噂通りの後衛殺し
「次は私の番よ!!」
元気良く背後から現れたのはクレア姉さんだ。
セルシアが圧勝してアリクが瞬殺した。次にクレア姉さんが勝てばその時点で俺達の勝利が決まる。
出番としては中堅なのでここで負けても副将戦、大将戦が残っているので本来ならそこまで気負う位置では無い。
だが、俺達が望む状態は全勝。クレア姉さんは一切負ける気は無い。
「さっさと勝っちまえよ」
「勿論。というかアリク、勝つのが勿論一番の目的だけど……いくらなんでも早過ぎじゃない? カウントを含めなかったら十秒も経っていないわよね」
「うっ……仕方ないだろ、いつもと違って体が普段以上に動いてくれたんだよ」
「そうなの? まっ、五戦ある一つぐらい瞬殺でも問題無いわよね」
確かにそうだが……クレア姉さんも勢い余って瞬殺してしまわないか?
「そういう事だ。というか、お前だってその可能性はあるんじゃないのか」
「……それはちょっと否定出来無いわね」
そういえば過去の大会で何度か瞬殺してるんだけど……まっ、それはアリクも一緒だろうけど。
クレア姉さんが持ってる杖は木製じゃなくて鉄製だからなぁ……撲殺で終わらせることだってありそうだ。
「でも、私の場合は後衛職だから色々と油断出来ないのよ」
「何言ってんだよ、相手が後衛職だったら大概は瞬殺してきたくせに」
……は、ははは。クレア姉さんはある意味後衛職キラーだな。
「うっさい!! とりあえず勝つことが一番、試合時間を気にするのは二番目よ」
「違いないな。ちゃちゃっと終わらせてこい」
「相手の人のプライドを折らないようにね」
「……頑張って、ください」
「任せなさい!!!」
自信満々な表情でクレア姉さんは入り口を抜け、リングへと上がった。
そして直ぐに試合が始まった。
審判の試合開始の合図と共にクレア姉さんは駆け出した……そして、結果だけで言えば試合は一分弱でクレア姉さんの勝利で終わった。
「……どうだ、ラガス。あれが魔法使い殺しのクレアだ」
「は、ははは。それは他の学園で呼ばれている二つ名?」
「いや、名が生まれたのはうちの学校だ。試合や模擬戦を行う度に後衛職の相手は殆ど瞬殺でボコボコにしていたからな……てか、前衛職の相手にも勝つことが多かった」
「前衛職に勝ってしまう後衛職……そりゃ一般的な魔法使いや弓使いにとっては恐怖の対象だな」
今回の試合に関して、クレア姉さんは試合開始の合図と共に駆け出して無数のファイヤボールを放ち、それに相手の女子生徒はウィンドバリアで対処した。
だが、数が多かったファイヤボールのうち幾つかが集まり、ファイヤーランスへと変化させて相手の予想を裏切る攻撃を仕掛ける。
お互いに魔法を発動する時は詠唱破棄だが、クレア姉さんは魔力操作の技量が相手よりも完全に上であり、何度も相手の予想を裏切る攻撃を繰り替えす。
勿論その間に杖による打撃攻撃が加えられており……俺達はそれが本気ではないという事が解った。
「多分、徐々に緩めたよな」
「だな……相手の力量を理解した後は油断しない程度にキッチリと攻め続けた。でも……せいぜい一分程度じゃないか? 速攻で潰した俺が言えることじゃないが、相当早い決着だよな」
「短期決戦の部類には入るかもな」
「そこそこ、早く終わった、ね」
やっぱりセルシアから観ても早く終わったって感覚か。
確かにアリク程速攻で試合を終わらせた訳じゃないが……どうなんだろうな?
観客の沸き具合からして満足してるとは思うけど、内容は相手側が防戦一方だったし……俺達からすれば相手の女子生徒にご愁傷様といった感じだ。
アリクなんて途中からおそらくクレア姉さんと戦っている女子生徒に向かって合掌してたし。
「一般的に後衛職の人が前衛タイプ並みの戦意を持ちながら襲い掛かってくるのって普通に怖いよね」
「そうだよ、それなんだよ。それが悪いとは全然思って無いぞ。そういうところがクレアの強味だと思っているが……やっぱり相手の生徒に同情するな」
団体戦に出てくるような前衛タイプの生徒ならまだ勝てる可能性は高かったと思うけど、今回は……選出運の悪さもあってフレイア女学院側の完敗だな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます