その言葉を聞いた瞬間……

「着いたな」


「そうだな……ようやく、着いた」


貴族の子息だからか、ポーカーフェイスは出来てる。

でも、声が少し震えているな。


「リーベ、今日戦う訳じゃないんだ、もう少し落ち着け」


「……そうだな。ふぅーーー……はぁーーー。よし、落ち着いた。行こう」


まずは警備員に要件を伝える。

少し前からガルアス学園の方に要件があると伝えているので、問題無く学園の中に入れた。


学園には学生がチラホラと見えるが、誰も俺に視線を向けることはない。

変装の効果が付与された指輪がしっかりと効果を発揮してるみたいだな。


「ジース・リーベ様ですね。こちらへどうぞ」


学園の教師が現れ、応接室へ案内される。

因みに俺は付き添いの学生だと思われてるので、過剰な反応、対応はされない。


そして応接室の中に入るとお菓子と紅茶を用意された。

……うん、変な物は入っていないな。


まさか毒や変な粉を混ぜてるってことは無いと思うけど、やっぱり念のため確認しておかないとな。


「ライドという生徒を連れてきて欲しい。今年、特待生で入学した一年生のライドだ」


「かしこまりました、少々お待ちください」


相手が子供であっても、貴族の子息……いや、貴族の学園に所属しているからこそ、丁寧な対応なのかもな。


「うん、紅茶もお菓子も美味いな」


「……そうだな、中々悪くない」


そうだ、一応周りも確認しておくか。


リーベは侯爵家の子息だが、長男ではない……でも、学園側が全く警戒していないかどうかは分からない。

だから立体感知を使って調べたが……どうやら部屋の周囲に隠れてる奴はいないらしいな。


「ラガス、今更だが……ライドはこの提案に応じると思うか」


「本当に今更だな……まぁ、応じると思うぞ。ライド君が高過ぎる壁を乗り越えるには……リーベの提案に応じるしかない。仮に応じなければ……絶対にお前の望みが敵うことはない、って具体的に伝えれば良いんじゃないか?」


「そうだな……仮にハンターとして有名になったところで、という話か」


「そういう話だ。可能性がゼロとは言わないが……よっぽど運が重ならければ無理だ」


ハンターとしての功績……それ以外にも方法があるかもしれない。

だが、それは俺とセルシアが結ばれた確率よりも低い筈だ。


今回の提案を飲まなければ……ライド君がアザルトさんと結ばれる未来は訪れないだろう。


「ジース様、ライドをお連れしました」


「あぁ」


リーベの返事と共に扉が開かれ、教師と目的の人物……ライド君が入ってきた。


なるほど、強い意志を示すように輝く金髪。

フワッとした髪型に青い……いや、蒼く自然と人の視線を引き寄せるような眼。


まぁ……下手な貴族の子息よりもモテるだろうな。

このイケメンファイスで爽やかな笑顔を食らったら……大半の女の子はコロっと落ちそうだ。


「えっと……ライドです、よろしくお願いします」


「あぁ、ジース・リーベだ……フィーラ・アザルトの婚約者だ」


「ッ!!!」


わぉ……リーベがアザルトさんの婚約者だと知った瞬間、一気に雰囲気が変わったな。

殺気は出ていないが……ちょっと戦意が漏れている。

そこは相手が貴族の子息だから配慮してるのかもな。


ただ、顔は人の良さそうな優男フェイスから漢の顔に変わった。


「そう、ですか……そのような方が、いったい僕に何の用でしょうか」


一応敬語……敬語ではあるが、お前となれ合う気は無い!!! みたいな感情が溢れ出してる気がする。


「正直に言おう……俺にとって、君は邪魔な存在だ。その理由は……言わなくても解るな」


「…………」


沈黙、それ答えなんだろうな。

ハンターの学園にも貴族の子息、令嬢はいる。


そいつらと少しでも関わっていれば、貴族の情報網は自分達と大きな差があると解かる筈。


「だが……俺も悪魔ではない。平民である君が唯一掴めるチャンスを与えようと思っている」


ちょっと上から目線な言葉だが、この提案に乗らなければ道はないと伝えるには十分だな。

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