完全に決まったカウンター

マジになった強気なメイドはその場から駆け出し、メリルに突きを放った。

良い突きだな。感情的になってるように見えるかもしれないけど、動きが無茶苦茶になってる訳でも無い。


というか、さっきとは速度が圧倒的に違うからその一撃で試合が終わるかもしれない。


ただ……それは相手がメリルじゃ無かったらの話だな。

強気なメイドの突きに動きを合わせ、顔面目掛けて放たれた突きを躱し、左ストレートを腹にぶち込んだ。


あ~あ、瞬間的に身体強化も使ったみたいだし、モロにメリルの拳を貰った。

ありゃ受ける覚悟が出来て無いと悶絶ものだろう。


勢い吹っ飛んだし、それが威力を落とす為のバックステップによる影響には思えない。

骨はボキボキに……最低限罅は入ってるだろう。


それに、あ~~~~あ。女の子があんなに血と朝ご飯? を吐いちゃうのはよろしく無いと思うんだが。

あの様子を見る限り折れた骨が内臓に刺さってるのか?


「そこまで! 勝者はメリル!!!!」


試合続行不可能と判断した審判がメリルの勝利を宣言する。

試合用に満足した観客はおおいに沸いた。


だけど、相手の強気なメイドは全く納得がいって無いって目をしてるな。

ボロボロな事に変わりは無いんだが、それでもまだ目が全然死んで無い。


場外に落ちたのは偶々だ、とか思ってるのかもな。

でも何度戦っても偶々な結果は起こらない。


それほどまでに素の能力に差がある。


全ての一回戦目を見たけど、確かに全体を見れば頭一つか二つ抜けてる奴はいた。

それでも全力のメリルに勝てる可能性は……ゼロだな。


「一位はメリルで決定だな。俺も油断しない様に一位にならないとな」


いつでも全開で動けるように少しは体を動かしておくか。


SIDE セルシア


「一回戦は全て終わりましたが、セルシアさんはどなたが優勝されると思いますか?」


今、私はいつも一緒にいるメンバーとは、違う人と一緒に観戦している。

昔から、付き合いのある、人達。だから悪い人、じゃない。


「……メリルさん」


「パートナーであるリゼート様のメイドですね。確かにあの突きを躱してのカウンターは見事でしたが、メイドと執事のみで行われる大会では年齢差が大きいですし、流石に優勝は難しいのではありませんか?」


「普通に考えれば、そうかもしれない」


そう、普通はそう思う。

私も、ラガスを……メリルさんを知らなかったら、そう思うかもしれない。


「でも、ラガスが普通じゃ無いように、メリルさんも普通じゃ、無い」


「確か、セルシアさんの元婚約者であるナーガルス様を容易に倒す実力を持っていると。そこまでの実力をお持ちなのですか? あなたが嫌がっていないという事は相当な実力の持ち主なのでしょうけど」


「……ラガスは、言葉通り、普通じゃ無い。私だって勝てるイメージが、浮かばない」


模擬戦は何度も行ってる。でも、まだ一回も勝ったことが、無い。

ラガスが、本気を出してないのも、解ってる。


「そ、それは流石に言い過ぎでは?」


「言い過ぎなんかじゃ、ない。彼ほど前を向きながら、強くなろうとしてる人は、知らない。そんなラガスに、メリルさんは付いて行ってる。いくら歳の差があっても、三つか四つ程度じゃ、大差ない……かな」


「そう、ですか……大会でセルシアさんと戦えるのは楽しみにしていましたが、正直リゼート様と当たるのは少し恐怖を感じますね」


私は、いつも模擬戦をしてるから、解らない。

ラガスは、私の全力を受け止めてくれる、大きな存在、だから。


怖いと思ったことは、ない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る