それなら話は変わる

「何故、俺にそんな事を頼むんですか。副騎士団長様の息子なら腐るほど戦う相手はいると思いますが」


「腐るほどいるかどうかは置いといて、ある程度いるのは間違いないね。ただ、僕としては君の様なタイプと戦う経験をして欲しんだよ」


「・・・・・・真正面から戦わずに嵌め手で戦う相手というわけですか?」


そういう考えなら納得出来る。俺の持っている魔弾のアビリティ・・・・・・は、少し違うか。

音魔法に関しては半分ぐらいは嵌め技と言っても可笑しくは無い。


「確かにそういった考えはある。でも、君は真正面から戦えない訳では無いよね」


こいつ・・・・・・いったいどこまで解ってるんだ?

嘘をついても意味が無いのは解ってるが、それでもはぐらかさせて貰おうか。


「自分はビビりなので嵌め手が主な戦い方ですよ」


「そうなのかい? 僕にはあまりそうは見えないけどね」


そう思うだろうな。

けど、別にビビりなのも嵌め手が主な戦い方ってのも間違ってはいない。


だから嘘を判別するマジックアイテムを使われても白になる自信がある。


「んーー・・・・・・君はあれだよね。あまり貴族の爵位は気にしない性格。そして自身にとって利益が無いと判断した戦いにはあまり参加したくない。そんな感じだよね」


「はい。副騎士団長様のご子息と戦って俺が得られる物はないと思うので」


「・・・・・・それは自分の実力に対する自身からくるものかい?」


あっ、そういう感じに聞こえてしまったか。

別にそういう意味で言ったんじゃないんだけどな。


「そうだねぇ・・・・・・息子と戦ってくれたら報酬として、四級のマジックポーチを君に渡すのなら誘いを受けてくれるかな?」


マジックポーチ! それに四級・・・・・・正直欲しい。

ただこの誘いに乗って良いのか判断しかねる。


でも・・・・・・やっぱり欲しいな。


「良いですよ。ご子息と戦って勝てばいいんですね」


「その通りなんだけど・・・・・・隠さなくなったね」


「隠しても無駄だと思ったので。勝ち方はともかく試合にはご期待通りに勝ちますよ」


「ふふ、頼もしい限りだ。うん、時間もだいたいぴったりかな? 私に付いて来てくれ」


訓練場的な場所に行くんだろうな。

そういえば父さんや母さんには何も伝えていないけど・・・・・・まぁ、何となるか。

もしかしたら副騎士団長様が事前に父さんへ連絡しているのかもしれないし。


さて、訓練場らしき場所に辿り着いたわけだが、あそこに立っているのがこれから俺が戦う相手か。


「父様、そちらの方がこれから僕が戦う相手ですか?」


「ああ、こちらのラガス君がお前と戦う相手だ」


・・・・・・体格からして俺より一つか二つ上か? 

容姿は父親譲りで美形としか言いようがないな。さぞかしモテそうな容姿だ。


「僕の息子、リオウスは八歳だから君に一つ上になるね。持っている武器から分かる通り主に長剣を扱っている」


そりゃあ、見たら分りますよ。

親をリスペクトしてますよって雰囲気が漂って来る。


「父様、正直僕はこちらの・・・・・・ラガス君と戦う意味を感じません。戦うだけ無駄かと」


「ん? ・・・・・・あぁ、なるほど。君は本当に面白いね」


嫌味って訳じゃないが、俺がしている事を瞬時で見抜くあんたの方が面白いと思うんだが。

てか、結構嫉妬深いんだなご子息は。


「とりえあずラガス君と戦ってみなさい。リオウスが学べる事は必ずある」


「・・・・・・分りました」


「よし。それでリオウスの体は十分に暖まっているが、ラガス君も少し体を解すかい?」


奇襲で勝てばいいんだろ・・・・・・ご子息の力量も考えるとぶっちゃけ必要ないな。


「大丈夫です。直ぐに始めましょう」


「そうかい。ならこの摸擬剣を使ってくれ」


俺とご子息は開始線に立って構える。

というか、副騎士団長様の言葉と俺の態度のせいか・・・・・・ご子息の機嫌が悪い。

イケメンな顔なのに眉間に皺が寄っていますよ。


「それでは、始め!!」

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