王都で再会
「相変わらず元気な方でしたね」
「ウォッツさんが元気じゃないところなんて想像できないな。にしても、いつでも鍛冶の腕を見てやるって言われて良かったなシュラ」
「はい。本当に光栄なことだと思ってます」
ウォッツさんがあれだけ上機嫌にシュラの鍛冶の腕前を褒めてるって事は、本当に現時点でも大したもので将来性を感じたんだよな。
あの人は俺の従者だからってお世辞を言うような人じゃないし。
『あのドワーフのお爺さん、結構強いね』
「やっぱりそう思うか。昔はハンターをやってたらしいからな。今でも自分でも欲しい素材があれば直接狩りに行くこともあるって言ってたからな」
『あの人ならお母さんの牙や爪をしっかりと扱えそうだと思う』
「確かに、ウォッツさんなら無駄にする事無く最高の武器を造りそうだな」
実家か王都へ行く前に、フェリスさんから自身の牙や爪を頂いた。
素材を貰った事自体は嬉しい、嬉しいのだが何故そんなことをと疑問に思った。
というかまずどうやって用意したのかを気になって尋ねたところ、返答は自身で切断したらしい。
普通に考えればそんなことをしたら激痛に襲われる筈。
俺達もその話を聞いた時は思わずその場面を想像してしまい、体が震えてしまった。
だが、フェリスさんは痛覚をシャットダウンした状態で行ったので全く痛くなかったと言っていた。
それが単純に個人の技能によって行ることなのか、それともアビリティによるものなのか。
フェリスさん曰く、自身はアビリティによって行えるが世の中にはアビリティに頼らず自力で痛覚をシャットダウン出来る者もいるらしい。
そして切断した個所は再生のアビリティで即座に治したから全く問題は無い、だからその牙や爪は好きに使って欲しいと言われた。
ついでにそこら辺に落ちている羽も自由に使って良いと言われ、たった数分で大量のお宝を得てしまった。
フェリスさん、自分の爪や牙に羽の価値を絶対に理解してないよな。
「ですが、あの場ではウォッツさんに渡しませんでしたよね。何か理由があるのですか?」
「いや、別に今俺達に新しい武器は必要無いかと思ってさ」
「そうですね。全員武器が無くても私は糸に毒、シュラはその五体、ラガス坊ちゃまには魔弾が、ルーフェイスには自慢の牙と爪がありますからね」
メリルの言う通り、俺達は武器を持っていなくてもアビリティだけでも十分に戦えるよな。
「というか、俺にはあの二つがあるから当分は必要無いな」
「あの二つですか。でも、基本的には使わないのですよね」
「ああ。基本は長剣と短剣、後は短刀か脇差を使う。武器の性能を負けの良い訳にしたくない時だけあの二つを使う」
実力の差を読めない馬鹿共からめんどいいちゃもんが飛んできそうだし、狙う阿呆もいそうだからな。
「ラガス、久しぶり」
「ん? おわっ!!!???」
誰かと思えばセルシアじゃねぇーーか。
王都にいる事自体は別に驚かないけど、いきなり後ろから声を掛けられたらビックリするだろ。
今完全に緩んでた状態だったんだし。
「お、おおう。久しぶりだな。あっ、新しい執事さんか?」
「どうも、ルーンと申します。セルシアお嬢様からラガス様のお強さは聞いております。以後お見知りおきを」
「は、はい」
バーズとは違ってしっかりとした性格だな。
それに体格もがっちりとしてるタイプだな。
道中で立ち話もなんだという事で近くにあったカフェに入ってから話を再開する。
「ラガスは勉強してる?」
「落ちない程度には勉強してるよ」
「そっか。実技はラガスなら問題無いから、大丈夫そうだね」
実技か。父さんからは学園で実戦訓練の担当をしている人との摸擬戦って言ってたけど、どれぐらいの強さなんだろうな。
というか、従者がルーンとキリアさんがいるとはいえ、三人だけで王都の街中を歩かせるとは思えない。
なので気配感知のアビリティを使うと、強い力を持つ気配がちらほらといた。
もしかして私服警官的な感じでセルシアを護衛してるみたいだな。
そこら辺はセルシアに配慮しての護衛か。
ガッチガチに護衛で固められていたら楽しめるものも楽しめないからな。
セルシア達との会話はそこまで話題性のある物では無く、お互いの日常を聞き合うような形で進んでいく。
だが途中でセルシアが俺に少し意味深な事を訊いてきた。
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