仕返し
「どこに潜むか…… 各々が決定せい」
元マッシャルーム王国の宿屋に3人の男が集まる。
彼等こそが騎士団長シルビアーナと副団長のロッキーを殺した暗殺者達である。
それぞれが商人、町人、農民の服を着てニヤリと笑う。
後は隠れるだけだと歩きながら干してある洗濯物を盗みながら…… これからは人々に紛れて溶けるのだから黒衣は却(かえ)って目印になってしまうのでこうなった。
彼等はグラディウス王国の騎士団の頭を殺した事、雇い主が滅びた事で己の待遇を自由にする事を話し合っているのだ。
元々が、野良犬のように金を貰い世界をブラブラと人を殺し生きてきた人間の寄せ合わせ、マッシャルームが滅びるなど本来ならどうでもいい話なのだが…… 今回はそうはいかなかった
戦争に向けて前金を受け取っていた事
略奪で金を稼ぐ前に戦争が終わった事
騎士団長シルビアーナの魔法により仲間の殆どが死んでしまった事
この3つで、団長と副団長を屠(ほふ)りその亡骸で楽しんだ……
何を言いたいか……
八つ当たりと、暗殺者の名誉と…… そんな積み重なるつまらない事で2人は殺されたのだ。
「私はこの格好のように数年は旅商人として動く」
「では俺は———————————
ドンドン!
町人の格好をした暗殺者が話そうとした時に、部屋の扉がノックされる。
普通は疑われないよう無難に応答するのだが全員が別々の職業の格好をしているし、服を盗む事はしたが靴はそのままで団長の遺体で楽しむ時に付着した血痕がまだ残っている。
白い布切れを出され踏まされでもするとそれが露見する恐れがある。
居留守を決め込もうと3人は無言で頷き気配を消し、まるで鬼ごっこを楽しむように声を殺し笑う……
「おい」
いきなりの声に3人は驚く。
振り向いた3階の窓の外には赤髪の少年が部屋の中を睨みつけていた。
□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
—————マッシャルーム王国の東の端のスラム
親の無い子供の遊び場になっている馬車のタイヤ部が壊れ捨てられた御者台の上に麻のシートがかけられていた。
赤くシミがあるがスラムでは被服や敷物などいくらでも使い道があるので、スラムで暮らす老人がこれ幸いと引っ張りそれを腕で巻き取ると……
「う…… うわぁ—————— ‼︎‼︎ 」
老人の叫び声の先にはグラディウス王国の騎士団長シルビアーナと副団長ロッキーの死体があった。
背後から刺し殺されたものだから美しく保たれた遺体はロッキーは体を鋭利なモノで裂かれ陰茎を切り落とされ座り、ロッキーにもたれかかる様に座るシルビアーナは裸に剥かれ死姦されたのだろう体液がベットリと美しい顔や乳房に垂れていた。
もちろんシルビアーナは陰部も犯され…… とても見れるような状態ではなかった。
後の話だが、そのシルビアーナ陰部を監察した医師はそこにロッキーの陰茎が深く差し込まれていたのを確認している。
それからはスラムの住民は阿鼻叫喚で騒ぎ、グラディウス王国の騎士隊が駆けつけるまで1時間を必要としなかった。
現場検証に走り回る兵士や騎士隊
震えて泣くシャティ
誰彼と構わずに殴り殺そしてしまいそうなゲルハル
それをボーっとみる
「おいダンデス…… 」
「ああ、分かってる」
ゲルハルが
目印を作っていても、難しい事だ。
それをヒョイヒョイと指差し言い当てる。
そんな奇跡を見ているのでゲルハルは
◁商業区→ キノコの止まり木という名前の[宿屋]3階にシルビアーナを暗殺した3人を確認。
〈キーサーチ〉は暗殺者の場所を割り出すのに少し時間と魔力を必要としたが、復讐する相手を
「ダンデスさ…… ん…… 」
シャティが彼に話しかけようとして後退(あとずさ)る……
ドンッ………… ‼︎
〈キーサーチ〉の先導(ナビ)により高速で暗殺者のいる場所に走り出した。
強化された2人は屋根を飛び跳ね、路地を走り目的地へと速攻に辿り着く…… 2人に言葉は無い。
昼日中の事。
部屋の中は薄暗いが3人の男を確認すると一応〈キーサーチ〉を起動する。
コイツらの誰(どれ)が団長と副団長に何をした?
▽シルビアーナを刺殺、後にシルビアーナを死姦
▽シルビアーナを刺殺、後にシルビアーナを死姦、死体損壊
▽ロッキーをナイフに塗った毒により毒殺、後にロッキーを死姦、死体損壊
ギリギリと
それに驚き暗殺者が息をひそめる……
逃げれると思ってんのかコラ?
「おい」
と睨みながら暗殺者に対し窓越しに声をかけたのだった。
□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
パリン!
俺は部屋の中に窓を突き破り飛び込む。
「な! なんだね? キミは!? 」
「おいおい、何をつまらん演技しとんだコラ? 」
この場においてまだ言葉や態度で一般市民のフリをして逃げ道を探る暗殺者に怒りが募るばかりだ。
ドバン‼︎
俺の怒りの声を聞いたのかゲルハルがドアを蹴破(けやぶ)り室内に入ると3人の顔を確認して身構える。
「団長! 団長! ロッキー! 」
俺は暗殺者3人の一人一人を指差しながら叫ぶ。
「ダンデス、確かじゃな? 」
ゲルハルは今ので、誰が誰を殺したか理解したようなので暗殺者から目を離す事なく「おうよ」と呟く。
暗殺者も馬鹿ではないようで1人は俺を、1人はゲルハルを、もう1人は逃走を選び動く…… が、甘いわクソが。
ゲルハルは怒りに任せて影の魔法を使い暗殺者の1人をブシャリという音を立てて潰すと逃げようとするもう1人の男を影で捕まえる。
俺は残る1人の暗殺者が唖然とするのをスキと見て懐に飛び込み力任せに拳骨を何度も何度も叩き込む。
簡単には死なせない足を潰し両手を潰し、ドウと仰向けに倒れた顔に拳骨を振り下ろす。
「ブッゴベッ! ゴブッ! 」
暗殺者の顔が凹み、頭蓋骨が割れ皮膚を割き脳髄が垂れた頃にゲルハルに止められる。
「もう…… な? 」
「…… ああ、ありがとう…… すまないゲルハル」
無惨な仲間の死に様を見た影にグルグルと捕縛された暗殺者の1人はガクガクと震えながら気絶をした。
「コイツも殺すか? 」
「いや、此奴(こやつ)は騎士隊に渡そう。聴取を取らんとワシらはただの無頼者になってしまうわい」
気絶したヤツは、3人の内で逃げるのを素早く選んだ。
という事は、3人の中で一番に立場がある暗殺者だったのだろう。
「…… そいつがロッキーを殺し死姦をした」
「…… そうか、なら聴取が終わり刑の執行となった場合はワシが殺させてもらおう」
ゲルハルは辛そうに呟く。
竜の血を奪いに行く時に入った酒場での会話を思い出す。
「年老いた騎士はワシの友人じや、子孫(こまご)の名前を決めたヤツもおる…… そいつらが戦争で蹂躙されて殺されると考えただけで…… 夜も眠れん」
すまないゲルハル、オマエの友人の命を守れなかったな……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます