表はポーズだけ
「じ、ジーク様。何故こちらに」
「お前達が僕も待っていなかったから、もしかしたらと思ったが……くだらない真似はしないでもろうか」
おーおー、俺と戦っている時よりも戦意が怒気に近いな。
それだけキレてるって証拠か。
「彼は僕と正々堂々と戦った。お前達は僕があの瞬間に動きが止まってしまったのを不審に思ったのだろうが、あれは僕の精神が未熟だからこそ起こってしまった失態だ」
「し、しかしジーク様の動きを完全に止めるなど「これ以上あの戦いを汚すのは許さないぞ!!!!」
おわっ、なんて声を出すんだよ。
いきなり大声を出したのにはびっくりしたけど……ジークって案外熱い奴なんだな。
「「も、申し訳ありません、でした」」
ジークが急に大きな声を出したからか、それとも普段はここまで怒ることが無いからなのか分からないけど、随分と従者の二人は震えているな。
「すまない、リゼート。僕の従者が不快な思いをさせてしまった」
「いいや、別に俺はそこまで気にしていない。だから頭を上げてくれ」
やっぱり自分を馬鹿にされることに対してイラつきはする。
でも今回は他の人にも言われるであろう想定内の内容だ。
寧ろこれぐらいで怒り狂っていたら今後が心配だ。
メリルとシュラは俺よりキレているように思えるが結構冷静なんだな。
言葉には荒々しさが含まれているけど、力で捻じ伏せるのは最終手段って雰囲気をだしてる。
だって二人共身体強化のアビリティ使ってないし、闘気も纏っていない。
なにより構えていない。
勿論、構えていない状態でも二人は動き出せるけど、それでも本気で潰す気なら構える筈だ。
「ジークがそう思ってくれてるだけでちょっと嬉しかったよ。そこの二人と同じように考えている人は多いだろうからな。だから本当に気にしなくて良い。基本属性のアビリティを使わずに勝つって事は、俺が勝ち続けてもそう感じてしまう人は少なからずいる筈だからな」
「・・・・・・本当に、本当に済まなかった」
「「ッ!! ら、ラガス・リゼード様。無礼な態度をとり、無礼な言葉をぶつけた事、深くお詫び申し上げます」」
ジークがもう一度深々と頭を下げると、従者の二人も同じく深々と頭を下げて俺に謝って来た。
言葉の感覚からしてまだ納得しきれていない部分はあるんだろうけど、主だけに頭を下げさせてはならないと従者としての感情が体を動かしたんだろうな。
「何度も言うけど、気にしなくて良いからな。ただ、罵倒に対して暴力を抑えられない奴。もうしくは抑える気が無い奴だっている筈だ。もう少し考えて発言した方が良いぞ。いろんな意味でな」
貴族社会の中にも、その枠に外れた暴君がいるかもしれない。
そういった相手には侯爵家だろうが公爵家だろうが関係無いだろう。
まっ、俺も頭ぷっつんしたら正面からはやらないけど、こっそりぶっ潰すし。
ジークと二人の従者と別れてセルシア達と合流する途中、長い沈黙があったがそれをメリルが破る。
「ラガス坊ちゃま、本当になにもしなくて良かったのですか?」
「別に構わないっての。あの二人がやってしまった事は良くないんだろうけど、誰かの為に怒って結果ああなったんだ。まっ、その誰かに怒られたら意味無い気もするけど」
ただ、あの場面を見てる人が誰もいなかったからジークに対してのダメージはゼロだったけど、目撃者がいたら後々ダメージを喰らうだろう。
それを考えるとメリルとシュラも・・・・・・いや、二人は売られた喧嘩を買っただけだから問題無いのか?
「てか、二人共そもそも手を出す気は無かっただろ」
「基本的には、ですよ。仕掛けて来られたら容赦無く潰すつもりでした」
「俺もっす。そういう事情が解かる魔道具があるらしいじゃないですか。それを手に入れてしまえば後々の事は考えなくても良いんじゃないですか」
「いやいや、そういう訳にもいかないのが権力ってもんだろ」
でもそういう魔道具があれば楽になる場面はあるだろうし……ちょっと情報が欲しいな。
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