同じ技で
セルシアから拒絶にも似た様な言葉を放たれたイーリスの表情は更に歪み、自分の友人でありライバルを変えてしまったと勝手に勘違いしながら元凶と思われる男を睨みつける。
(あの男が……あの男が私のセルシアを変えたッ!! ……絶対に潰すッ!!!!)
対戦相手のセルシアでは無く、その奥で二人の戦いを観戦しようとしているラガスに向かって敵意や殺意を込めた視線を向ける。
そこで審判からの合図があり、二人は開始線に戻って戦闘に備えて構える。
(今日のイーリス、なんだか変。ラガスは強くて、優しくて、カッコイイ、のに……なんで悪口ばっかり、言うんだろう?)
セルシアは何故イーリスがここまで自分のパートナーであるラガスを馬鹿にして、貶すのか理由が解らなかった。
それでも直ぐに感情を切り替え、自分の為に……一緒に戦う仲間の為にイーリスを倒す。
「それでは先鋒戦……始めッ!!!!」
審判の試合開始の合図と共にイーリスは複数のアイスボールを生み出す。
「アイスボール」
詠唱破棄で生み出されたアイスボールは一直線にセルシア向けて放たれた。
相変わらず一年生とは思えない技術の高さだが、セルシアはその程度の攻撃に動揺する事無く対処する。
「魔弾」
イーリスと同じく自身の周囲に魔力の弾丸を生み出し、向かってくるアイスボールを狙撃。
魔弾は回転しており、貫通力を上げてアイスボールを貫いた。
貫かれたアイスボールは速度を失ってそのまま地面に落ちていく。
「ッ!!!」
憎い相手と似た様な方法で自身の技を相殺されたイーリスの怒りゲージが溜まっていく。
「まだまだよっ! アイスランスッ!!!」
今度は氷の槍が四本生み出され、セルシアを襲うのだが……アイスランスの速度は全く脅威にならない。
「魔槍」
「ッ!?」
今度は魔力の弾丸では無く、槍を生み出して対処された。
魔弾と同じく旋回しており、貫通力ではアイスランスより勝っており、呆気なく相殺してしまう。
(……まだ、普通に戦っていた方が良いかな)
試合を速攻で終わらせない方が良い。
ラガスは学校側から試合を速攻で終わらせないで欲しいと言われているので、自分もそうしないように気を付けている。
セルシアが本気を出せばイーリスは対応することが出来ない。
魔力感知のスキルを使用すれば目前から消えたとしても、何処にいるのかは分かる。
ただ……反応出来るかどうかは話は別だ。
接近戦が全く出来ないイーリスではないが、それでも並み程度……もしくは並み以下の実力だ。
遠距離戦に関しては超Aクラスの実力を持っているので、典型的な魔法使いスタイル。
それが悪い訳ではないが、セルシアとは相性が悪過ぎる。
パワーよりもスピードに特化した戦闘スタイルならば尚更だ。
「ライトニングボール」
とりあえずイーリスの領域で戦おう。
そう決めたセルシアは魔弾では無くライトニングボールを複数放つ。
魔法の才能はイーリスの方が上。それは変わらない事実だが、セルシアも詠唱破棄は行える。
そしてセルシアは自分が操る雷の魔力を少々弄っており、高熱を持つようになっていた。
なのでライトニングボールにアイスボールで対抗しても完全に相殺することは出来ず、小さくなった雷の弾丸がイーリスを襲う。
「うそっ!?」
自分のアイスボールが打ち勝つとは思っていなかった。
でも、必ず相殺できるとは思っていた……が、その結果は自身の氷弾が撃ち負けた。
それでもセルシアのライトニングボールは威力も速度も下がっていたので回避に成功。
(どういうことかしら? セルシアも魔法の腕はそこそこあるけど、そこは私の方が上。それなのに何で……解らない)
自分のアイスボールが撃ち負けた原因が解らないが、そんな事で動揺していたら試合に負けてしまうのも解っている。
なので悩むのは後にし、直ぐに反撃に出る。
アイスランス、アイスカッターを連続で放ち、防がれた隙を狙ってアイスフロアを発動。
足を止めた瞬間に大技で仕留める。
つもりだったが……少々自信のある足止めが全く通じていなかった。
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