周りは良識人
「あっ、死んでるぞ!!!」
「えっ、嘘!! そんなに血を流していなかったのに」
「おい。向こうに人が二人と鬼人族・・・・・・あとオオカミ? がいるぞ」
「ほんとだ!! もしかしてあの人たちが倒しちゃったのかな?」
おそらくハンターになったばかりの四人か。装備からしてそこまで整っているように思えない。
「おい、そこのお前ら!! お前らが俺達の獲物を横取りしたのか!!??」
横取りとは・・・・・・随分な言い方だな。
俺からすればモンスターを取り逃がすお前たちの技量に文句を言いたいところだ。
それに俺としてはこのコボルトを獲物として倒したのではなく、実験台として倒しただけなんだが。
「ちょっ、マーク!! いきなり年下の子供に怒鳴る事無いでしょ!!!」
「そ、そうだよマーク。お、大人げないよ」
「うぐっ、・・・・・・た、確かにそうかもな」
そうかもなじゃなくてそうなんだよ。
人まで俺らがお前らより歳下だって分るだろ。いや、シュラはワンチャン同年代に見えたりするのか?
「君たちがこのコボルトを倒した。それでいいのか?」
「そうですね。正確には俺だけですけど」
「はぁああ!!!??? お前みたいなチンチクリンが一人でコボルトを倒しただと!!?? んな訳あるか!!!」
ち、チンチクリン・・・・・・確かに特別背が高いって訳でもないからお前らからしたらチビに見えるかもしれないけど初対面で流石にそれは失礼じゃだろ。
まぁ・・・・・・コボルトを一人で倒したって事に関しては疑問を持っても可笑しくは無い。
でもそういう性格だとしても、もう少し言葉を選ぼうぜ。
「バカ!!! 初対面の人になんて事言ってんのよ」
「レーナの言う通りだ。もう少し考えてから発言しろ、阿呆」
「いだっ!!!!! ふ、二人共殴る事はねぇーーだろ!!!」
このマークって奴は少し周りが見えない阿呆みたいだけど、周りは良識にあるハンターみたいだな。
「ごめんなさい、ごめんなさい!! マークは基本的に遠慮が無い人で少し頭が足りなんです!!」
お、おおう。大人しそうな見た目してサラッと仲間をディスるなこの子。
とりあえず四人の内三人が良識人で良かった。
マークって奴の態度せいか、後ろ二人と一匹からの敵意がヤバかったからな。
「それで、このコボルトはあなた達が先に戦っていた。それでい良いですか?」
「そうだ!!! 俺達があと一歩のとこまで追い詰めていたのにお前が!!!」
「もうあんたは黙ってなさい!!!!」
「うごっ!!!???」
うっわ・・・・・・大人しめの女の子から杖を奪って思いっきり後頭部をぶっ叩いた・・・・・・下手したら死ぬぞ、マジで。
「えっと・・・・・・もしかして君は貴族の子供だったりするのかな?」
「なんでそう思うんですか」
確かに何個かそれっぽいところはあるかもしれないけど、そう簡単にバレるか?
「後ろのお二人がメイドさんと執事の格好をしているのでもしかしてと・・・・・・違いましたか?」
・・・・・・そりゃバレるか。俺が全くそれっぽい恰好をしていなくてもメリルはメイドの正装姿だしシュラは動きやすいように着崩してちょっとホストっぽいけど執事の格好だからな。
「一応ここの領地を治めている貴族の四男です。たかが四男なんで別に身構える必要は無いですよ」
貴族って権力を使って暴れたい訳じゃないし。
つか、俺が貴族の子息だと分った瞬間にマークって奴までビクッと震えたのは少し笑えた。
やっぱり普段は皆を引っ張るぜ系の態度をとっていても相手が貴族だと分るとそうなるもんか。
「あと、このコボルトの死体は別に要らないんでそちらに譲りますよ」
「良いの? コボルトの止めを刺したのは君だからハンターのルールに従えば君に権利があるわけなんだけど。まっ、こちらとしては有難いそれでも構わないのだけど」
「良いですよ、俺はハンターでは無いんで。森を散策をしてたら偶々このコボルトがこちらに向かって来ただけなんで」
正直コボルトの魔核も牙や爪も大量にあるからな。
「気遣い感謝します。良ければ名前を教えて貰っても良いですか」
「ラガス・リゼードです」
「ラガス様、ですか。自分はウォルフと言います。機会があれば今回の恩を返させていただきます」
ウォルフ・・・・・・カッコイイ名前だな。にしても随分と敬語? が上手いな。言葉遣いを教えるところなんてここの領地にあったか?
「ふぁ、ファナと申します。えっと・・・・・・もし今後で会う事があったら是非お礼をさせてください!!」
見た目と同じようにふわっとした感じの名前だ。にしても・・・・・・年齢は知らんが発育良くないか?
「レーナです。本日この馬鹿が阿呆な発言をして済みませんでした。この後私がしっかりと言い聞かせます!!」
・・・・・・うん。怒るのは良いけど、ほどほどにしてあげてください。
「・・・・・・・・・・・・」
「ちょっ!! あんた流れを読んで自己紹介しなさいよ!!!」
「そ、そうだよマーク。じゃないとまた後でレーナちゃんに私の杖で殴られちゃうよ?」
マークはまだ俺がコボルトに止めを刺したのを信用していない目だな。
あと、杖で殴るのは止めないけど後頭部は止めとけよ。
「・・・・・・おい、俺と一対一で勝負しろ!! してください!!!」
いや、敬語で良い直しても意味不明な発言なんだが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます