圧倒的・・・・・・なバカ

「これは・・・・・・はは、流石に凄いとしか言いようがないな」


王都の街を覆う塀はとんでもなく高い。十メートルは確実にあるな。


「お前のそういう驚いた表情は久しぶりに見るな。まぁ、初見だと誰でもそういう表情になるだろう」


「この塀を初見で見て驚かない方がおかしいと僕は思いますよ」


「私も初めて王都に来た時はラガスと同じような表情はしていたわ。でも、中に入ってからの方が更に驚く筈よ」


・・・・・・チラッとアリクの表情を見たけど、この十日間殆どムスッとしていたあいつの表情が緩んでいるって事は、それ程中の様子が凄いって事か。


しっかし、この塀より高い建物はいくつも見た事があるけど、それが横に長いと超圧巻だな。


「さて、感動するのも良いが中に入るぞ」


うん? 長い列からずれるけど・・・・・・あ、もう一つ門がある。

並んでいる人を見る感じ、一般人やハンターに商人が並んでいて、貴族や王族がもう一つの門を使うって感じか。


確かにその方が効率が良い気もするけど・・・・・・それはそれで問題が起きたりしないのか?

って思った傍からなんか四人ぐらいの男達が近づいて来たし。


「おいおいおっさん!!! そっちは貴族用の門だぞ。貴族でもねぇおっさんが行って良い場所じゃねぇんだよ。さっさと最後尾に並べよ!!」


見たところハンターか。雰囲気からしてハンターになってから少し経って調子づいて来たってところなのか?

ある程度実力がある人なら父さんがどれだけ強いか勘付く筈だし・・・・・・第二の反抗期?


「そう言われてもな・・・・・・私はこれでも一応貴族だぞ。ほれ」


父さんは懐から取り出したメダルをハンター達に見せた。

自身が貴族だと証明するメダルを見たハンター達は一気に顔を青くして焦りだす。


だが、大声で父さんを貴族でないと否定した手前簡単に撤回する事は出来なかったのか、引く気はない様だ。

まぁ・・・・・・馬車が特に豪華な訳でも無く、父さんが着ている服も派手って訳じゃないからな。

貴族に見えなくても仕方ない部分はあると思う。まっ、メダルを見て父さんが本当の貴族だと解ったらとっとと引いて欲しかったけど。


「っ、そ・・・・・・それが本物だって証拠はねぇだろうが!!! そんなメダル、幾らでも偽造のしようはあるんだからな!!!」


「いや、基本的にそんな事が出来ない様に作られているんだがな・・・・・・しょうがない」


このままハンター達と話していてもしょうがないと思ったのか、父さんは門の近くにいる兵士を手招きしてこちらに呼ぶ。


「わざわざ来てもらって済まないな。私の名はリット・リゼードだ。爵位は男爵家。このメダルが本物かどうか確認して貰ってもいいかな」


「かしこまりました。少々お待ちください!!」


父さんが門兵にメダルを渡した事で、ハンター達はニヤニヤし出した。

こいつら・・・・・・何がそんなおかしいんだ? もしかしてメダルが偽物だとバレて俺達が捕まるとでも思ってるのか?


そんな事をしてどうなるかも分からない程俺達はこいつらに田舎者に見られているのか。

だったら阿呆としか言いようがないな。


確認を終えた兵士が小走りでこちらに戻って来た。


「確認を終えました。こちらのメダルは確かに本物です。それではリゼード男爵、こちらへどうぞ」


兵士が父さんの持つメダルを本物だと認め、父さんを貴族用の門へ案内するのを見てハンター達は唖然とした表情を浮かべていた。


俺はこの時周りに証人もいるので、兵士にここで何があったか話せばこいつらは捕まるんじゃないかと思ったが、速く王都の街並みを見たいので止めた。

正直時間の無駄だろうからな。


「ちょ、ちょと待て・・・・・・」


父さんが貴族だという事が証明されたのにも関わらず、ハンター達がまだ絡んで来ようとしたので俺は指先から四つの魔弾を放った。


魔弾は四人のハンターの顎を良い感じに掠り、四人は脳が揺れたことで立っていられなくなり地面に倒れ込んだ。


「・・・・・・ラガス、何かやったのか?」


「はい。面倒だと感じたので。大丈夫ですよ、外傷はない筈なんで」


せいぜい顎に掠り傷がついているぐらいだ。

脳はグラングラン揺れてるかもしれないけどな。

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