309.アキラ、クマになれず。

 「我はクマなり・・・、我はクマなり・・・、我はクマなり・・・。クマ・・・、クマ? クマ!? クマ! クマ、クマ、クマ!! 」




自己暗示をかけるように、クマのように近くにいた川魚を弾こうとする。




『バサァァァァァン!! 』




水は勢いよく弾かれるが、肝心の川魚の姿はない。それから、何度も近寄ってきた川魚を弾こうとするが、一向に獲れなかった。




「と、獲れない。」






当たり前である。




なんとなくそんな気はしていたが、ワンチャンいけるかなと淡い期待を持っていたが、現実問題そんなに甘くはなかった。




「クマすごい! あいつ等やべーよ、よく獲れるなぁ・・・。」




その独り言に精霊さんが答える。




「宿主、残念ながらクマにはなれませんでしたね。まったくと言って良いほど、程遠いものですね。どんまいです。」




おふっ・・・、精霊さん。辛辣ッ!! まぁ、ぐうの音もない御回答をいただく。




ううぅ・・・クマになれるかと思ったんだけどなぁ・・・。鮭をこうパァッーーン!! って獲れると思ったんだよ。




だが、自己暗示をかけても、変わらなかった。なんだか、そんな自分に段々イライライしてくる。




スゥゥゥゥ・・・そりゃ、そうだな。普通に考えたら、獲れないのになぜに獲れると思ったのだろうか・・・。




これがワカラナーイ(・~・)




まぁ、そういう日もあるよねと思いながら、ムシャクシャした気持ちのまま、家に帰ったらトラブルに成りかねない。




そう考え、その気持ちを一旦、吐き出す。




大きな石を手に取り、




「ドォオオオオオオリャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!! 」




と川へと投げ込む!! 




大石は空高く宙を舞って、川魚のいるところに、




「バッシャアアアアアアアアアン!!! 」




と大きな水しぶきを拭き上げて落ちる!! 




その直後、




「ガッツーーーンッ!! 」




石と石とがぶつかった鈍い音が響く。




「ふぅ・・・。」




これで、少しは気持ちが楽になった気がする。




 清々しい気持ちで、イリスの元へと戻ろうと腰をあげたその時!! 




「プカァァァァァ・・・。」




と魚が川底から浮かび上がってくる。




「な・・・、え、えぇ・・・。」




突然のことに戸惑ってしまう。なぜ、魚が浮かび上がってきたのか。いったい何が起きたと言うのか、棚からぼたもち的な状況にも関わらず、その光景に思わず、警戒してしまう。




その時、あることを思い出す。




「も・・・、もしかして、根流しっすっぺ・・・!? 」




昔見た、某国民的日ノ本御伽草子番組のホラー回が頭を過るのであった。

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