしまう。


そして最後はレアードが放ったウォーターアローが斬れかかっていた首に命中し、オーガの首は地面に落ちて今度こそ完全に倒した。


「とりあえず、お疲れ様」


「「「「はぁ~~~~~~~」」」」


最後の最後でちょっと詰めが甘かったけど、概ね上手く戦えてたな。


「最後はちょっと、焦った」


「あの一撃で首を刎ねてたら大丈夫だったんだろうけど……まぁ、向こうが一枚上手だったな」


あの一瞬、懐に入られたオーガは直ぐに後ろに跳んだ。

その素早い判断が無ければ、セリスの一撃で勝負は終っていた筈。


喉を斬ったから、あの一撃だけでも十分と言えば十分なんだが………最後の一撃を食らっていれば、死なずとも左腕の骨は完全に折られていただろうな。


まだギリ、セリスは体に魔力を纏っていたけど、何もしていない素の身体能力ではオーガが上。

そして腕力が自慢のオーガの一撃……俺たちがいない状況であれを食らってたら、帰りが心配になってた。


ん? でもニルナかエルシャがポーションとか持ってるか。

レアードが水の回復魔法を使えるし……うん、何はともあれ四人が大きな壁を越えられたことに変わりはないな。


「むぅ~~~~……最後の、スパッと首を斬れてたらラガス兄さんの手を借りずに倒せたのに」


「はは、すまんな。あのままでも勝てたかもしれないけど……つい手が出ちゃってな」


セリスが棍棒で吹き飛ばされても、レアードかニルナがあと一撃入れれば完全に倒してた。

それは間違いない。


「いえ、私やニルナの落ち度です」


「その通りです。セリス様が喉を斬ったことで、この戦いは終わったと……気が緩んでしまいました」


「まぁ…………その点は反省点かもしれないな」


最後の最後まで油断してはならない。

それは戦いが終わった後にも言えることだけど、四人の状態を考えればあそこで気が緩んでしまうのは仕方ない。


オーガと遭遇するまでの戦闘では殆ど体力を消費していなかったが、今はもう一歩も動けないほど披露している。

そんな状況であその一撃を入れることが出来れば、そりゃ気も緩むだろ。


「ラガス坊ちゃま、こちらは私たちが解体しておきます」


「おう、頼んだ」


四人は……まだ休んでいた方が良い状態だし、今はメリルがシュラがやった方が良いだろうな。


「私も、やる。昼食はもう、食べ終わったから」


「良いのか? 助かるよ。なら……一応、ルーフェイスと一緒に警戒しておくか」


『四人とも凄かったよ!!!!』


……ルーフェイスは四人を褒めて労うのに忙しそうだから、俺とルーン、キリアさんの三人で警戒しておくか。

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