意外にあっさりと

「随分とサラッと許可を出してくれたな」


「ラガス坊ちゃまの強さを教師達は皆知ってるでしょうし、セルシア様もいるので特に問題が起こることは無いだろうと判断したのでしょう」


「なるほどね。力と権力があれば確かに怖いものなしだ」


久しぶりに殺気を持つモンスターを相手にしたいと思い、休日に外出許可を提出。

理由の欄には嘘を付かずにモンスターの討伐と書いた。

少しだけ待たされはしたが、問題無く学園を出て王都の外に出ることが出来る。


「今日は何かお目当てのモンスターでもいるっすか?」


「ん~~~……いいや、特にいないな。体が鈍らない程度に良いモンスターが襲い掛かってくれれば問題無い」


「誤解を生みそうな言葉ですねラガス坊ちゃま」


「そうか? ……確かにそうかもな」


別にドМという訳では無く、適度に殺気を当ててくる敵と戦わないと、少し勘が鈍ってくる。

仲間同士だとそういうのは難しいからな。


「セルシアもしっかりと体動かしたいでしょ」


「そう、だね。ラガス達と模擬戦では、得られない感覚が、ある。偶には、そんな戦いをしてないと、ラガスの言う通り、体が鈍ってしまう」


だよな! 自分の命を狙ってるって感じる戦いを一定間隔でしていないと、体が鈍る・・・・・・というより、咄嗟の反応が送れるといった方が正しいか。


俺達は仲間同士だから模擬戦で殺気を出したりなんてしないけど、大会では話が別だ。

己のプライドや目標の為に死に物狂いで挑んでくる相手がいるだろう。


そんな相手が、覚悟を決めて放つ一撃は相手を必ずぶっ潰すって意志の籠った目でこちらを見て、気配を無意識に飛ばしてくる。その一瞬の動きに反応出来るかどうか、乾坤一擲の技を躱せるかどうかがその殺気や敵意を感じ慣れているかどうかが問題になってくる。


相手が格下であっても本気の殺意を向けられれば、それに気圧されてしまって隙が乗じてしまう可能性がある。

まぁ、正直今回の大会は褒美は魅力的だけど、そこまで重要って訳じゃ無い。


でも、父さんや母さんに兄さんや姉さんが見てる前で無様な姿をさらすのだけは勘弁だ。


「まっ、俺達にはルーフェイスがいるんだし、予想外の敵が現れても問題無い」


『ふっふっふ、ドンとこいだよ!!』


まだまだルーフェイスは子供だが、Cランク程度のモンスターなら余裕をもって倒せる。防御に特化したモンスターなら少し話は別かもしれないけどな。


Bランクのモンスターは……正直会ったことが無いから解らん。

父さんや母さんはCランクのモンスターより上は一線を画すって言ってたからな。


もしかしたらルーフェイスでもヤバいかもしれない。

ただ、もしそんな化け物に遭遇したら、俺達が全力でサポートしてやればいい話か。


門の外に出て、レックス先生から教えて貰った森へ駆け足で向かう。

王都の周囲は基本的に超安全だから、モンスターと遭遇することはまず無い。

それほどまでに整備されてるって訳だ。


そしてモンスターが現れる場所までにはそこそこ距離がある。

帰ってくるまでの時間と探索する時間を考えればあまり時間を無駄にしたくない。


今日はロックスとメイドさんも付い来ているので前よりスピードを落として移動する。

俺と一緒に訓練するようになってから少しスタミナは付いたと思うけど、まだまだ俺の様に動くことは出来ない。


そして数度休憩を休み、目的の森に到着。


「そういえば、ここまで来る途中に結構ハンターらしい人達がいたね」


「そうだな。目的は俺達と同じでモンスターの討伐……いや、ハンター達は依頼達成の為か」


依頼を受けずにモンスターを倒してもギルドが素材や魔石を買い取ってくれるみたいだけど、やっぱり依頼を受けての方が稼げるのか。


「もし私達がハンターになったら、その点は大丈夫そうですね」


「どういう……あぁ、そういうことね」


「どういうこと、なの?」


メリルは俺がフェリスさんから貰ったアイテムリングや収納のスキルを言ってるんだな。

確かにそれがあれば倒したモンスターの素材や魔石の量は気にする必要は無い。


さて、そんな俺達の会話に疑問を感じたセルシアにどう答えるべきか……誰がどこで訊いてるか分からないし、この場で言うのは止めておこう。


「帰ってから話すよ」


「分かった」


さて、どんなモンスターと遭遇するのか……ちょっとだけ楽しみだな

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