合格祝い
試験に合格した事を両親に伝えると、普通に喜んでくれた。
試験を受ける前はあまりやり過ぎるなよとか言ってたのに、やっぱ自分の息子が試験に合格すると嬉しいのは変わらないのか。
その日の晩は少し前から予約していた高級レストランで夕食を食べた。
億が一に俺が試験に落ちていたらどうするつもりだったんだと思ったが、自身も試験に落ちるとは思っていなかったので訊くのを止めた。
訪れたレストランは外装からして一般人では絶対に入る事が出来ない事が解った。
権力を持つ、又は金を持っている人だけが訪れる事が出来る店。
俺としては外装とか内装に関してそこまで気にしない人間だが、やっぱり商売人としては気を使わなきゃいけない部分なんだろうな。
そして運ばれて来た料理を口にすると、今までにない刺激が口の中を暴れた。
食材一つ、職人の腕が一段階変わるだけで大きく味が変わるこの世界。
目の前に出された料理は普段食べている料理とはまさに次元が違った。
テーブルマナー守れるかどうか心配だった。
量もそこそこある料理だったので、思いっきり齧り付いて租借したかったところだが、それは店の雰囲気が許してくれなかったので大人しくじっくりと味わって料理を食べた。
皆で料理を食べ終えた後、宿に戻ると父さんと母さんが一つの箱を渡してくれた。
「これは?」
「俺達からの合格祝いだ。いつもは武器を渡してるんだが、ラガスは既に立派な武器を持っているからな」
「そういう事だから、今回は少しプレゼントの方向を変えたの」
確かに俺には狼牙瞬雷、アブストエンド、魔弾、それにこの体がある。
ちょっと上等な武器で狼牙瞬雷より性能が上って事は無いだろうからな。
さて、早速中身を確認させて貰おう。
「これって・・・・・・うっそ。マジ、か。こ、これってかなり値段が高いんじゃないの?」
「はっはっは、安心しろ。これは俺達がもうハンターを引退しようと考えていた時に手に入れた物だからタダだ」
「そうよ。本当にハンターを引退しようって考えていた時期に手に入れた物だから、私達も使う予定が無かったのよ」
「そ、そうなんだ。でも、だからって俺の合格祝いに渡す物じゃなくない?」
勿論無茶苦茶嬉しいよ。嬉しんだが・・・・・・本当に貰っても良いのか? って思ってしまう程に高価な物だ。
狼竜眼で視た結果、竜戦石。
ドラゴンとドラゴンが本気でぶつかり合った付近にしか現れない鉱石。
ただの戦いでは無く、お互いの逆鱗が剥き出しになり、死力を尽くした場合のみ現れる。
そんな戦い、まず起こる事は無い。
ドラゴンはモンスターの中でもそこそこ知能が高いモンスターだから、逆鱗に触れてしまったらどの様な結末が起こるのか本能的に解ってしまう。
逆鱗に触れられたドラゴンの実力は、容易にジャイアントキリングを起こす可能性がある。
そのような状態の二体のドラゴンがどちらかが死ぬまで戦う。
そんな戦いが起これば山や森は容易に吹き飛ぶ。
てな感じの話を父さん達から聞いたが、口振りからしてダンジョンで手に入れたんだよな?
「お前ならこいつを使って、とんでもない武器を造ってくれそうな気がする!!! という訳だから武器が完成したら直ぐに教えてくれよ」
「は、ははは。解った、俺が造る訳じゃ無いけど、これを素材として使った武器が完成したら直ぐに報告するよ」
なんだか自分達の願望が少し入っているプレゼントな気がするが、有難く受け取っておこう。
しっかし竜戦石に見合う素材とか、学園に在学している間はまず出会う事は無いな。
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