それは解っていた
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……やっぱり、強いですね」
「ふふふ、これでも長年生きた狼竜ですからね。まだまだ負けませんよ」
結局フェリスさんとの試合中に羅門は使用しなかった。
ただ、身体強化系のアビリティはフルで使用し、ラビットフットやコングアームも使ってガチで挑んだけど、結局試合はドロー。
ドローだけど……俺が超疲れてるのに対して、フェリスさんから疲れた様子は全く感じられない。
解ってはいたけど、核の差が大きいな。
「……ラガスさん、いつまでこの学園にいるつもりですか?」
「いつまでって……卒業するまでですね。後ろ盾が欲しくて学園に入学したんで」
フェリスさんが言いたいことはなんとなく解る。
俺は……ロッソ学園に入ってから全く成長してないだろうからな。
「後、学園生活はそれなりに楽しいですよ。十二歳になれば直ぐにハンターになろうかなとも思ってましたけど、今の生活は……これはこれで悪くないですよ」
「……そうですか。まぁ、実力が下がったとは思えませんし、良い運動は毎日できてるようですね」
「傍にシュラやメリル、セルシアとルーフェイスもいますからね」
そうなんだよ、シュラたちがいるから俺の実力が上がることはなくても、下がることもない。
さて、とりあえず俺の模擬戦は終わりだ。
「次は……シュラか。頑張れよ」
「うっす。頑張ります」
……まっ、仮にシュラがやり過ぎたとしてもフェリスさんに甚大な被害が及ぶことはないよな。
三分後……シュラは殺気の俺と同じ状況になっていた。
最大の奥の手は使っていないが、それでも力の限り全力で攻めていた。
観る限り良い打撃もあった。
それなのに痛そうなそぶりもなく、余裕な表情が消えることはない。
「凄い、ね」
「あぁ、凄いよ。本当にな。文字通り……次元が違う」
生きてる年数が違い過ぎるから当然といえば当然なんだけど……まっ、成長してないってのは当たってるから仕方ないよな。
「あんな人と、いつも戦ってた、の?」
「いや、いつもは戦っていなかったよ。でも偶に胸を借りて模擬戦はしてた……一度も勝てたことはないけどな」
本当に戦うことに関しては俺より……いや、人類より頭三つ四つ抜けてる。
俺自身、武器はそれなりに色々と仕えて、結構器用貧乏だなって思ってるけど……フェリスさんはどう考えても器用大富豪だからな。
合気? の投げを食らった時は本当にビビった。
この世界にも合気みたいな投げはあるのかもしれないけど……まさかそれを狼竜であるフェリスが使用するなんて、全く予想していなかった。
正直、この先どれだけ鍛錬と実戦を積んでもフェリスさんに勝てる気がしないな。
「ラガス一度も……そんな人が付いて来てくれるなら、心の底から、安心出来る、ね」
「だろ。あの人がいてくれたらどんな馬鹿がどれだけ厄介な刺客を差し向けてきても、どうとでもなる……その代わり、アルガ王国の王都が灰になるかもしれないけどな」
「……王族ぐらいは、生かしておいた方が良い、と思う」
「はっはっは! 確かにそうだな。フェリスさんもそこまで暴れることはないと思うけど……どこに行っても馬鹿はそれなりにいるだろうからな。建物が崩壊するぐらいはあり得そうだ」
「それぐらいな良い……のかな?」
フェリスさんの力を考えれば、それぐらいで済めば良い方だろう。
建物を崩壊させるねんて、一撃あれば事足りるんだし。
「仮に何かが起きたとして、それぐらいで済めば良い方だろうな」
本気を出せば王都を壊滅させることは勿論……アルガ王国を潰す事だって難しくない。
そんな文字通り怪……おっと、ちょっと失礼な言い方だな。
次元が違う強さを持つ狼竜に是非とも喧嘩を売るような真似はしないでほしいけど……どうせなら使者みたいな奴に会った直後に実はこの人は長年生きた狼竜ですって説明した方が良いか?
俺の客というか知り合いというか……友人? に人化が使える狼竜がいると伝えれば国は下手な真似をしない筈……馬鹿な貴族がアホな真似をしないように超強い護衛を付けてくれるかもな。
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