大量の手紙

学校で行われたパーティーが終わり、寮に戻って爆睡した翌日……目の前に多くの手紙を持ったメリルが立っていた。


「おはようございます、ラガス坊ちゃま」


「おう、おはよう」


「よく眠れましたか?」


「あぁ、ぐっすり寝られたよ」


今日は休日なので何時まで寝ても問題無い。

今が何時なのかは分からないけど、多分昼に近いだろうな。


「それで……それはなんだ?」


「こちらはラガス坊ちゃまに対する婚約話に関する内容や、貴族自身が保有する兵団への勧誘や国に属する騎士団からの勧誘内容など様々です」


「……マジで来てんのかよ」


ハッキリ言って全部捨ててしまいたい。

だが、無視するのは宜しくないだろうから、きっちり返事は書いておかないとな。


「つーか、婚約話が来るのはかなり謎なんだけどな。俺のパートナーはセルシアだぞ。何をどう考えて婚約話を持ってくるんだよ」


セルシアの実家は公爵家だぞ、公爵家!!!

公爵家に喧嘩を売る行為……とは言えないかもしれないが、普通に考えて良い印象は持たれないと思うんだけどな。


「それはセルシア様が長女ではないからかと」


「あぁ~~~……なるほど、ちょっと理解した」


そういえば貴族だとそこら辺で兄弟内の力関係が変わってくるんだったな。

うちは全くそういうの関係無い……というか興味が無いからな。


「それで、どういたしますか?」


「全部断るに決まってるだろ」


「ですよね。それではどういった理由で断りますか?」


「……ハンターになる。その理由だけで殆どの手紙に対して断る理由になる筈だ」


婚約話にしろ、騎士団や兵団に関してもこっちが明確にこっちの道に進むって考えてるって解ったら諦めてくれるだろ……多分な。


「しかしラガス坊ちゃま、これだけはしっかりと目を通しておいた方がよろしいかと思われます」


中身を全部読んだであろうメリルが俺に読んだ方が良いって伝えるって事は……それなりに大物からの手紙って事か。


メリルから封等ごと受け取ると、それだけでどの家からの手紙が解ってしまった。


「…………くそったれ、完全に頭から抜けてた」


「あれだけ因縁があったのに忘れていたんですね」


「気持ち良くぐっすり寝てたからな。本当に記憶から消えてた」


リザード公爵家……つまりイーリス・リザードの親からの手紙って訳だ。

見たくないが……見なきゃダメなんだろうな。


「これって多分だが、婚約話だよな」


「はい。手紙に書かれている内容だけを考えれば、決して悪くはないかと」


内容は悪くはない。うちの娘と結婚しろってどストレートに書かれてるって事は無いという感じか。


え~っとどれどれ…………はいはい、それで…………なるほど。


「……これはあれだな。とりあえずお誘いは断らない方が良い感じだよな」


「そうですね。公爵家当主からお食事の誘い。それを断るのは止めておいた方が良いかと」


「だよな。食事ねぇ~……美味そうな飯が食えそうだから食事は良いんだけど、絶対にそれだけが目的じゃないような気がする」


ぶっちゃけ断りたいが……これだけは応えておくか。

後は全部却下の手紙を送ろう。


「とりあえず返事の手紙を書かないとな」


「他の手紙は読みますか?」


「一応読む」


サラサラっと全部に目を通したが、全て却下だな。

もう少し柔らかい感じの内容で書かれてある手紙もあるかと思ったが、全部勧誘や婚約話ありきの内容。


食事でもどうですか的な内容はリザード公爵家の当主からだけだった。


「全部却下だクソったれ。絶対にどっかで俺が男爵家の四男だからって考えがあるだろうな」


「それでしたらこちらは私がハンターを目指しているからという理由をメインにして断りの手紙を書いておきますね」


「おう、頼んだ」


返事の手紙は基本的に自分で書くものだが、事務仕事に忙しい権力者などは秘書に一回手紙を書いてもらい、後で自分で確認をしてオーケーであればそのまま送る場合もあるらしい。


メリルは俺の文字の書き方を真似する事も出来るので、おおよそバレることはない。


九十九パーセントの手紙はメリルに任せ、リザード公爵への返事をササっと書こう。

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