辞めたいとは思わない

「ラガスは……学園を早く卒業したいと思わないのか」


「いや、特に思ってないけど……なんでだ?」


「お前は無意識から意識的にかは分からないが、厄介事に巻き込まれやすいタイプだろ」


「まぁ……そうだな」


大体向こうからやって来て、俺が喧嘩を買ってしまうパターンだな。


「厄介事が続いたら、自然と学校を辞めたくなる気がするんだが」


「そうかもしれないけど、俺の場合はセルシアがいるからな……厄介事が続いて起きそうだから、一緒に学校を辞めてくれなんて言えないだろ」


「……確かにそうだな」


というか、セルシアが首を縦に振ってくれても流石に公爵様が許さないだろ。

学園を卒業して一緒にハンターとして活動するのは良くても、一緒に自主退学するのはアウトだ。


「厄介事はうんざりする時があるけど、なんだかんだで解決するからな」


腕力で解決出来る時もあれば、パートナーであるセルシアの実家の力で解決する場合もあるだろう。

相手が面倒な輩であれば……ディーザスの力を使えば、最終的にはなんとかなる筈だ。


王都で最強の暗殺ギルドだからな。

……何故か俺がマスターになってしまったけど。


「ラガスなら、大抵のことは己の力だけで解決出来そうだな」


「模擬戦とか決闘で済むなら話は早いな。ただ、大抵の奴は親に泣きつこうとする」


「……いるな、そういうクソみたいな馬鹿は」


はっはっは、中々辛辣な言葉だな。

ただ、その感想には同意だ。


「しかし、大抵の奴はロウレット家当主の力を恐れる。そうなれば、結局俺には何もできずに終わるんだよ」


「公爵家に逆らおうとする当主は殆どいないだろうな……いるとすれば、ロウレット家を公爵の椅子から蹴落としたいと考えている愚か者ぐらいだろう」


そういった連中がいる可能性もゼロではない、か。

公爵家ぐらい高い地位に座り続けていると、無意識に恨みを買ってそうだしな。


ただ、そう簡単に蹴落とせるほど甘い存在じゃないだろ。


「ただ、ラガス。もし……仮にだが、公爵家よりも上の存在がお前に喧嘩を売ってきたらどうするつもりだ」


公爵家よりも上の存在が……俺に喧嘩を売る?


いったいそれはどういう状況だ??


「いやぁ~、それはちょっとあり得なくないか。俺は特にそういった人達から恨みは買ってないと思うけど」


「上ではないが、イーリス・リザードからは恨みを買っているのではないか?」


「……そういえばそうだったな」


最近はリーベとライド君の決闘で頭が一杯だったから、存在が脳内から消えてた。

恨みは確実に買ってるだろうな。


ただ、あいつ個人で出来ることなんてしれてるだろ。

それにあいつの親父さんとは和解というか、仲良く? なった気がするし……うん、どうこうしてくることはないな。


「それか……王族、とかだな」


「おいおいおい、ちょと待て。俺は大会の時にしか国王様と会ってないぞ。それに大した会話もしていないし……お互いに何かしらの感情を持つほどの親交がないって」


王族と喧嘩とか、それはマジでシャレにならな過ぎる。


「仮に、の話だ。そこまで本気で捉えるな」


「お、おう……でも、マジでそんなことが起こったら流石に怯むというか、どうしたらいいか迷うな」


父さんには勿論だけど、カロウス兄さんにも迷惑が掛かる。

基本的には避けたい相手だ。


「そうか、流石のラガスでも王族相手にはそうなるか」


「いや、だって王族だぞ。さすがに俺も叩き潰したりなんて出来ないって」


仮に意見がぶつかったとしても、なるべく穏便に済ませたい。

というか、そもそも必要最低限しか関わりたくない。


「……発想がそもそもぶっ飛んでるな」


「いや、だって喧嘩を売られたら普通は二度と変な気を起こさないようにぶっ飛ばすもんだろ」


「二度と逆らえないように、そう考えるとぶっ飛ばす方が正しいか……もう少し手のかかる方法は取らないのか?」


「俺に細かいことは向いてないな」


情報で相手を脅すなら、ディザスターの連中に手を借りれば良いだけだが……ぶっ飛ばして終わるなら、それが一番良い。


超スッキリするしな。


まぁ……厄介事なんて絡まれないのが一番なんだけどな。

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