裏切り
「おい! 」
「なんだい? 」
「オマエ…… 誰だ? 」
朝、目が覚めると若い男が座りながら俺を見ていた。
「俺だよ松本だよ」
はははと笑う若い男。
いや信じれるワケがない飲み屋で整形して若返ったお姉ちゃんを何人か見たが、やはりドコかに老化の印が残る。
目の前の男は間違いなく若者だ。
「んなワケないだろ? 松本は40過ぎのオヤジだったんだぞ! 」
俺は叫ぶが…… なんだ目の前に濁りが無いし声が高いように思う。
白内障が少し来ていて視界の端が少し見えにくかったんだが……
「山田…… 呼びにくいから山ちゃん、ちょい自分の手と体を見てみ? 」
「なんだよ? …… っっ!? 」
俺の手はツルツルでやたらとハリがあり、爪の老化による変色も無くなり立ち上がると今までずっと付いて回っていた腰の鈍痛が無い。
下を見ると伸び切ったキンタマがキュッとしていた。
「ここはな山ちゃん、異世界ってやつさ」
「異世界…… 」
「そう、この世界は魔法があってな…… その魔法が体に定着すると実際の年齢より肉体が若返るんだが…… 山ちゃんヤベーな」
「お…… おう」
俺の体はおそらく中学生ぐらいに若返っていた。
どうやら俺は魔力というのが松本より多いようだ。
「地球人は被験者俺だけだけど魔力が多いみたいなんだが山ちゃんの若返りは凄いわ」
「うむぅ…… よーわからんわ」
「それは追々に分かるって。あと荷物がなくなっただろ? 」
そう…… 俺の商売道具である鍵屋の工具やスマホが無くなったんだよな。
「それな、この異世界に入った地球人の固有スキルになるから 」
「固有なんだって? 」
「ステータスオープンって言ってみな山ちゃん」
なんだよゲームかよ……
もう50歳超えてんのにか○はめ波を叫ぶような恥ずかしさがあるな
やらんとならんのか……
「ええい! ステータスオープン! 」
「おお、思い切るね山ちゃん、小声でもいいんだがな! 」
「松っちゃんそりゃないぜ」
グッタリして松っちゃんを見ると視界の右下に半透明な画面が……
かれ?これスマホ画面じゃないかい?
「その、目の動きからして
「ああ、スマホの画面だな。意識すればタップできるみたいだが…… 気味が悪いな」
「まて、スマホってなんだ? ケータイの画面だろ? 」
「ケータイってもしかしてガラケーの画面? いやスマホだが? 」
「え? 」
「え? 」
どうやら松っちゃんはこの異世界で何年も生活していたみたいで2000年の初旬までしか日本での知識がなかったようだ。
鏡から日本に戻った時に荷物が全て手元に残りガラケーがそのま入っていたからスマホの知識ぐなかったそうだ。
つまり所持していたガジェットが能力(アビリティ)に加算された…… という事だろう。
「浦島太郎だな」
「ああ、料金は姉が払っていたみたいだから使えたしな…… というか俺の資産を使い込んでいたみたいだぞ」
生きているかもしれないからガラケーの料金を払い続けるか
裏を見れば弟の金で全て賄えて利益もガッポリ
クソだな。
「とりあえず画面にスキルの表示ないか? 」
「待ってくれよー松っちゃん…… えっと、あったスキルがアプリアイコンでインストールされてるわ」
「アイコン? 分からんが山ちゃんのスキルが表示されるだろ? 」
えっと何だ?
「あーっと…… 固有スキル:キーサーチって書いてるな」
「なんだそれ? 聞いたことないな。 補足が表示されないか? 」
「うむぅ…… えっと、ああ、なるなる…… 長押ししたら出たわ。 あーーっと、〈鍵を探して、開ける事が出来る能力(アビリティ)熟練度MAXにより全ての鍵を解除可能〉ってあるな」
え———————っ
と声が出るような表情をする松っちゃん
俺がえーーだよ。 なんだよ?
「なんだよ? 」
あ、声に出ちゃった!
