強制参加

「はぁ……朝か」


天気はマジで快晴。絶好の決闘日よりかもしれないな。


今日、リーベとライド君が決闘を行う……今日まで最善を尽くしてきたが、結果が出るまでは本当に不安だ。


「ラガス坊ちゃま、起きてますか?」


「あぁ、丁度今起きたところだ」


「朝食の用意は既に出来ています。早めに来てくださいね」


「おう」


自分がこれから戦う訳ではない。

それは解かってるんだが、やっぱり気分は上がらないな。


リーベがどれだけ真面目に、真剣に訓練に取り組んできたかも知ってる。

しかし対戦相手のライド君が並ではなく、一般的な括りでは例外に当てはまる存在だというのも知ってる。


「……やっぱりライド君の予測不能な部分? を考えると勝負は五分五分ってところか」


限界突破……あれが本当に一気に戦況をひっくり返す。

こっちもそういう類の手札はあるが……あぁ~~~、駄目だ。やっぱ心配。


でも、俺が心配したところで仕方ないよな。


ライド君と勝負するのはリーベだ……俺は観客席から見守ることしか出来ない。


「おはよう、ラガス」


部屋を出ると目の前にセルシアが立っていた。

寝起きの気怠さがちょっと消えてきたとはいえ、いきなり立ってるのを見るとマジでびっくりした。


「せ、セルシアか」


「うん、おはよう。びっくり、しちゃった?」


「ま、まぁちょっとな。飯だろ、直ぐに下に降りるよ」


これ以上待たせるとメリルに怒られるかもしれないしな。


「うん、そうだね……ねぇ、ラガス」


「なんだ?」


「リーベ、勝てると思う?」


「ッ!!」


ど、どストレートに訊いてくるな。


でも……どうやら単純に俺がどう考えてるかを知りたいだけ、みたいだな。


「どうだろうな……正直なところ、手札の数だけなら七対三で有利だと思う」


「そうだね。リーベの手札は、この一か月で、そこそこ増えた」


そうだな。付け焼き刃じゃなく、しっかりと実戦で使えるぐらいの練度まで高めた。


「だが、試合全体をみると……やぱり五分五分ってところだ」


「限界突破が、やっぱり脅威、だね」


「そうい事だ。あれは空間収納とかと同じで、習得するには絶対的な才能がない無理って話だ」


他にも取得方法があるのかもしれない。


けど、そう簡単に覚えられるアビリティじゃないのは確かだ。


「……でも、なんとなくだけど、リーベが勝つ……と、私は思う」


「それりゃ俺もリーベに勝って欲しいと思ってるけど……なんで断言出来るんだ?」


「えっと……多分、才能は同等、ぐらいじゃないかな。でも、強くなれる環境が違う」


……なるほど、言われてみればそうだな。

俺たちザックスたちでは、訓練相手としての力量は勿論違う。


それに、俺はリーベに新しい武器を教えることが出来たが、ザックスたちにはおそらく無理だ。


唯一心配するところと言えば……アザルトさんがどういった手段でライド君の手助けをするか、だよな。


「多分、リーベが勝つよ」


「……だな。俺たちがあと出来ることは、あいつの勝利を祈ることぐらいだ。今更ジタバタ悩んでも仕方ないな」


「そういうこと、だよ」


今日まで頑張ってきたリーベの努力と思いを信じる。


「お二人共……そろそろ降りてきてくださいね」


「め、メリル……す、すまん。直ぐ降りる!!」


「す、直ぐ降ります」


やべー、やべー。

ちょっと話し過ぎてたな。


超怒ったりするわけじゃないけど、静かに起こってるメリルはこう……威圧感が半端じゃない。


結果、怖く感じるんだよな。

冷めないうちに早くご飯食べないと。



「おはよう」


「おう、おはよう。良く眠れたか?」


ササっと朝食を食べ終え、約束の時間通りにリーベがやって来た。


「あぁ、良く眠れた。ベストコンディションだ……絶対に勝つ」


絶対に勝つ、か。


ここで絶対に勝てるって言わないところが、慢心してないんだなって安心出来るよ。


「観客席には……ロウレットだけが来るのか?」


「一応俺のメイドと執事も来る」


「そうか。まぁ、それは良いんだが……変装のマジックアイテムは人数分あるのか?」


「そこは安心してくれ、しっかりと人数分用意してる」


決闘には数人までなら関係者を連れてきても構わない。


だから、多分向こうにはザックスたちが来る。

なので……俺としては顔がバレたくないので、絶対にバレないであろう変装のマジックアイテムを装備して観戦する。


因みにアザルトさんは強制参加らしい……まっ、あの人にはこの勝負を見届ける義務があるな。

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