パートナー専用部屋

「・・・・・・な、なんだここは?」


「広い、ね」


そう、セルシアの言う通り広いのだ。

俺・・・・・・ではなく、俺達が入居する寮の部屋が。というか作りも違う気がする。


ちなみにメリル達は直ぐ傍の部屋に入居するらしい。

てか、俺達の部屋だけ寮じゃなくて家だよな。


「歴代のパートナー達はこの特別寮を使用していたらしいですよ」


「一緒にいる時間が長ければ長い程、仲が深まるという考えらしいです」


キリアさんが説明してくれた内容に一理無い訳では無いが、元々仲が悪かった同士の者ならば更に仲が悪くなりそうな気がするんだが。


「台所の設備もしっかりとしていますので、食堂では無く寮でご飯を食べる事も可能です」


「そ、そうか。とりあえず今日は何にも用意していないから夕食は食堂で食べよう」


全員俺の意見に賛成だったので、六人揃って食堂まで向かうんだが・・・・・・受験の時以上に多くの視線と感情がこちらに向いている。


生徒達は主に俺について小声で喋っているようだが、少し耳の良い俺には何を喋っているのか大体解る。


基本属性の魔法アビリティを習得出来ない劣等生。

貴族らしからぬ戦い方をする者。

セルシアのパートナーとして絶対に釣り合わない男。

顔に似合わないドSな性格。


等々殆どは俺に対して良い感情を持たない視線だが。

ジークとの戦いを素直に受け入れた生徒達にはそういった感情は持たれていない様だ。


というか、女子生徒に関してはそこまで俺に悪感情は抱いていない様だな。

俺に突き刺さるような視線を向けている者はジークのファン的な奴らか?


「モテモテですね、ラガス坊ちゃま」


「解っててそう言ってるだろメリル。はぁーーー、解ってはいたが面倒極まりないな」


人の噂も七十五日にと言うが、長い。

その間に俺の胃に穴が空きそうだ。


「セルシアはこういった視線にはやっぱり慣れてるのか?」


「父様に誘われて、パーティーに出ることは、多かった。だから、もう慣れた。というより、気にしなくなった、かな?」


そうか。何回も人の視線が多く集まる体験をしていればいずれ気にならなくなるものか。

俺はある程度歳を取るまでは気にしてしまいそうだけどな。


「ラガス坊ちゃまは中々慣れないでしょうね」


「だろうな。まっ、これから生きていく上でセルシアみたいに気にならなくなれば一番良いんだけどな」


もしかしたら精神安定系の魔道具とか身に付ければ気にならなくなるか?

いや、そんな確証は無いから無駄金を使うのは止めておこう。


「そういえばラガスさん、選択授業はどんなのを受けるんすか?」


「ハンター科と錬金術科。あとは対人戦科・・・・・・そんな程度かな。他にも色々あったが、他は興味無かったからな」


錬金術に関しては最初の内はつまらんかもしれんが、錬金術が使える俺にとって受けておいて損は無い授業だ。

他二つも楽しいかは解らんが、ハンターになる俺にとって受けておいた方が利になる授業だろう。


「魔法科は、受けないの?」


「えっ、いやぁ・・・・・・だって俺魔法使えないしさ」


基本属性の魔法アビリティを使えないから、俺が受けたところで意味ないと思うんだよな。

音魔法は多分俺以外に習得している人は少なくともこの学園にはいないだろうし。


「でも、魔法の知識はあったほうが、得じゃないかな?」


「あぁーー・・・・・・どうだろうな」


セルシアの言う事も分る。

各属性魔法にどんな攻撃があるのか解れば直ぐに対処出来るようになる。


隣にセルシアがいれば、面倒事に絡まれることはないだろうし・・・・・・まっ、ありと言えばありだな。


こうしてセルシアの誘いを受けて俺は四つの選択授業を取る事になった。

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