誓約成立
「一週間後……俺と一対一の決闘を行ってもらう」
「一対一……」
あれ、随分と意外そうな反応をしてるな。
もしかしてもっと不利な条件で戦わされると思っていたのか?
まぁ……準備期間の長さを考えれば不利な状況には変わりないんだけどな。
「そうだ、俺とお前……一対一の決闘だ。悪くはない賭けだと思うが」
「……その結果、あなたが負けた場合……しっかりと約束を守ってくれるんですよね」
おうおうおう、外見は優男なのに思い人の事になると本当に熱くなるな。
ますます物語の主人公みたいな奴だ。
「もう勝った気でいるとは……随分と自分の実力を評価しているみたいだな」
もしかしてちょっとイラっとしてる?
ライド君が絶対に自分が勝つと思っている、それと自分が不正を行うかもしれないと疑われたことに対してイラついてるのかもな。
「ふぅーー……それで、どうする? 君はこの提案を受けるか? 安心するんだ。こちらに誓約書を用意してある。俺と君が決闘を行い、俺が負ければフィーラとの婚約を解消し、二度と近づかない。そして俺が勝てば……君はフィーラに別れを告げ、二度と近づかないことを誓う。破ればお互いに罰が下される」
内容を少し見させてもらったが、死ぬほど苦しい痛みとかではないが、それ相応の苦痛が続く。
そしてそれは永続的な効果があるので……文字通り、負ければどちらかの思いは潰える。
探せば抜け道はあるらしいけど……両者ともそんな真似はしないだろうな。
いや、ライド君がもし……もしも闇落ちとかしたら、必死で抜け道を探してアザルトさんをリーベから奪おうとするか……考え過ぎかな。
「この誓約書にお互いに血を垂らせば誓約は成立する……さぁ、どうする?」
「…………」
「言っておくが、ハンターとしての実績を積み上げてそれ相応の地位に就き、真正面から奪おうとしても無駄だ。侯爵家の力は……その程度の力で潰せるほど甘くはない」
「ッ!!!!」
リーベからの提案を受けるか、それとも自身が元々考えていたハンターとしての実績を重ねてから、って二つの案と悩んでたんだろうけど……片方をリーベにぶった切られた。
リーベ自身がまだハンターではなく、ハンター業界にそこまで詳しくはない。
でも、ライド君自身もそこまで詳しくはないから、現時点で権力を持っているリーベの言うことを信じたんだろうな……実質その通りだと思う。
「上の方には素晴らしい実績を持つハンターがいるだろう……だが、それを君はどれだけの年数で達成出来る? 言っておくが……私とフィーラが結婚すれば、君が真正面から奪うのは不可能だ」
「…………」
それは流石に解ってるみたいだな。
リーベがフィーラの弱みを握って無理矢理……とかなら、まだ可能性があるかもしれない。
……いや、それでも既に結婚してたら難しいか?
とにかく、リーベからの提案を受け入れ、決闘に勝つ以外の道はない。
「分かりました、その誓約……受けます」
「そうか、それは良かった。それでは早速契約を行おう」
指に針を刺してお互いの血を誓約書に垂らす。
その瞬間、自身の心臓に鎖を巻かれる様な感覚がするらしいが……もしかしたら本当かもな。
二人共血が誓約書に付いた瞬間、自身の心臓を確かめるように触っていた。
「……ふむ、どうやら誓約の準備は完了したようだ。決闘は一週間後……こちらの訓練場で行う。時間などはまた追って連絡させて貰う」
「……貴族の子息に対して無礼な態度だということは解かっている。でも、これだけは言わせて貰う……あなたから、絶対にフィーラを奪い助ける」
「ふっ、本当に強気な性格だな。それともフィーラが関わっているからか? まぁ良い……俺もフィーラを渡す気はサラサラない。せいぜい潰されないように足掻くんだな」
うんうん、まさに主人公と悪役の決闘前日って雰囲気だな。
さて、帰り際にサラッと見せて貰うか……ぶっ!!!!
こいつ……そこまでも主人公らしいな。厄介なアビリティをもってやがる。
ちょっと調整しておいた方が良さそうだな。
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