こっちに来んな

同じ男爵の息子同士だからか、それともお互いに権力にはそこまで興味がないからか、ロックスとは話していて素直に楽しいと感じた。


堅苦しい言葉を使わなくて済む。将来就きたい職業は同じ。

ザックスやレイア、ミリアと話している感覚に近い。


「やっぱり両親が元ハンターだと学ぶ事も多いみたいだね」


「ああ、そうだな。父さんが長剣や短剣を扱っているから空いている時間に稽古をつけて貰う事はある。母さんから魔法使いがどういった戦いかをするのかを聞く事が出来るから、対策を練るには十分な事を教えて貰っている」


話している内に俺はロックスに自身が基本属性魔法の適性が無い事を伝えた。

正直その事を話してしまったらロックスは俺の事を避ける様になってしまうのではと思ったが、まだ会って間もない友人と思える人に打ち明けた。


するとロックスは目を見開き、驚いた表情になったが直ぐにニヤッと笑って基本属性魔法の適性が無くとも、戦える手段があるのだろうと尋ねて来た。


その問いに馬鹿正直に答える事はしなかったが、軽く頷いてしっかりとした手札があると伝えた。


「なんとなくだけど、ラガスは面倒事に巻き込まれそうな気がするね」


「不吉な事言うなよ。・・・・・・既に王都に来てから面倒な事はあったんだ。学校に入ってから起こる面倒事なんて本気で勘弁して欲しいもんだ」


学校で起こる面倒事、つまり貴族絡みって事だろ。

そういった事に巻き込まれたら絶対に目立つ。もし問題を解決したいと思っても、なるべく足が付かない様にしなければいけないな。


ん? あいつら・・・・・・俺達を見てこっちに来てるのか?


「・・・・・・・・・・・・ロックス、そういうのはフラグって言うんだぞ」


「あぁ~~・・・・・・初めて聞いた言葉だけど、なんとなく意味は理解出来たよ」


三人ほどの貴族の子供がニヤニヤしながら近づいて来た。

確か俺達からそう遠くない位置で話していた奴らだな。俺達の会話を聞いて格下だと分かったからバカにしに来たってところか。


「取りあえず俺が何とかする」


三つの指先から魔弾を造り出し、三人の股下に向かって放つ。

魔弾は股を通り過ぎて少し離れた床にぶつかり、事前に仕込んでいたバックスピンにより後ろへ戻って行く。


「「「ふぐっっっ!!!???」」」


魔弾による千年殺しを喰らった三人は小さく悲鳴を上げて尻を抑える。

まぁ・・・・・・抑えたところでそこにはもう魔弾は無いんだけどな。



「「「ほがっ!!!???」」」


三人の尻にめり込んだ魔弾は地面に落ちると跳弾の効果により跳ねてほんの少しだけ弧を描き、睾丸に直撃した。


千年殺しからの金的潰しを喰らったんだ。男にとっては想像を絶する痛みだろうな。

片方の手で尻を、もう片方の手で股間を抑えて地面に蹲る・・・・・・中々に惨めな状態だ。


「・・・・・・ふふ、君の攻撃は全く見えなかったけど、何をしたのか大体は理解出来たよ。結構容赦ないねラガス」


「男を倒すにはそこをぶっ叩くのが一番手っ取り早いだろ。それと、俺は自分に喧嘩を売ってくる奴相手には基本容赦しないんだよ。それより話す場所を変えようぜ」


俺達と三人の距離は六メートル程離れていたから今は注目が俺達でなく、急にうめき声を上げて地面に倒れ込み尻と股間を抑えて蹲っているあいつらに視線が集まっている。


というか周りの人達は何が起こったのかは気づいていない様だけど、取りあえず今の三人の状態が可笑しいのか、小さく笑っている。

いや、子供たちの中には大声で笑っている奴らもいるな。


一先ず俺とロックスに疑いが掛かる前に移動しよう。

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