新たなKey


俺はキーサーチの指示通りに体を動かす


▽地面にしゃがむ

▽▷右後方に転がる


ゲームのように指示される通りに体を動かすと俺が動いたと判断した左後ろの兵士が俺を斬首しようと剣を振る。


その前に俺がしゃがむので剣は空を切りもう1人の兵士の首から鎖骨までを切断する。


▷立ち上がり右に走る

△少しジャンプ

▽着地、座る


追い討ちしようとした兵士の剣が踝(くるぶし)の辺りを通るジャンプはその為か。


そのまま着地してキーサーチの支持通りに座ると目の前に鮮血が飛び散る。

目を上げると兵士の剣が舞台壇上にまだいた松本の腕を切り抜いていた。


「なっ! うぐぅ——!! 」

松本は信じられないという顔をしながら腕の痛みに耐え、兵士は領主を斬ったと理解したのか狼狽えて下がる。


△key→ [重要]松本に擦(す)りつく

! マジかよ!

俺は痛む体を奮い立たせ目の前にいる憎むべき松本に擦りついた。


松本は…… なるほど、自分の手を治す為に回復魔法を使ったようだ。

そう、日本から持って来た鞄に医療品を入れて来て回復魔法の凄いスキルを得たと自慢していたな!


俺は松本の回復魔法のお零(こぼ)れを得て両手や助骨が回復する。

息苦しさが無くなった…… 鼻の骨も元どおりかよ凄いな回復魔法!


「しまった! 早く! この罪人を殺せ! 」

松本が焦り俺から数歩離れる


◁左へ拳を出す

▽後ろに走る


左に拳を? 訳が分からないがすぐにピンと拳を左に出すと衝撃が!?

「ギッ、、!! 」


ケゴが隙をついて踏み込んできていたようで、そのアゴにカウンターを叩き込む結果になった。

「チッ! キーサーチめ! 」


急いだ指示だったのは分かるが不完全な拳の握りにしたから小指を痛めたぞ……


しかし指示は正しかったと諦めて次のキーサーチの示す▽ 後ろに走る をすると民衆の騒めきが強くなる

振り向くと…… そうか……


キーサーチも


▽…… ▽…… ▽これ以上の逃走は[ヤマダ]の今の能力では無理です。

と俺の逃走は詰んだと判断したようだ。


処刑をする舞台の周りはぐるりと民衆が取り囲み、そのさらに外周に騎兵隊が辿りついたのだ。


領主の持つ軍か…… 軍はダメだわ練度が違う。


騎兵は各々が武器をふるうのに邪魔にならない等間隔で隊列をしている。

馬はこの騒ぎでも興奮していないようで、松本が少なくない金をかけて作り出した軍隊だと見て取れる。



「チッ! 」

本当にここまでなのか!?


騎兵達は民衆を順よく後ろに下がらせて俺への距離を狭めてくる。

なら松本を人質にと松本が居た演説台の辺りを見ると既にそこりはいない、やはり流石で既に斥候により保護され1番大型の馬に乗る騎士の後ろに逃げ済んでいた。


「そ…… そいつは不思議な固有のスキルを持っている! 捕縛を考えず殺すのだ! 」

松本の甲高い声が上がると騎兵達は剣を抜き、俺の周りを囲む横隊列の等間隔の騎兵は下馬をして背中に用意していた短弓(シュートボウ)に武器を切り替えキリキリとそれを引いて俺へ降り注ぐように天に照準を合わせる。



民衆が俺と兵隊の間から掃けたら弓を降らせて近づき剣を振るい、逃げた場合には馬の高みから俺を刺し殺すという事だろう。


これは…… 詰んだな……

「〈キーサーチ〉 何とかならないか? お前に奥の手は無いのか? 」

そんなうまい話は無いだろうが……



▽……keyを使用しますか?

▽……keyを使用しますか?

▽……keyを使用しますか?

▽……keyを使用しますか?

……


ん? なんだ?

キーサーチの表示がとうとう俺が絶体絶命になった事でバグったのか…… ?


いや、こういう時は起死回生の何かがあったりするもんだ…… と、信じたい


俺は祈りを込めて叫んだ!


「何かしらんが! やってくれ〈キーサーチ〉! 」


叫んだ事で危険を感じた松本の前にいる見るからに隊長格が「ハァッ! 」と大声を出すとショートボウから弓が空に放たれる。


これは…… さすがに…… ダメか…… ?

諦めかけた時にキーサーチの文字の色が赤く変わる


▲キーサーチで運命の鍵を開きluckkeyラックキーモードに移行します。


luckとkeyの造語か?

その時、降り注ぐ矢が俺を襲う

▲オートモードで弓矢のluckをマイナス50にします


矢は次々と俺を外れて地面に刺さる。頭上に来ていた矢は、空中で他の矢と接触し軌道を変えて俺を避ける。


▲矢のluckを保存…… 保存完了…… luckkeyオートモードで継続しますか?


なんだ! なんなんだこれは!?

矢のluckだと? 意味が分からない…… ただ、相手の事象(じしょう)を操れる…… という事か?

今は検証している場合じゃないな逃げれるならそれを果たそう。


俺は剣を持って走ってくる兵士に対して、おっかなびっくりと歩いて行く。


▲返答が無いのでオートモードを継続→ 向かって来る全ての剣と兵士のluckをマイナス100にします


攻撃をしようとする兵士の剣は振るだけで折れ、その振り飛んだ剣先が他の兵士に当たり……

または、兵士が地に落ちていた矢を踏んで折れ曲がった鏃(やじり)が運悪く兵士の目を貫通したり


そういう不運が松本の兵士に降りかかる。


▲剣のluckを保存

▲兵士のluckを保存

▲剣のluckを保存

▲兵士のluckを保存


とご丁寧に倒したり折れたりした数だけ文字表示が下から上へ積み重なる


どうやら…… 生物だけじゃなく無機物の幸運も奪える能力という事か?


▲魔力量残り850→ エコモードに移行します


エコモードだと?

それに魔力量850というのは…… 気付く所がある

目の端にあるスマホスキルの右上の電池の表示だ


850M [○***]


アホみたいな数字がいつも表示されていたからバグっているのかと思っていたが……




電池表示=魔力量の表示だったワケか




ならばヤバイな……

察するに魔力を使ってluck keyモードは作動・継続をしている。

魔力量がゼロになれば…… 終わりだ。

相手の幸運値が数値化されているとして元々20あるとしたらマイナス20にするまでに40の魔力量が必要になるだろう。


あと850M《マジック》で逃げ切らなければ……


というかまるで制限付きだがラプラスの悪魔だなこれは


納得すると俺は走り出した。


兵士の剣が民衆の俺へと投げた石に当たり振り下ろす方向を変え、騎兵の剣は俺を刺そうとすると馬の蹄が割れてバランスが崩れ落ち民衆は俺の意味のわからない幸運に次第に恐れを抱いたのか道を開ける。


町の外まで走り出ると流れ速く広い川があったので俺はそこに身を投げた。


あと魔力量が45Mしかないが……

▲この川のluckを40減らします。魔力量が限界に達しました。キーサーチモードに戻ります。


なるほどな…… 川のluckが減ると俺の周りだけ流れが緩やかになった

しかし川の冷たさは変わらない。いや、それをする魔力量が足りない。



「〈キーサーチ〉 俺は意識を失って助かるのか? 」


◁右にある木にしがみつけば浅瀬に掛かるでしょう。



「はは…… こりゃすげーわ」

俺の右に流れて来た木の板に上半身を乗り上げスマホスキルの電池を見てから俺は意識を失った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る