目が合う

「やっぱり美味いな。使われている食材が高級ってものあるだろうけど、シェフの腕が良いんだろうな」


皿に乗せた料理を次々に口へ入れていく。

勿論口がリスの様に膨らませたり下品な真似はしない。


ただ、人と喋らずにまだパーティーが始まってもいないのにご飯ばかり食べるのは珍しい、というか・・・・・・非常識なのか周りの視線が厳しい。


「・・・・・・んぐっ。まぁ、俺の様な飯ばかり食べる人は基本的にいないだろうな。父さんとロウド兄さん、クレア姉さんも普通に人の輪に入って話してるし」


取りあえずご飯を食べ続けているとこの国の王様が出てきて話し始めた。

その時だけは俺もご飯を食べる手を止める。


止めはしたけど話は殆ど聞き流していた。

正直俺は聞いたところで大した意味は無い内容だ。


それより俺は自分と同年代、もしくは少し年齢が上か下の子供を観察していた。

人を見ただけで内面まで分かるほど俺に経験は無い。

でも表情を見ればそいつがどんな性格なのか、大体だが予測がつく。


・・・・・・まぁ、何人かいるようだ。位は子爵、伯爵、侯爵辺りか。

出来れば学校に入学しても関わりたくないもんだ。


そして王様の前世の校長より長くは無かった話が終わり、再び騒がしくなった。


ただ俺のする事は変わらない。美味い飯を食うだけ。

ロウド兄さんが言っていた将来の相手・・・・・・嫁さんを探すって言ってもな。

確かに前世の容姿と比べればまともな面してるかもしれないけど、周りの奴らと比べたらな・・・・・・俺なんてそこら辺の石ころと変わらないだろ。


「ハンターになる俺にとってはどうでもいい、事・・・・・・・・・・・・」


自分で自虐していると、一人の少女と目が合った。

歳は俺と同じか? 目は青い。でも髪は綺麗な金色だ。汚れが、影が一つも無い。


少女と目が合ってからまだ数秒程しか経っていない筈だが、十秒ぐらい見つめ合っている気がする。

しかし少女が周りにいる男子の一人に声をかけられて視線は外れた。


「・・・・・・っと、思わず食事の手を止めてしまった。なんなんだあのスーパー美少女は。周りにいる女の子もレベル高いけど、頭二つか三つは抜けているぞ」


俺は決してロリコンでは無い。けど、まだ十歳にもなっていな少女に対して確かに綺麗だという感想を抱いた。

まぁ・・・・・・将来必ず美女になるだろう。スタイルはどうなるか知らんが。


「ねぇ、君は貴族の子達の輪に加わらないの? あ、自己紹介がまだだったね。僕はロックス・セーゲル。父親は男爵」


「・・・・・・俺はラガス・リゼード。同じく父親は男爵だ。他の奴らと話すより美味い飯を食べる方が俺にとって重要だ」


別に嘘をつく必要が無いので思っている事を話しかけて来た少年に話す。


「・・・・・・ふ、ふふふ。そんな事言う人初めて見たよ」


「だろうな。そんな人、俺以外にそうそういない筈だ。で、なんで俺に話しかけて来た? あそこら辺の輪に入って縁を作らないのか?」


「男爵家の僕が作れる縁なんてたかが知れているよ。それよりも君と話した方が有意義かなと思って」


・・・・・・はっ、面白いなこいつ。男爵の位を持つ親の子達は集団で固まるか、爵位の高い家に媚売っているかのどっちかなのに。俺と話す方が有意義、ね・・・・・・・・・・・・取りあえず普通じゃないな。


「そうか。まぁ、喋る相手がいるのも悪くは無い。ただ、お前は将来の嫁さん探さなくていいのか? 俺の兄さんはこういう場所ではそれがメインだって言っていたけど」


「はは、確かにそうかもしれないけど、僕の将来を考えるとここで将来のお嫁さんを見つけるより、もっと大人になってから見つける方が都合が良いんだ。それに僕は四男だからね。焦る必要は全くないんだよ」


「なるほど・・・・・・・・・・・・学校を卒業したら、将来はハンターか?」


なんとなく予測して答えたんだが、どうやらセーゲルの表情を見る限り正解みたいだな。


「驚いた。そんな即答で答えられたのは初めてだよ。もしかして君も学校を卒業したらハンターになるのかな?」


「・・・・・・まぁ、一応な。親が元ハンターだからってのもあるが、相手の爵位を考えてへらへらと媚を売る世界よりはましだろうからな」


「ふ、ふふふふふ。君、本当に面白いね」


面白いかどうかは知らないけど、普通ではないからな。

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