308.アキラ、川へ行く。

 「アキラ様・・・、アキラ様・・・、起きてくださいな。」


そう言って、アルテシアが僕を起こしに来る。まだ寝足りない眠気はそれを無視して、再び寝ようと試みる。


「アキラ様ぁ!! もう起きようとしませんね。あっ・・・! 」


とアルテシアは、何かを思いつき耳元で囁く。


「もう起きてくれないと、目覚めの口づけを致しますよ・・・フフッ・・・。」


その言葉を聞いた瞬間、僕は目をクワッ!! と開き目覚める。


「はい! 起きたよ!! 今、起きたよ!! 」


僕は元気よく目覚め、なんとか口づけを回避する。一方のアルテシアは、少し残念そうな様子で、


「・・・もう少し残念な気もしますが、アキラ様、おはようございます。」


そう告げる。


「おはよう、アルテシア。」


変に尖がった寝ぐせを気にしながら、僕は朝の支度をし始める。テラの家では、もうすでに全員起きていて、朝食の準備をし始めていた。


「あっ!! アキラさん、おはようございます。」


テラは、僕に一番に気付き駆け寄ってくる。


「もうアキラさんったら、寝ぐせがそのままですよ。ちょっとしゃがんでくださいね。」


僕はテラの言う通りしゃがみ、ポケーーと髪を弄られる。そうして、寝ぐせは収まるところに収まる。そして、皆で朝食を取り始める。


その内容は、定番の野菜スープに、バイソンの焼肉。それとデザートのベリー類。質素な食事である。それを黙々と僕は食べる。


食べ終わった人から、今日の作業をし始める。


「宿主、本日はどのようなご予定でしょうか? 」


精霊さんが、今日の作業を問う。


「そうだな・・・。バイソンの肉もそろそろなくなりそうだし、新たな動物性たんぱく質でも撮りに行こうかな。」


と答えて、準備をしだす。と言っても、毎度鳥獣もそろそろ飽きてきたし、今回は、川魚でも獲ろうかと考える。


そうなると、イリスの氷の魔術も必要となるので、彼女も誘ってみる。


「ん? 釣り、いいわね。面白そうね!! 」


二つ返事で了承してくれる。


 こうして、イリスと一緒に川へと向かうのであった。


『ジョロジョロジョロジョロ』


水のせせらぎが微かに聞こえて、少しひんやりとした川辺に到着する。


「よぉ~し、ここいらで、さっそく釣ってみるか。」


そう言って、イリスに一つしかない釣りの道具を渡す。初めての釣りにイリスは少し戸惑いながらも、やり方を一通り教える。


「まぁ、餌釣りだし。そんなに難しくはないよ。針に餌をプチッと刺して、はい終わりっ!! あとは根がかりって言って、底とかに針が刺さらないように気を付けて、魚がかかるのを待つだけ!! 」


一方の僕は、その場から少し離れたところで、手づかみで獲ってみるのであった。

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