ダブルスのあいつと同じぐらい

軽く準備運動を終えてからまずは俺とフォロス君の一戦がスタート。


俺の武器は木剣。対してフォロスは槍。


審判はドレッグさんが行ってくれる。


「それでは……始め!!!」


戦闘開始の合図が下されるが、俺とフォロスは動かない。

随分と慎重なタイプなのか?


ん~~~……このままじゃ一分ぐらい動かなくなるかもしれなし、こっちから動くか。


「ふっ!!!」


まずは様子見でアビリティを使わず、魔力や闘気も纏わずに攻める。

片手持ちで上段から一振り。


これはガードするまでもなく、さらりと躱された。


「シッ!!!」


「おっと」


反撃とばかり、中心線を狙って三連突き。

槍術のアビリティの三段突きという技があるが、それに勝るとも劣らない速度だな。


お返しに斜め下から切り上げるが、これは刃先を使って弾かれた。


「まだまだ!」


木剣は打撃の武器でもあるので、多少弾かれてもその反動を利用して再度斬撃を放つ。

打撃系の武器だからこそ、刃の位置関係無く叩きこめる。


とはいえ、攻撃範囲は相手の方が広い。

迂闊に潜り込もうとすればさっきみたいに三連突きが飛んでくる。


やっぱり昨日戦ったバカ王子よりも強いと思うんだよな。

もしかして、今まで同年代のバカ王子に気を使ってこういった場では本気を出してこなかったのかもしれないな。


「やっぱり、第三王子より、強いんじゃないか?」


「褒めてくれるのは、嬉しいけど! 彼とは、本気でやりあったことはない、からね!」


あら、そうなのか。

確かに本気でやりあって大怪我とかさせたら問題になる……なるのか?


子供同士の戦いなんだし、死ななければ多少の怪我は問題無いと思うんだけどな。


というか、昨日の戦いはバカ王子の力を体験する前にボコボコにしたから、正確な強さは分かってなかったな。

でも、あれだけガチガチに装備を固めた状態で勝負に挑むような奴だし……フォロスより強くないだろ。


「そろそろギアを上げようか」


「いいね」


お互いに距離を取り、身体強化のアビリティ発動。

そして武器には魔力を纏い、戦闘は更に苛烈と化す。


ははっ! やっぱり普段戦わない奴と戦うのは良いな。

こうして手合わせをしたから分かったけど、フォロスは……ダブルスの大会で戦った槍使いの人と同等ぐらいの実力を持ってそうだな。


そりゃ自然と闘争心が熱くなるってものだ。


「はっ!!!!」


「ぐっ!!?? ……本当に強いね。腕力は……ガリバーより上かもしれない、な」


「褒め言葉として受け取っておくよ。ただ、ここからどうする? このまま圧し潰して終わりか?」


フェイントを絡めた動きから木剣を振り下ろし、ガードさせることに成功。

腕力は俺の方が上なので、このまま行けば完全に圧し潰すことができる。


「まさか、そんな訳ないだろ!!!」


「っ!? さすがだ!」


いきなり魔闘気を纏うか。

やっぱりレベルが高い!!  


これは他の三人も期待出来そうだ。


「俺も負けてられないな」


「……やっぱり、ラガス君も使えたか」


「属性魔法が使えない代わりに、魔力や闘気の扱いを学ぶ時間に力を入れていたからな」


魔力や闘気の操作なら、大人にも負けない自信がある。


お互いにギアをそれなりに上げてからだいたい一分ぐらい経ったか?

今回の模擬戦は俺の勝ちで終わった。


「そこまで!!」


「はぁ~~~~……まいった。分かってはいたけど、本当に強いね……いったいどうやってその歳で、そこまでの強さを手に入れたのか気になるよ」


「別に大したことはしてないぞ。毎日鍛錬とモンスターと戦う。これを欠かさず行えばフォロスも強くなれるさ」


君の計らいで手に入れたスキルを除けば、俺の力はそれを繰り返してつくり上げた。


「は、はは……なるほど。確かに単純な方法だね」


「だろ。今は学生だから休みの日ぐらいしかモンスターを倒しに向かえないけど、毎日本気で繰り返してれば成果が現れるようになる。それは断言出来るぞ」


「そうみたいだね……せっかくの夏休みだし、モンスターを狩ることに専念するのもありだね」


一先ず俺とフォロスの一戦目は終了。

次はガリバーとシュラの模擬戦がスタート。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る