完封してくれて有難う
「……相手は学生ですか?」
「はい。フレイア女学院の生徒さんです」
フレイア女学院……もしかしてイーリス・リザードか?
でも、試合が終わった後も特に俺を認めた様な目をしていなかった様な……まっ、なにはともあれ面白そうだから良いか。
「良いですよ」
「ありがとうございます」
直ぐにその場から離れ、店員はフレイア女学院の生徒の元へ向かった。
「良かったのですかラガス坊ちゃま?」
「何がだ?」
「他校の生徒とはあまり関りを持ちたくないと思っているのではと……もしかして火遊びですか? それはあまりお勧めしませんよ。セルシア様という未来の奥様がいるのですから。あっ、でも遊ぶならな学生のうちの方が良いかもしれませんね」
「なんでそういう考えになるんだよ。別に火遊びするつもりは無いっての」
美人でスタイルが良い人に言い寄られたら確かに目を奪われるかもしれない。
でも、だからといって流石に最後までやってしまうほど自制心が緩い訳では無い。
「隣、失礼しますね」
「あぁ、どうぞ……」
この人……見覚えがあるな。
透き通るような翡翠色の挑発に綺麗な目と小さな顔。
そしてまぁ……十五歳にしては出てるところは出ていて、引っ込んでいるところは引っ込んでいる……前世の記憶がある俺にとってはそこそこの謎だな。
そんで……あっ、思い出した。
「アリクと準決勝で戦ってた人ですよね」
「あら、覚えていてくれたのね。レーシア・ラージュよ。よろしくね」
「どうも、よろしくお願いします」
そりゃあんだけアリクとバチバチに戦ってたから覚えてるよ。
うん……今思い出しても中々名勝負だったと思う。
ただ、相性が悪かったよな。
アリクは最近土魔法も使えるようになったらしいが、メインは火。
そしてラージュさんの得意魔法は風。
風は火の火力を上げてしまう。
それでも鋭い一閃に関してはその火すら斬り裂いていたけどな。
でも、最終的にはアリクが根性でゴリ押しして勝ったって感じだったか。
「フレイア女学院の生徒会長をしてるの。リースとは幼い頃が仲が良かったのよ。決勝ではもう一度あの子と戦うつもりだったのだけどね」
「あぁーーー……なるほど。まっ、俺の兄ですからね。強いですよ、アリクは。クレア姉さんも」
本当に強くなった。家を出て学園に入るまでのアリクなら考えられない程にな。
最後まで諦めない根性と、それを支えるだけの技術が今のあいつにはある。
それに、まだまだ強くなる予兆があった。
それはクレア姉さんも同じかもしれないけどな。
「えぇ、そうね。一年前の彼なら勝てたのだけど……予想以上に強くなっていたわ。でも、君の強さを考えれば、兄が負けていられないと高みを目指すのは当然よね」
「は、はは……そうかもしれませんね」
そういった理由が無いとは言い切れないな。
子供の頃からアリクは俺を意識していた訳だし。
……さて、そろそろなんで俺と相席しようと思ったのか訊きたいな。
「それで、俺になんか用ですか?」
「ふふ、当然気になるわよね。まずはお礼を言わないとね。イーリスを完膚なきまでに倒したことを、ね」
「……え、それに関して、ですか?」
自身の学園のスーパールーキーを潰されてお礼って……どういうことだ?
そこは普通だったらブチ切れるところだと思うんだが。少なくともフレイア女学院の教師陣はうちの学園の評判が下がるってプンプンしてるんじゃないのか?
「そうよ。あの子は水と風、そして特に氷魔法に関しては才に満ち溢れている。でも、学園に入ってからはその実力故に少し驕りがあった。同学年の子ではあの子の横に立てる生徒はいない」
でしょうね。魔法アビリティに関してはマジで本人の才と努力が丁度良く重なり、他の人が見上げる位置まで既に上っている。
でも、同じ学院内に勝てない相手はいるだろ。
「確かにあそこまで魔法アビリティが熟達している一年生はそうそういないでしょう。けどラージュさんなら絶対に勝てますよね」
「……その根拠は?」
「アリクなら絶対に勝てます。そしてそんなアリクと超良い勝負をしていたラージュさんなら勝てると」
確かにあそこまで無詠唱を使えているのは真面目に凄いと思うが、それでも三年生ならあれに対処出来る人はそこそこいる筈だ。
「そうね。確かに勝てるわ。事実、一対一の勝負で勝っている……でも、その相手が私では意味無いのよ」
? なんでだよ。天狗になっている鼻を折るには十分な結果だと思うが。
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