仮に……もし起こったら

王城に到着した日、結局第三王子が来ることはなかった。


その間、体を動かしたかったので訓練場を借りた。

王城の訓練場なので騎士や兵士がいるかと思ったが、誰一人としておらず貸し切り状態だった。


まぁ、王城だから他にも訓練場があるのかもな。

訓練時には何故か監視の視線が消えていたので、それなりに力を出してフェリスさんやドレッグさんと模擬戦を行った。


多分前日に体を動かさなくても負けるとは思わないけど、あまり油断するのは良くない。

もしかしたらセルシアに会えないと知って、今日一日装備集めに走っているのかもしれない。


いや、もし俺と戦うならそもそも準備は整ってる筈か……それとも自分が戦わずに他人を使って俺に試練を与えようとしてたから、急遽装備集めを始めたのかもしれない。


王族だからそれなりに装備を用意するだろうけど、こっちにだってずば抜けた装備がある。

主に武器だけしか用意してないけど。


因みに用意された昼食と夕食はマジで美味かった。

高級感があったけど、食べにくさはなかったのでどんどんおかわりした。


夕食を食べ終えた後は超広い風呂に入った。

あれはもう……凄い力が抜けた。もしかして風呂自体に疲労回復の効果が付与されていたかもしれない。

そう思うほどに疲れが消えた気がしたな。


そんな状態でベッドに入れば直ぐに寝てしまう。

もしかしたら第三王子の頭がおかしくなり過ぎて暗殺者でもよこすのかと思ってたが、そんなことはなく朝を迎えた。


「……結局なんもなかったな」


「良かったではないですか。本日はいよいよ第三王子との対決。そんな大事な件の前に暗殺者と戦うなどあり得ない……というよりも、仮にアルガ国王の意志は全くの無関係であったとしても暗殺者が私たちを襲って来れば、完全に国同士の問題になります」


「……ドレッグさん、そうなればこの先どうなりますか」


「そうですね……ガルガント王国が間違いなくアルガ王国に対して膨大な金額や権利を払えと要求するでしょう」


そうなるよな。

俺は男爵家の四男だけど、一応パートナーの片割れ。

そしてセルシアは公爵家の令嬢にして俺のパートナー。


そんな二人や関係者に暗殺者を送り込もうとすれば、証拠とか無くても速攻で国際問題になるのは決定事項だ。


「そして……それをアルガ王国が断れば、戦争が起こるのも仕方ないかと」


「戦争、か。それはちょっと避けたいかな」


国のプライドや面子を考えれば、そういう流れになるのは必然かもしれないけど、戦争になれば父さんやカロウス兄さんが戦争に参加することになる。


二人とも強いから心配する必要はないかもしれないけど……それでも、もしかしたらって考えてしまう。


「ラガスさん、安心してください。基本的に人同士や国同士に争いに関わるつもりはありませんが、もしこの国お偉いさんが暗殺者を送り込んだ結果、戦争になるであれば私も戦います。本気を出せば騎士や兵士の方々の負担はかなり減るはずです」


「そ、そうですか。それは物凄く有難いです。ね、ドレッグさん」


「そ、そうですね。フェリス殿が戦争に参加するのであれば、正直負けるイメージが浮かびません」


フェリスさんはどう考えてもランクSの狼竜……いや、本気を出したらSSかSSSとかか?

超優秀な冒険者が何人束になっても勝てるか怪しいというか……無理か。


って考えると、俺がフェリスさんに勝てる日はまだまだ遠いな。


「アルガ国王もフェリスさんがラガス坊ちゃまと親しいというのは理解していますし、そんな気の迷いを第三王子が起こさないように見張りを付けているでしょう」


「第三王子と違って感情に判断を左右される様なタイプじゃないし、そこら辺はなんとしてでも阻止しようとしてるか……なら、あと数時間後にクソバカ王子をボコってこの旅は終わりだな」


メイドさんから手紙を受け取り、十一時に先日使った訓練場で一対一の決闘を行うという手紙を受け取った。

俺たちに迷惑を掛ける奴だし、本当に一対一なのか……さすがにそこまで落ちてはいないか。


見えない場所から魔法使いにアシストしてもらっていた、なんてことがバレたら王城内での立場を完全に失うことぐらいは解ってる筈だ。




新作、スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす、の投稿を始めました。

是非読んでみてください。

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