・・・・・・なんでこんな大物が

トーナメント戦の前日、俺達はミレーアスの街を治める貴族の屋敷で行われるパーティーに出席している。


とりあえず美味い飯は食えると思って俺はパーティーに出席する事を決めた。

そしてあわよくばパーティー会場に前回、王都の城で開かれたパーティーで知り合ったロックスがいるかもと思ったが、残念ながら会場にはいなかった。


父さんや母さんにクレア姉さん、アリクの奴も知り合いと話しているが俺には生憎とロックス以外に貴族の知り合いはいないので、直ぐに会場から料理を持ってバルコニーで一人寂しく食べていた。


でも只飯を食べていた訳じゃない。しっかりと明日大会に出場するであろう参加者を観察していた。


勿論俺は解析や鑑定系のアビリティを持っていないから正確な事は解らない。

それでも大体の事は解る。


やっぱりクレア姉さんやアリクより実力が上だと感じる奴らはちらほらいた。

んで、公爵家の令嬢と侯爵家の子息のお二人もいた。子息のイケメン男子はまだ少年とは思えない程営業スマイル? が上手い。

それに対して、ロウレット家のお嬢様は相変わらず無表情だな。


ん? なんかこっちに向かって人が来てるような・・・・・・バルコニーには今のところ俺しかいないが、別に俺目当てって訳では無いよな? 単純に風に当たりに来ただけだよな?


・・・・・・いや、やっぱり俺に用がありそうだな。

俺と目が合っても一向に逸らさずまっずぐ俺に向かって来る。


「やぁ、君は他の子達と話したりしないのかい?」


いきなりフランクな態度だな。どう返したらいいか分らないだろイケメン紳士。

けど・・・・・・この人が父さん以上に強いってのは何となく解る。


「自分は貴族らしくないので他の子供達とは話が多分合わないと思います。だからバルコニーで美味い飯を食べています」


「・・・・・・そうだね。君は他の子供達と比べて何か違うようだ。ところで、君は明日のトーナメントには出場するのかな?」


「いえ、姉とあ・・・・・・兄は明日のトーナメントに出場しますが、自分は出ません」


あっぶな。アリクだけで名指して言うところだった。

というか、この人なんでそんな事を訊いてくるんだ? もしかしてトーナメントの運営? に関わってたりするのか?


「そうなのかい? それは勿体無い。君ならある程度上までは勝ち上れるはずなのに」


何を思ってそう判断したんだこの人? この人の前で戦った記憶は全くないんだが。


「自分はあなたの前で戦った事がありましたか?」


「そうだねぇ・・・・・・あれは戦ったというよりは、降りかかってくる前に追い払ったというべきかな」


降りかかる前に追い払った・・・・・・あぁ、なるほどな。あの時のパーティーにいたのか。

つか・・・・・・ちょと待て。俺はあの時魔弾の能力を使って魔弾を見えない様にしていたんだぞ。

まさかそれをほんの少し瞬間で見破ったのか!?


「あの時にいたんですね」


「少し見た目は頼りないかもしれないが、これでも国の副騎士団長だからね」


・・・・・・・・・・・・マジでか。そりゃ父さんより強いと感じる訳だ。

国の副騎士団長ともなればあの数瞬で俺の攻撃の種が解っても可笑しくは無いか?


「それで、いきなりの提案なんだけど学校を卒業したら騎士団に来ないか? 推薦状は僕が出すからさ」


「・・・・・・遠慮します」


「はは、あっさりと断るね。ちょっと傲慢かもしれないけど、騎士団に誘われるって事は結構名誉な事だと思うんだけどね」


それは間違っていないだろうな。でも俺が騎士団に入ったところでどう考えても輪が乱れるだけだ。


「自分の戦い方は騎士という言葉に合いません。それに俺は学校を卒業したらハンターになるつもりです」


「そうか、確か君の両親は元ハンターだったね。それなら未来のハンターを育てる学校に入学するんだね」


「いいえ、入学するのは王都の貴族専門の学校です。そちらの方が多くの事を学べると思うので」


学べるというか、色々な事を得られそうだからな。


「ふ、ふふふ。君は本当に変わっているね。ロウレット家の令嬢、セルシア嬢も変わっているが君はあの子を上回っているよ」


「褒め言葉として受け取っておきます」


若干馬鹿にされた気はしなくもない。


「そう受け取ってくれると嬉しい。さて、君にもう一つ提案が・・・・・・と言うよりは頼み事だね。良ければ私の息子と摸擬戦をして欲しいんだ」


・・・・・・何故そうなる。副騎士団長の息子ならそういった相手は幾らでもいるだろ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る