主人は立派なのに……
「いやぁ~~~、まいったね。どういう仕組みかは分からないけど、厄介な切り札を……いや、君にとっては手札の一つか」
「さてな、そこら辺は自分で考えてくれ。それと、仕組みは教えないぞ」
「それは分かってるよ。自分の手札の内容をバラスなんて愚の骨頂だからね」
良く解ってるじゃん。
ただ、イリュージョンボイスをどういった種類のアビリティと捉えるかはその人次第だけどな。
そんな直ぐには基本属性以外の魔法アビリティである、音魔法だと辿り着く人はいないだろう。
「魔闘気は前よりスムーズに扱えていたし、体術を混ぜてくるのもちょっと驚いた。魔弾の回転も上手く扱えていた。ただ、もう少しメンタルを鍛えた方が良いかもな」
「は、ははは。それはそうかもしれないね。ただ、あれを初見で抵抗出来る人は中々いないと思うよ。特に学生相手にはね」
「そうかもな」
リングの上で会話を終え、メリルとシュラの元へと戻る。
「お疲れ様です、ラガス坊ちゃま。……いえ、そこまでお疲れではなかったようですね」
うん、確かにそうだな。
ジークは以前戦った時より確実に強くなっていたけど、汗をかくほどの相手じゃ無かった。
状況が選抜戦ということもあって、戦意はあったけど殺意は無かったからな。
「俺はちょっと驚いたっす。あいつ、ただの坊ちゃんじゃ無かったんっすね」
「ジークは相手が何かに特化していればそれ相応に認めるんだろう。前回戦った時も不格好な形ではあったけど魔闘気を使えてた。俺らの歳であれが扱えるという事は才能だけに溺れずしっかりと努力してるって証拠だろう」
一般人、貴族に関わらず才能だけで上に上がろうと努力しない奴は必ず限界がある。
そうでない奴もいるかもだけど、そんな奴は天才とかそういう分類では無く化け物、傑物ってジャンルの人間だろう。
「まっ、それは今どうでも良いとして、何そんなに殺気立ってるんだよお二人さん」
俺が後方に声をかけると、通路の分かれ道からジークの執事とメイドが現れた。
「サルーザに」
「アリスさんではないですか。ラガス坊ちゃまの言う通り、そんな殺気立っていったい何の様でしょうか。返答次第ではそれ相応の覚悟を」
メリルとシュラも臨戦態勢になるのが速いね。
ただ、俺もちょっと気を抜かない方が良さそうだ。
「俺は正々堂々と戦ってジーク・ナーガルスに勝ったんだけどなぁ。何がそんなに気に入らないんだ?」
「最後のあの瞬間、お前が卑怯な手を使わなければジーク様が急に動きを止めることは無かった!!!」
「その長剣以外に何か道具を仕込んでいたのでしょ!!!」
おいおい、酷い言いがかりだな。
確かに選抜戦では武器以外の道具は使用禁止だが、別にアビリティの使用は禁止されていないだろう。
「それは、俺達の主人が反則を行たって言いたいのかカス共」
「あらあら、随分と脳が小さい方達なのですね。一度医者に診察を受けることをお薦めしますよ。ただし……五体満足で向かう事は出来ないでしょうが」
狭い通路に四つの殺気が充満してきた。
大人の殺気をいまいち知らないからあれだけど、同年代の子供達なら不快感で吐いちゃうんじゃないか?
「まぁまぁ、二人共落ち着けよ。サルーザにアリスだったか。俺が何か道具を使ってジークの動きを止めたというが、それなら審判をしていた先生が選抜戦を中止して俺を止める筈だぞ。この学校の教師たちのレベルは高いんだし、生徒の反則ぐらい速攻で見破るでしょ」
事実、いくつかの選抜戦で反則を行った生徒が直ぐにバレて謹慎処分を喰らった。
「というかお前らさぁ……自分達が仕える主があんなに努力がで位が高い貴族の坊ちゃんにしては性格も比較的まとも。なのにお前ら従者が現実を受け止められなくてどうするんだよ。なぁ、ジーク!!!」
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。リゼートの、言う通りだ」
反対から全力で走って来たみたいだな。
おそらくは自分の従者が待っていなかったことを不審に思い、直ぐに俺にいちゃもんを付けに行ったって考えに至ったんだろう。
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