「いやな…… 魔法がある世界でそのスキルは正直に言うとハズレだわ…… ガッカリだわガッカリパビリオンだわ。 魔法で鍵の解除が出来るのになぁ…… 」
「おいおいおい…… 見捨てるなよ松っちゃん」
いきなり距離が開いたような感じに焦る。
ここがドコか分からんのに捨てられたら死ぬかもしれんじゃないか!
「はぁーーーー異世界移転だし話も出来る同年代だから期待してたんだけどなぁーー まあ連れてきたんだから当面の面倒は見るけどさぁ?」
「あ、あぁ頼むわ松っちゃん」
「なれなれしくない? 」
「頼みます松本さん」
松本は白けた目を俺に一度向け外に出る
置いて行かれたらカナンので急いで外に出るとそこは森の中だった。
「山田、ちょい俺の服を掴んどいて」
「ああ、、あ、 はい」
「これから使う魔道具は使い捨てな上にかなり値段が高いから本当は女の子と使いたかったんだけどね」
「…… 」
チッと松本は舌打ちをして青く丸い玉が上部についたトランプと同じぐらいのカードを取り出して高く掲げる。
「やっぱやめた、もう財布あげたし良いよな? 」
松本は俺が掴んでいた手をバッと弾いて数歩の距離をとる。
「じゃあな! 」
「おい! なんだよ! 」
カードの玉が光り松本を包む。
次の瞬間には大空に飛び上がりシュバッという音を立てて飛び立ってしまった。
「やろう…… クズだな。姉もクソなら
俺は松本が飛んで行った方へトボトボと悪態をつきながら歩き出した。
歩きスマホしながらわかった事だけど俺が日本でしてきた事もスキルとして加わっていた。
高校生の時にした中華屋のバイトが活きたのか〈調理〉や工業高校に通っていた時に取得した溶接技能は〈火魔法〉〈電気魔法〉〈溶接〉などに変換されて備わっていた。
…… CADとか〈旋盤〉なんてこの世界にあんのか?
「しかし松本に〈工業スキル〉の方を言えば良かったなぁ…… 」
まぁ松本との仲はスグに外れただろうがよ……
ガサガサと夕暮れの森の草が鳴る
ビクッとしちまう。
異世界っつったらゲームの世界だしな魔物だっているかもしれん
「いかんよ…… いかん…… 本当にいかんよ」
まだホームレスの方が良かったかもしれん。
市役所の前に居座って生活保護を強請(ねだ)れば良かった。
クソっ
日本(アッチ)でも異世界(コッチ)でも良い事が無いな…… 何度もクソクソ言い過ぎて口癖になりそうだったくよぉ……
「だいたいよキーサーチって何だよバカにしてんのか? 」
ライターの火をつけるような遊び感覚で〈キーサーチ〉を使ってみる
トイレで大便をするような気持ちが手から出て行く。
気持ち悪りぃな…… しかも少し疲れるんか? これが魔力の消費っちゅうやつかいな?
トイレに座りながら魔法使ったら快便になりそうだぜと阿呆(アホ)な事を考えていると
▽key→800メートル
という表示が前方に現れる。
「ん? なんだこりゃ」
視覚が馬鹿になったか?と首を回すと
◁key→800メートル
と三角印が回転し変化する。
こりゃあ…… 鍵がある場所を探してんのか?
地図がありゃあなぁ…… ってか、goloogole《ゴルーゴル》マップ使えっかな?
視界の端にあるスマホの画面を呼び出してアイコンを探すとMAPと書かれたアイコンを探し出す
「マップ…… 会社名無しのMAPがあんのか? 」
とりあえずタップして起動する
立ち上がり画面は簡素に
[MAP ver.25000]
と書いてるな…… バージョン多くないか!?
ローディングが終わると周辺の地図が表示される。操作性は良くねーな。一昔前のカーナビレベルだぞこりゃ。
地図の拡大・縮小の倍率も少ないなー。
とりあえず…… お! おおお!
「800メートル先に集落があるな。よしよし。 」
俺はスマホのMAPをナビゲーションモードにして集落に向かい歩き出した。
キーサーチとスマホのMAP、優秀かもしれないな!
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