未だ知られていない

国王様との話し合いが終わり、予定通り王都のマジックアイテム店を見て回り始めた。


第三王子の一件で大量に金が懐に入ったので、本当にこれが欲しいなと思った物があれば、迷うことなく買える。


「ラガス坊ちゃま、先程から何を考えてるのですか」


「い、いきなりの質問だな。急にどうしたんだよ」


「何と言いますか……普段、武器やこういったマジックアイテムを眺めている時と表情が違い、どこか上の空のような気がしましたので」


……こいつ、やっぱり俺限定のエスパーだよな。

単に俺が顔に出やすいだけかもしれないけど。


「なぁ、シュラ。俺そんなに顔に出てたか?」


「いや、そんなことないと思うっすけど……でも、マジックアイテム以外のことも考えてるだろうな~~、って顔はしてたっす」


二人とは付き合いが長いし、そういった小さな変化でバレてしまうのか。


「二人の、言う通り、だと思う、よ」


……どうやら付き合いの長さは関係無かったみたいだな。


「何かお悩みですか?」


「別にお悩みって訳じゃない。ただ、二人には申し訳ないけどレアードとセリスのことを忘れてたんだよ。あの二人が、俺の二歳下ってことをな」


「そうですね。レアード様とセリス様はラガス坊ちゃまの二歳下ですが……それがどうかしたのですか?」


「二年後には、一年生として同じ学校に入学してくるんだぞ。結果どうなると思う」


「あぁ、なるほど。そういうことですか……ですが、ラガス坊ちゃまが悩む必要はないのではありませんか?」


別に悩んではいないっての。

ただ……アルガ王国側が可哀想だな~~って思っただけ。


「……なるほど。なんとなく、分かった。ラガスの兄弟、だから……超強いんだよ、ね」


「贔屓目かもしれないが、同年代と比べればずば抜けてるのは間違いないと思うぞ」


俺がちょいちょいアドバイスしてたせいかもしれないが、いずれロッソ学園を代表する生徒になる。

アルガ王国だけじゃなく、王都の貴族学校のうちロッソ学園以外の三校も可哀想だな。


「そうなんだ……ふふ、それは楽しみ、だね」


「あぁ~~~~、あれだぞ。十歳にしては結構強いけど、セルシアからすればまだまだかもしれないから、多少は手加減してやってくれよ」


子供時代の二歳差ってのはかなり大きいからな。

二人がキッチリ父さんと母さんの才能を受け継いで、サボらずに努力を続けてたとしても、セルシアだって才能に胡坐をかく愚か者じゃないからな。


良い勝負はするかもしれないが、さすがに勝てない。


「お、これ良さそうだな」


腕力強化と脚力強化の効果が付与されたブレスレットか。

武器や体術がメインの俺にはピッタリだな。


「お二人がパーティーなどで他の令息、令嬢とぶつかったという話は聞いていませんし、入学するまで実力は他家に知られることは殆どなさそうですね」


「そうなるだろうな。二人とも見た目だけでは実力を測れないタイプだからな」


容姿は優れてると思うが、見た目は厳つくないからそれなりに強いとは思われるかもしれないが、一目で中身を完全に理解できる人はそうそういない筈。


「私はこれに、しようかな」


「脚力強化に特化した指輪か」


「私の戦闘スタイルだと、あまり力は必要、ないから」


細剣と雷魔法をメインで戦うスタイルだから、当然といえば当然か。

でも毎日模擬戦してる俺だからこそ解る内容だが、普通に打撃の威力も強いんだよな。


どちらかといえば顎や中心線、急所を狙ったりするテクニカルな戦い方が得意だと思うが、油断してたら響く一撃をもらってしまう。


「私も少し良いの物がないか探してみますか。ラガスも自分に合うマジックアイテムがあるかもしれませんよ」


「ふむ……お二人と同じく、良い強化系のアイテムがあれば、買うかもな」


午前中はガルガント国王様との会話で少々疲れたが、それ以降は特に緊張感など皆無の休日を楽しむことができ、いよいよ実家に帰る日を迎えた。

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