その音の正体は

俺の耳がおかしくなければ、間違いなく王城の方から爆発音が聞こえた。

爆弾とかを使った爆発音じゃなくて、魔法を使用して壁とか何かに激突した音……だと思う。


実際に爆弾の音を聞いたことがないから正確なことは分からないけど、とにかく攻撃魔法と何かがぶつかって弾けた感じの音が聞こえた。


も、もしかしてディザスターの連中が気を利かして、第三王子を暗殺しようとしたんじゃないよな?

ちょっと有難いと思わなくもないけど、流石にアウトだ。


「あ、あの……今は聞こえた音なんですけど、中は大丈夫なんですか?」


もし……仮にあいつらがバカ王子を抹殺しようとするなら、さすがに俺に一声かける筈だ。

当然、その気持ちは有難く受け取るけど提案は却下させてもらう。


このタイミングで殺せば、絶対に俺たち……もしくはガルガント王国に疑いの目を向けられる。

それだけは絶対に避けたい。


「その……おそらくですが、ブリット様が少々ご乱心なだけかと思われますので、お気になさらず」


「……あ、なるほど。分かりました」


そういうことか。

誰かがバカ王子を襲ったのではなく、セルシアがアルガ王国から去るというのを知ったバカ王子が無理矢理にでもセルシアに合おうとした結果、それを止めようとする兵士か騎士に攻撃魔法を放ったってことか。


あっ、また衝撃音が聞こえてきた。

…………多分ここまで来れることはないだろうけど、さっさと行くか。


「最後まで頭のネジが外れた方でしたね」


馬車に乗り込んでから王都を出ると、メリルがそんな言葉を呟いた。

アルガ王国の国民が発言すれば、問答無用で首を飛ばされそうだな。


「まぁ、メリルの言う通りなのは間違いないな」


「アルガ国王も慈悲でバカ王子に伝えたんだろうけど、まさか無理矢理セルシアに会うために王城内で魔法をぶっ放すとは……兵士や騎士たちも大変だな」


下手に傷付けるわけにはいかないだろうから、あまり強い攻撃は繰り出せない。

バカ王子だって俺と戦う時はガチガチに装備やマジックアイテムを固めてきたが、素でもそれなりの実力はある……と思う。


騎士なら実力的に怪我することはないだろうけど、兵士なら……油断してるとちょっとやられるかもな。


「……最後の最後まで、おバカ」


「は、はは……否定はできないな」


にしても、王城内で魔法までぶっ放してでもセルシアに会いたかったってことは…………本当にガチで惚れてたんだろうな。

それだけは良く解かった。


ただ……いくら第三王子とはいっても、王城内で……訓練場以外の場所で攻撃魔法を使うのは不味いよな?

せめて最後に好きな人と会いたかったのかもしれないけど……さすがにアルガ国王もブチ切れるか?


というか、そもそもセルシアに最後会ってどうするつもりだったんだろ。


その男と一緒に居ても君は幸せになれない。

いつかきっと、その道を選んだことを後悔する。

だからこそ、今ここで自分を選ぶべきだ。

パートナー制度という縛りを破ってでも、自分と一緒になるべきだ!!


とでも言いたかったのか?

パートナー制度を完全否定するのは、この世の摂理? に超反すると思うんだが……恋が絡めば盲目になってしまうというやつか。

俺がセルシアとパートナーになっても恨めしそうにしてた奴は大量にいたし……まだ完璧に感情をコントロールできない年齢を考えれば、暴走してしまうのも仕方ないといえば仕方ないんだろうけど……迷惑なことに変わりないんだよな。


「でもさ、あれだけセルシアにご執心なら、もしかして国境を越えてでも会いに来そうじゃないか?」


「普通ならあり得ないと断言するところですが、腐っても第三王子ですからね……何かしらの方法を使って国境を越えてくるかもしれませんね」


マジか……でも、王城内で攻撃魔法をぶっ放したりしたら、さすがの王族でも謹慎ならぬ監禁状態になると思うんだが……それが延々と続くわけでもないしな。


「もし、また私の目の前に現れたら……斬る」


ッ!!!??? ちょ、目がマジすぎるぜセルシアさん!

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