お前が調子に乗るなよ

メリル達も見事合格し、全員が学園に通える。


自分が合格したと解った時は素直に喜んでしまったが、周囲には同じく自身の合格に喜ぶ者もいるが逆に不合格になり、頭を抱えて項垂れている者や悲鳴に近い声を上げている者。涙が一向に止まらない者。


不合格者はそれなりの数がいる為、そっと表情を隠した。

別に悪い事では無く、寧ろ受かって喜ぶのは当たり前なんだが、それでも場を弁えた方が良いのは解る。


「ふざけるあああ!!!! こんな結果に納得できるか!! おい、そこのお前!! 不正して合格したのだろう!!! さっさとその席を俺に譲れ!!!!」


「ふ、ふざけんなよ!!! 俺は正々堂々と試験を受けたんだ!!! お前らみたいなお坊ちゃんじゃないから不正使用とか考える馬鹿な頭は持っていないんだよ!!!」


「だれが馬鹿だと!!!??? この男爵家如きが調子に乗るなよ!!!!」


「試験に落ちた伯爵家こそ調子に乗ってんじゃねぇーーぞ!!!!」


あらあら、喧嘩が始まっちゃったよ。

いや、喧嘩というか完全に伯爵家の坊ちゃんが試験に落ちたからって無理矢理何とかさせようって考えで、自分が爵位と顔を覚えている奴に脅しかけたってところか。


惨めだねぇ~~~。あの坊ちゃんが実技かそれとも筆記でやらかしのかは知らんが、だからって合格者にその責を譲れって言うのは話が違うだろ。

というか、帰り道に襲ったりせず今この場で脅迫するとか、中々に頭がぶっ壊れてしまったみたいだな。


というか俺と同じ男爵家の男の子、中々根性あるじゃん。

あれだけ距離が縮まってたらもしかしたら男爵家の子供の方が勝つか?


「ラガス、止めなくて良いの?」


「別に俺達には関係無い喧嘩だからな。ただ伯爵家の坊ちゃんの方は随分と焦ってるというか、ちょっと殺気立ってるな」


はぁーーーー。流石に度が過ぎた喧嘩を見過ごすのは良くないか。

魔弾で顎を撃ち抜いて頭を揺らせば・・・・・・って俺が手を出さなくても良かったな。


「おい、文句があるな学園長に直訴しろ。その気があるなら今からでも連れて行ってやるぞ」


「え、い、いや・・・・・・お、俺は!!!」


「後、こっちの坊主が不正行為を行ったと言っているが、それは今回の試験で試験官をしていた者達に喧嘩を売っているって事で良いんだな」


こういった事になるのが解ってたから数人の教師陣がいたのか。

しかも馬鹿に詰め寄るのは一人だけだが、その他数名は少し離れたところにいるが、無茶苦茶圧を放ってる。


ただ伯爵家の坊ちゃんが気絶せん程度にやってるのがまた上手いな。


「あ、あ、あぁ・・・・・・す、すみませんでした」


「そうか。ならとっとと戻って両親に報告するんだな」


う~~~ん、当たり前っちゃ当たり前だけど冷たいね。

いや、それが正解の態度なんだけどさ。


「大事にならなくて、良かったね」


「そうだな。いきなり同級生が大怪我をするとか話にならん」


「ですがラガス坊ちゃまなら、そうなってしまう前に何とかしてしまうんじゃないですか?」


「そうっすね。ラガスさんならもっと速く終わらせられたっす」


大きな声じゃないとはいえ、そういった話をするのは止めろっつーーの。

誰かに訊かれたらどうすんだよまったく。




「全く、毎年毎年ああいう馬鹿は何度もいるもんだな」


「仕方ないでしょう。この学園に記念受験をしに来る者はいないのですから。ただ、貴族の子息令嬢としての自覚があるなら、恥を晒さないで欲しいものですね」


「そりゃ言えてるな。というかさ、一人だけ面白い奴がいたよな」


トチ狂っていた坊ちゃんを抑えた教師の一人がもう一人のメガネをかけたインテリ教師の方にニヤッとした笑みを浮かべながら顔を向ける。


「いましたね。喧嘩を止めようとしていた男子が。どうやって止めようとしたのかは解りませんが、興味深く感じたのは確かです」


「そうだろそうだろ。入学して生徒になったら早速絡みに行くかな」


「はぁーーー、止めはしませんが生徒に拒否されたらさっさと引くんですよ」


「わかってるって」


「あなたのわかってるは不安しか感じませんね」


ラガスいつの間にか二人の教師に興味を抱かれており、在学中に目立たず過ごすという目標が更に遠ざかった。

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