ただ黙ってる訳が無い
SIDE シュラ
はぁ~~~~、誰が相手でも負けないって気持ちで入るけど、こうも歓声が大きいと少し緊張するな。
一回参加する執事全員が集まる時があったけど、確かに実力の幅が広いけど……そこまで驚く様な奴はいなかった。
ただ、俺はラガスさんみたいに相手が持ってるアビリティとかが解からないから油断は禁物だ。
でも武器を使うのは相手がそれ相応に強いって解ってからでも良いだろう。
というか、前半はメイドの部なんだしメリルの事を応援……いや、あいつに応援は必要か?
あいつが仮に全力で戦ったとしたら勝てるメイドが歳の近い連中にはいないと思うんだが……同僚してやっぱり応援しないとな。
控室から試合を観れる場所に向かう。
するとどうやら二回戦が終わった直後らしく、これからメリルの試合を行う。
メリルと対戦相手のメイドがリングに上がると観客から今一度大きな歓声が溢れる。
やっぱり基本的に貴族のメイドというだけあって、皆容姿のレベルは高い。
だから観客としても……というか男性陣としては喜ばしい限りなんだろう。
おっと、どうやら対戦相手がメリルを挑発しだした。
あんたはたかが男爵家のメイド、私の魅力は勿論のこと主人の魅力も私の方が上、そんなあなたが私に勝てる筈が無い等々……まぁ、随分と言いたい放題だな。
そんな罵詈雑言に対してメリルとは特に言い返すことなくジッとしている。
今より幼い時だったら絶対にブチ切れて試合開始前とか関係無しに潰しに行ってただろうな。
俺もだろうけど。
ただ、相手が罵詈雑言を言い終えるとメリルは弱いクソほどよく吠えますねと言い返した。
ブハッハッハッ!!! やっぱりあいつがただ言いたいこと言われて黙ってる訳が無いか。
口戦が終わり、いよいよ試合が始まる。
相手の強気なメイドはどうやらレイピアを使うみたいだな。
腕前がどの程度なのかは解らないけど、あれだけ強気だったら弱いってことは無いだろう。
一般的に考えられるレベルのは話だけど。
レイピアを構えるメイドに対してメリルは素手だ。
武器を持たないメリルに嘗められていると思ったのかメイドの表情が歪む。
というか、眉間に皺寄り過ぎじゃないか。
確かに何も知らない相手からすれば武器を持たない対戦相手なんて自分を下に見ているとしか思えないだろう。
それにメリルの体格を考えればなおさらだ。
でも俺やメリル、ラガスさんも全員一定ライン以上の体術が使える。
だから相手が武器を持っていようと弱気になる事は無い。
まぁ……相手のメイドが持ってる武器がただのレイピアじゃないってのはメリルも解ってる筈だ。
お互いに構えると、それを確認した審判が試合開始の合図を行う。
するとお互いに動かず静止状態が十秒近く続く。
その間に強気なメイドがメリルを挑発するが、それに乗ることは無いメリル。
先に痺れを切らした強気なメイドはフェイントも無しに真正面からメリルを襲う。
レイピアでの主な攻撃は突き。
上手く行けば人体を貫き、重傷を与えることが出来るだろう。
強気なメイドの突きは確かに才能に胡坐をかいたものでは無い。
それは何となくだが解かる。
だが……それでも遅い。
まだお互いに様子見の段階ということもあってか、身体強化のアビリティは使用していない。
それでも戦闘経験の数が違うというのもあるが、速さは俺達の主に遠く及ばない。
もちろん素の状態の話でだ。
事実、メリルはその場から殆ど動かずに攻撃を躱している。
あぁ~~~、そんな無駄な攻撃の繰り返しじゃ無駄にスタミナを消費するだけなのに。
メリルも途中から適当にパンチや蹴りを返しているが、相手がギリギリ躱せる程度の速さなので相手もノーダメージといえばノーダメージだろう。
観客たちから見ても良い勝負という感じに思えるかもしれない。
だが、埒が明かないと感じたのか、強気なメイドは一旦大きく距離を取った。
そしてそこでようやく身体強化のアビリティを使用し、レイピアの刃に風を纏う。
相手もようやく本気になったって訳か。
さて、メリルがどう対処するのか……それとも、終わらせてしまうのか?
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