二つの匂い
鉄の匂いが動くってのは普通に考えて可笑しい。
しかも漂って来る香が鉄だけじゃなく、森の中に良くいるモンスターの匂いも混ざっている。
つまり・・・・・・そういう事なんだろう。
「やっぱ、アイアンアントだったか」
「結構数が多いっすね・・・・・・二十近いか?」
「どのようにして倒しますかラガス坊ちゃま」
・・・・・・こいつらの皮というか殻? は名前にアイアンって言葉がある通り鉄。しかも普通の鉄より硬度が高い。
だから普通に欲しい。けどこれだけの数だとアイテムポーチの中に入らないだろうし・・・・・・数を限定するか。
「俺達全員で倒す。一人一体は殆ど傷なしで倒してくれ。後は原型が無くても構わない」
「分りました」
「分りやすくて良い倒し方っすね」
『一体だけちゃんと綺麗に倒せば良いんだよね!! よーーーーし!!!!』
先に仕掛けて来たのはアイアンアントの群れ。
元が有りだから地面だけでなく、壁や天井に張り付いていて面倒だがそこら辺は俺とメリルで処理すれば良いか。
「まずは一体、貫け」
構えた右手から魔弾を放つ。狙うはアイアンアントの眼。
体は鉄の様に堅いだろうけど、目や関節はそんな事無いだろう。
「便乗させていただきます」
腰に巻いたベルトケースから一本の短剣を取り出し、俺と同じように目に向かって投げつけた。
放たれた魔弾と短剣に対してラガス達に向かって走り出していたアイアンアントは避ける事も停止する事も出来ずに目を貫かれ、脳に穴を空けられ貫かれた二体はそのまま失速して顔面からヘッドスライディングして止まった。
「動きが単調だな、っと」
ラガスの魔弾による援護により周囲を気にしなくて済むシュラはそれに甘えないようにしながらも、アイアンアントの突進を軽ステップで躱し、大剣で頭と胴体の境目を一刀両断。
『上にいられると、ちょっとやりずらいね』
なんて言いながらもルーフェイスは一歩で天井まで跳び、張り付いていた一体のアイアンアントの腹下に無理矢理爪を入れ、無理矢理地面に引きずりおろした。
爪が伸びていたけどあれはアビリティを使ったか・・・・・・それとも狼竜が持つ元々の特性みたいなもんか?
天井から引きずりおろされたアイアンアントとラガス達に襲い掛かろうとするアイアンアントがモロにぶつかり、二体のアイアンアントの動きが鈍くなる。
その隙にルーフェイスは頭部に爪を突き刺して終わらせた。
解ってはいたけど、ルーフェイスの爪マジで鋭いな。
もう・・・・・・爪が名刀、名剣レベルだ。
「あとは好きに暴れてくれ」
全員一体キッチリ綺麗に倒した。
それから各々自由に倒しまくる。
俺は天井を歩いている奴らを魔弾でヘッドショット。近づいて来た奴らは殴り飛ばすか蹴り飛ばす。
シュラも似たような感じだよな。大剣で鉄とか関係ないとばかりぶった斬る。大剣では斬れない範囲に入り込まれたら俺と同じ蹴とばし殴り飛ばす。
けど・・・・・・やっぱり力の差がある。
俺が蹴って殴っても鉄の殻を凹まし、そのまま衝撃が脳にまで達してお陀仏。
けどシュラの場合は殴れば脳のところまで鉄を脳ごと凹ます。時折鉄を貫いてるな。
蹴り跳ばせば首と胴体がサヨナラし、頭が文字通り蹴り跳ばされる。
お互いに念のため身体強化のアビリティは使ってるけど、体格かそれとも種族の違いによるのか・・・・・・主に後者の方が大きいか。それらが理由だろうけど、やっぱりシュラの方が断然接近戦の戦い方が向いてるよな。
メリルは淡々とアイアンアントの眼に向かって短剣を投げ続けている。
虫の眼って確か複眼? だからしっかりと短剣の姿は捉えられてるんだろうけど、投擲の速度がアイアンアントの反射神経を超えているからか、周囲の仲間が同じ殺され方をしてるのに全く躱せていない。
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