お互いに手紙が止まらない

リーベと一緒に冒険者の学園に訪れる一日前、リーベとの特訓を終えた俺はアリクと一緒に二人には似合わないオシャレなレストランを訪れていた。


「……なぁ、今からでも他の店に行かないか。あんまり俺達には合っていないと思うんだが」


「まぁ、そこら辺は良いじゃん。折角入ったんだし何か頼まないとさ」


「そう……だな」


なんだかんだで美味しそうな匂いが漂ってきているからか、アリクは直ぐにメニューを見て料理を頼んだ。

俺も直ぐにメニューを決め、店員に伝える。


「それで、どうだったんだ。あの一件は」


「あの一件って……あの女の家の話?」


「そうだ。どうなったのか大体は聞いたが、お前の口から正確には聞いていないからな」


俺達以外にも客はいるので、ある程度伏せて話さなければならない……やっぱりアリクの言う通り、店選びを間違えたかも。


バーとかにしてれば……いや、そもそも俺が入れないか。

一応酒を呑む適性年齢は十五と決まっている。


関係無しに呑んでいる奴らもいるらしいが……興味はあるけど今は呑もうと思えない。


「一応諦めてくれたと思うよ……向こうでセルシアの実家と揉めたくないだろうし」


「それはそうだろうな。まぁ……あれだ、お前にはこれからそういった話がたくさん来るだろ」


「今回だけで大量に来たのにか?」


「多分な。リース会長やクレア達も毎年そういった内容が書かれた手紙を送られてる……クレアも何だかんだでモテるからな」


そりゃそうだろうな。

控えめに言ってクレア姉さんは美人だ……そしてスタイルも抜群。


ロリコンや貧乳大好き紳士とかじゃなければ、クレア姉さんに興味は必然だ。


「それは一年の間からずっと続いてるんだよ。クレアが男にモテるってのもあるが、貴族の実家から見ても中々自分の息子の妻にするのに魅力的に思えるんだろうな……子供の意志とか関係無いしに婚約の話が来る場合もあるんだとよ」


「……やっぱりそこら辺は容赦ないんだな」


子供が将来の相手を自分で決められる可能性は低い……それは貴族に生まれたら仕方ない宿命みたいなもんか。

うちは…………うん、ちょっと特殊なんだよな。


皆学校を卒業しても好きな様に生きてるからな。


アザルトさんもその例に入ってるんだよな……その分平民と比べて良い生活をしてるんだから文句は言えないと思うけど。


「お前はこの先どうするんだ? 今回は全部話を見送ったみたいだが、来年も再来年も色んな話がお前のところに飛んで来ると思うぞ」


「げぇ~……それは本当に勘弁して欲しい。俺はセルシアがいればそれで十分幸せだってのに。アリクも考えてみろよ。奥さんがたくさんいたら全員を平等に愛を注がないといけないんだぞ。人によっては自分を一番に愛して! なんて言う奴がいるかもしれないし……一歩やり方を間違えたら後ろからグサッ!! って刺されるかもしれないじゃん」


「……仮にも貴族の令嬢だったんだからそんな事は起こらないと思うが……奥さん同士で陰湿な嫌がらせを行ったりしてる家庭はあるかもな」


「だろ。だから俺は一夫多妻を目指すつもりはないね」


それでも世の中上手くいってる家庭があるのかもしれないけど……無理無理、俺には絶対無理だ。


「俺も上手くやれる自信は無いな……そんな器用じゃないからな」


「アリクだってそういう話は多数来てるんだろ」


「一応な。でも、俺はクレア達と一緒にハンターになる……お前も解っているとは思うが、自らハンターになる令嬢は少ないんだ。だから結果的に全部断ることになる」


……それでもアリクに付いて行きたいって令嬢がいるかもしれないけど、実際にハンターとして活動を始めれば不満が止まらなくて家に帰りたくなるんだろうな。


というか、これ以上アリクのパーティーに女子が増えたら……嫉妬の視線で呪われてしまうかもな。


「そういえば、明日面白いことをするんだろ」


「面白いっていうか……確かに第三者として見てれば面白いかもな」


でも、俺はリーベを鍛えている立場として……あいつの気持ちを知っているからこそ、絶対に勝って欲しいと思っている。

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