掻い潜って近づく者は必ずいる

「……ねぇ、君の執事の……シュラさん、であってるよな」


「あぁ、鬼人族のシュラだ」


「そのシュラさんなんだけどさ……強過ぎない?」


俺とフォロスの模擬戦が終わり、現在はシュラとガリバーが戦っている。

シュラは普段通りの執事服を着た状態だが、動きには全く問題無い。


てか、そこら辺はちょっと特注の奴を専門の人に頼んで作ってもらったからな。


「ふっふっふ、そりゃシュラだからな」


片江になっていないとは思うが、やっぱり自分の執事が褒められると超嬉しい。


「いや、えっと……う~~~~ん、あれかな。シュラさんもラガス君と同じく、モンスターを狩って狩って狩りまくってるのか?」


「学園に入学する前までは一緒に狩ってたな」


鍛冶に興味を持ってるから森に入る時、ずっと一緒だったわけではないが、しょっちゅうモンスターを狩ってたのは事実だ。


「接近戦で重要な身体能力にそもそも差があったという訳か……純粋な身体能力ならガリバーは僕より上なんだけどね」


「確かに鍛錬を積んだ筋肉を持ってると思うが、それはシュラも同じだ。それに種族の性質上、鬼人族は人族よりも身体能力が優れているからな」


あと、シュラの方が年齢も上だから純粋な身体能力で負けるのは……うん、しょうがないと思うよ。


「そうだね……目の前の戦いを観て、改めてその差を実感させられるよ。でもさ、さっきの刃の部分を指で止めたのはちょっと凄過ぎないかい」


「……使ってる武器が木製ってのもあるけど、俺やセルシア……メリルもスピード寄りのタイプだからな。速い攻撃には眼が慣れてるんだよ。だからまぁ……言っちゃ悪いが、ガリバーの攻撃は余裕をもって対応出来るんだよ」


眼が慣れても体が動かなければ話にならないが、シュラはパワー寄りのステータスだけどでくの坊じゃない。ロングソードや大剣も使うが、体術も大得意。


ガリバーって令息もそれなりに動けてるが……フォロスと比べて技術的な部分が足りないな。

もっとフェイントや目線による意識誘導とか出来れば変わってくるんだが……いや、それが出来たとしてもシュラな見抜いて即対応しそうだな。


「格が違うということだけはハッキリと解るよ。たださ……君たちちょっと体術が飛び抜けてない? ラガス君の長所は魔弾……そしてシュラさんは今使ってないけど、ロングソードや大剣、大斧を使った方が強いよね。もしかして本当は体術がメイン武器?」


「シュラに関しては肉体そのものが大きな武器だからどう答えれば良いか……俺に関してはほら、魔弾の技術が優れていても、それを掻い潜って近づいてくる人ってのは必ずいる。だからそういった人に抵抗する術がいるんだ」


嘘ではない。実際に魔弾だけでこれから遭遇する相手全員に勝てるとは思えない。

ただ、本音の部分は獣、鬼、竜の魔法をしっかり活用するなら、体を鍛えてないと勿体ないんだよな。


竜魔法をちょっと特別だけど、獣や鬼魔法は肉体の強化がメイン。

せっかく神様がくれたチート……有効活用しないのは勿体ない。


「なるほど、ね……でも、剣術の腕だって半端じゃなかったよね。やっぱり鍛錬量の差?」


「……かもしれないな。俺は基本的に美味い飯と自分を鍛えることにしか興味がなかったからな」


錬金術にも興味を持ってるが、それでも費やした時間は圧倒的に鍛錬や実戦の方が多い。

他の令息たちは覚えることが他にもあったんだろうけど、俺にはそれがなかったからな……そういうところで差が開いたかもしれないな。


「あまり勉強とかしなくて良かった感じ?」


「学園に入学する前はそれなりに勉強してたけど、それまではあんまりしてなかったな。ダンスや礼儀作法を習う時間も殆どなかったし」


「なるほど。それは……どうなんだろ? あまり羨ましいとは思わないかな」


「フォロスにとってはそうかもな。俺は殆どパーティーとかに出なかったから、習ってないと恥をかくとかなかったんだよ」


最低限のことしかそこら辺は習ってなかったからな。

パーティーに関しては、本当のところはもっと出席する機会はあったらしい。


ただ、強制ではないから父さんは無理に連れて行こうとはしなかった……今思うと、そこら辺も感謝するところだな。

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