夜の来客
「ふぅーーー・・・・・・本当に楽しめたな」
夕食を終え、風呂も終えてからベランダでのんびりと夜風に当たる。
昨日今日の戦いを頭の中で思い出す……結局は予想通り俺の全勝だったが、それでもそれなりに楽しめた。
今日の、最後のセルシアとの戦いは良かった。
雷王の砕牙……あれには本気で震えた。
獣王の進撃で対応するのに十分な威力を持っていた。
「それで、明日からはセルシアと一緒にダブルス、か……」
正直楽しみである。
シングルより単体の実力で俺を上回る奴がいるとは思えないから、相手の実力は大して興味無い。
セルシアと一緒に戦うのが楽しみだ。
戦術は……単調なものになるかもしれないけど、それでもワクワクしてる。
「それで……俺に何の用ですか? というか、普通に真正面から来て欲しいですね。びっくりするじゃないですか」
下から重さを感じさせない跳躍でベランダにやって来た。
「全然驚いてるように見えないけどね。それと、もう皆寝てる時間だろう。だから正面から行かなかったんだよ。本当は手紙だけ置いて帰ろうかと思ったんだけど、ベランダに君の姿が見えてね」
「そうですか。それで、副騎士団長が直接渡しに来る用事ってのは何ですか?」
今はパートナー専用の寮にいる。だから学園に入るには許可を取らないと駄目なんだが……まっ、副騎士団長様にはあんまりその辺りは関係無さそうだな。
「もしかしたら予想出来てるかもしれないけど……国の騎士団は君を欲しがっている。猛烈にね」
「それは……一応光栄なことですね」
なんとなくそういった類の誘いはあるかもしれないと思っていたが、本当に来たか。
「しかも、全部の騎士団が君を欲しがっているんだ。全団が一生徒を欲しがるなんて滅多にないんだけどね」
「そうなんですか」
「はっはっは。やっぱり君はこういった誘いに全く興味が無いようだね」
「そりゃあ、俺の道はハンターですからね。いくら騎士団からオファーが来ても受ける気は無いですよ。そもそも、俺みたいな生意気小僧が騎士団に入ったところで馴染めないのは目に見えてます」
あんまり面倒な人と対立はしたくないが、相手から喧嘩売って来た場合は基本的に買って潰してしまうだろう。
・・・・・・うん、その光景が容易に頭に浮かぶ。
というか、相手がそれ相応の手段で害を為すならこっちもそれ相応の手段で返す。
だからぶっちゃけ殺す可能性もある。
同じ騎士団で恨み合ってる者同士の間でそういうのが起きたら絶対に問題になる。
「確かに君に良くない感情を持つ騎士はいるかもしれない。でも、それは実力で黙らせてしまえば良いだけじゃないか?」
「……確かにそうすれば黙るかもしれません。でもその場凌ぎの話ですよ。どうせ後から俺の脚を引っ張ろうと策を練る。俺だって戦闘面は自信がありますけど、いつでも人の人生を狂わせるような策略に対応出来るとは思っていません」
「随分と謙虚だね。君はそういう事に関しても自信があると言っていた気がするけど」
そんなこと言ったか? ・・・・・・まっ、言ったのかもしれないな。
ただ、俺の場合は少し極端だ。
「確かに厄介事には対応出来るかもしれません。ただ、俺に喧嘩を売って来た相手がどうなっても良いなら……少しは考えますよ」
「あぁ~~……なるほどね。流石にそれは遠慮して欲しいかな」
「俺は自分に刃を向けてくる相手には基本優しくしないので」
副騎士団長も俺が相手に対してどう対応するかは解ったみたいだな。
基本的に殺す。俺に危害を加えなくなったとしても、俺の関係者に手を出す可能性がある。
そうでない人もいるだろうけど、半分ぐらいは逆恨みで俺の友人知人に嫌がらせをするだろう。
「そこら辺は本当に強気だね。まぁ、それが君らしいとも言えるが……分かったよ。スカウトの件は僕が全騎士団に伝えておくよ」
「ありがとうございます」
そもそも俺は騎士なんてガラじゃないからな。
多くの点で不適合者だ。
「それで、話を変えるけど君のパートナー以外の生徒はどうだった?」
「どうだったって……強いか弱いかって話ですか?」
「そんな感じだね」
……あんまり簡単に言葉が浮かばないな。
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