勝って当然の相手

・・・・・・金髪優男男の表情が必死なのは変わらないが、どこか余裕があるな。


それがセルシアが細剣による刺突に対して余裕を持って躱している事に関係・・・・・・あぁ、確かにあるな。

ようやく解った。おそらく細剣術のアビリティを習得していく中で行使出来る技を使ってるんだろう。


この距離では良く見えないが、近距離なら見える刺突が細剣の半径約十五~から二十センチ程の距離から同時に放たれている。そんな見解で合ってそうだな。


にしても、攻撃掠りはするが直撃しないな。

流石に攻撃を紙一重で躱す事が無くなった分避ける動作が大きくなったから多少は疲れているみたいだけど、それは金髪優男も同じか。


見た感じ金髪優男が攻勢に出ていて有利に進んでいるように見えなくもないが、どれも直撃はしていないしアビリティの技を使えば使う程魔力が削られていく。


技を繰り出す為の消費魔力が少なく、本人の魔力総量が多かったとしても限界が来る事は確かだ。

そうなれば身体強化のアビリティも使えなくなって一気に速さと力に差が出る。


そんな事には気が付きそうな気がするんだが・・・・・・あの表情を見る限りかなり熱くなってそうだな。

あれだけの速度で刺して避けての攻防をしてちゃドヤ顔で決める光魔法も使えないだろう。


ん? セルシアの表情が変わったか?


・・・・・・・・・・・・はっ!!!!????

いや、ま・・・・・・マジでか!!??


刺突を放った腕が伸びきった瞬間を狙って剣の腹で細剣を上に押し上げた。

そんで剣の剣先を細剣の柄の部分に引っ掛けて弾き飛ばしやがった。


出来る人は他にもいるだろうけど、七歳の子供が同年代の子供が相手とはいえ出来る技術なのか?

勿論努力と経験が積み重なった結果ではあるんだろうが・・・・・・才能が合わせった結果でもあるよな。


飛ばされた細剣はセルシアの後方へ飛んでいき、地面に突き刺さる。


金髪優男は直ぐに後ろへ跳んで距離を取ろうとしたがそれをセルシアが許す訳も無く、長剣の剣先を喉元に突きつけた。

敗北を認めた金髪優男は降参の意思表示をしたことで決勝戦は終了。

観客席から空気が揺れているのかと錯覚するほどの拍手と歓声が飛び交う。

というかマジで鼓膜が破れそうだ。


「・・・・・・あの子、流石に規格外過ぎない?」


「俺も今そう思ってました。ありゃ天才の中でも群を抜いて上の分類かと」


「そうみたいね。ラガス、あの子にあなただった勝てるかしら」


・・・・・・正直予想を超えた強さだったな。

というか強さってより技術か。


「・・・・・・正直基本的には真正面から戦おうとは思いません。核の差と身体強化のアビリティの錬度を考えれば大丈夫だとは思います。でも、そういう事を考えていたら十分に足元を掬われる可能性があると思うので」


本当に末恐ろしい限りだ。

てか、金髪優男君に圧勝したってのに全くもって嬉しそうじゃないんだが。


セルシアの中で金髪優男は勝って当然の相手って位置づけなのか?


金髪優男は顔が見えなくなるまでずっとポーカーフェイスだったけど、内心がグツグツと煮えたぎってるんだろうなぁ・・・・・・こっちはやる気でメラメラと燃えているけど。


「クレア姉さん、ちょっとやる気に満ち溢れ過ぎでは?」


「なによ、ラガスはあの戦いを見て燃えてこないの? 私は俄然、燃えて来た!」


そういうセリフは普通男子が言うせりふだと思うんだが・・・・・・あぁ、脳裏に熱い性格の桜髪の青年が浮かんで来た。


母さんはクレア姉さんのやる気に満ちた表情を見て嬉しそうな表情をしてるけど、父さんとミーシャさんは苦笑いになってるよ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る