流石に緊張する
「よし、行くか」
アリクとの食事を終えた翌日、リーベとの集合場所に一人で向かう。
「行ってらっしゃいませ。大丈夫だとは思いますが……よその学園で暴れることは無いように」
「メリルの言う通りっすよ、ラガスさん。仮に誰かと衝突して決闘、模擬戦騒ぎに発展したら、最悪の場合は相手の骨と心がポッキリと折れちゃうんすから」
「解てるって。そもそも向こうに俺に恨みを持ってる奴なんていないだろうから、そんな面倒事が起きはしないよ」
セルシアはまだ寝ているので、起こさないように静かに特別寮から出て門にまで軽く走る。
すると約束の集合時間までまだ十五分ほどあるんだけど、既にリーベが門の前に立っていた。
……早くないか?
約束の時間に遅れないように早く到着するってのは良い心構えだと思うけど……まっ、アザルトさんとのデートとかに遅れないようにしようと思っていれば、自然と約束の時間前には到着しよう、って思うのかもな。
「よう、おはよう」
「あぁ、おはよう。まだ集合時間まで時間はあったが、随分と早いな」
「いや、それはこっちのセリフだって。まだ時間まで十五分もあるんだぞ」
「俺は君に依頼を頼んだ側だ。こういう時に君より早く到着するべきだと思っただけだ」
「そ、そうか……ちょっと時間は早いが、出発するか」
時間は八時過ぎ。
この時間はまだ寝ている学生が多いが、おそらくライド君は起きている筈だ……多分な。
「…………」
「どうした、ちょっと緊張してるのか?」
普段、口数が多い訳ではないが、特に喋らず少々ピリピリしてる。
「そうだな……今日、決闘を行いはしないが、絶対に倒すべき相手と会うとなれ……多少なりとも緊張はする」
「そうか。でも、あまり相手にそれを悟られない方が良いぞ」
ザックス達からの話を聞く限り、心を揺さぶる様な戦い方はしないと思うが、一応気を付けておいて損はない筈だ。
「なるほど、確かにその通りだな……それなら、到着するまで話でもしよう。ラガス、今の俺の実力ならばライドに勝てると思うか」
「……ストレートな質問だな。まだ相手の実力を見ていないから何とも言えないが……不利ということはない筈だ」
向こうも特待生を勝ち取るほどの強さは持っていても、俺と出会うまでの戦力はそこそこ高く、俺達と訓練を始めてから予想外の才能を開花させた。
そして明日には有能な武器が届く……それらを考えれば決して不利ではない。
「明日には武器が届くんだろ。なら対武器用の訓練をメインにした方が良さそうだな」
「そうしてくれると有難い……しかし、ラガスは本当に実力が高いな。接近戦が出来、属性魔法が使えなくても遠距離攻撃は出来る。そして、大抵の攻撃魔法は破壊してしまう。改めて驚かされるステータスだ」
「褒めたって何も出せないぞ。接近戦に関しては地道に訓練を続けていけばなんとかなる。。遠距離攻撃は……おれはある意味幸運だったんだよ」
魔弾、このアビリティを得たお陰で寧ろ一般的な攻撃魔法よりも強力で、コストが低く発動出来る攻撃を手に入れることが出来た。
それに、魔弾は汎用性が尋常ではない……まだ人前ではあまり使っていないけど学年が上がったり、卒業してハンターになれば人前で使う機会が増えるかもしれないな。
「それに、攻撃魔法の破壊はもうリーベも出来るじゃないか」
「……そうだな、今までの常識が覆ったような感覚だ。ラガスの様に接近戦と遠距離戦、両方とも優れているならば対処に困るが、そうでない相手は完封出来そうだ」
基本的には上手くいきそうだが、今回は相手が相手……もしかしたら無詠唱、詠唱破棄のどちらかを習得しているかもしれない。
そう考えると本当に気の抜けない相手だ。
色々と手札を揃えた。
本番まで磨ける部分は全て磨こうと思っているが、現状……一番強力な切り札は本当に奥の手だ。
それを使って倒せなかったら、負けたも同然だ。
…………あまり行儀良くは無いが、サラッと……本当にサラッと視るか。
不安要素はなるべく先に知っておきたいからな。
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