307.アキラ、肴にする。

 誰も口を付けようとしない炭酸飲料を勧めてみるが、先ほどの苦さを経験しているミユ、アルテシア、イリスは遠慮気味である。




一方のまゆき、テラは見たことのない反応をする液体に、少し後ずさりをしていた。




そんな彼女らの行動を肴にしながら、炭酸ジュースを飲む。ああ、これはいいなぁ・・・と、踊りを酒に飲んでいた昔の人々の気持ちが少し理解できる。




最初に挑んだのは、イリス!!




僕の飲みかけのジュースが飲みたい!! というので、渡してあげる。飲みかけといっても、炭酸はそれなりにまだ弾けている。




「よ~~し、飲むわよ。」




イリスは覚悟を決めた様で、ジュースを勢いよく飲む。




当初は、その未知の感触に困惑した顔を見せていたが、次第にその風味が理解できてきたのか、ゴクゴクゴクとジュースを飲み干す。




「おおおおおお! 」




と皆から拍手が起こる。イリスはやりきった顔をしていたが、徐々にその顔は何かを我慢している顔へと変化し始める。




ああ、これは出るな。そう思い僕は、スゥーーーー!! っと空気を吸い込み、




「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!! 」




と大声を叫ぶ。イリス以外の彼女たちは、こちらに目が行く。イリスもそれを理解したのか、噯気を大声に合わせて出す。




スッキリとしたイリスは、




「私、このジュース好き。もう一杯おかわり。」




そう言って、僕と一緒に飲み始める。




次に挑戦を申し出たのは、アルテシアとまゆきであった。両者ともコップに注がれる炭酸の弾ける泡に少し驚きながらも、ぐいっと少し飲む。




彼女らの顔に電流が走ったかのように、止まる。そして、またもう一口。




「アキラ様、これ、うへぇぃ・・・しゅごい口の中でシュワシュワして、変な感じです。変です~~。」




一方のまゆきは、無言で飲み進める。グビグビと飲んでいき、最後の数滴を飲みほして、一言。




「大変、けっこうなお手前でした。」




まゆきは平気なようであったが、アルテシアは少し飲んではシュワシュワを感じながら、また飲む。かなり、気に入ったのかだろうか、謎である。




さぁさぁ、最後に残ったテラとミユがコップを手に取り、そして恐る恐る飲み始める。




飲んで始めは、なんともなかったが、すぐに炭酸の刺激が身体に伝わった様子で、顔が、




「><」


「><」




となった。




「な、な、なんで・・・すか・・これ・・・。」




とテラはその味わったことのない衝撃に悶絶しながら、でも再度その刺激を確かめるため、また飲む。




ミユはというと、無心にジュースを飲んでいく。目が・・・、目が・・・無なのはどうしてだろうかと疑問に思うが、拒否反応を起こしているわけではないので、放置することにした。




そうして、彼女らの初炭酸体験は、滞りなく終わったのであった。

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