297.アキラ、掻く。

 高くそびえるその山からは、異様な雰囲気を感じとる。




この山には、何かがある。そんな不安感を拭いきれない。




しかし、この山を登らなければならない。ここで、留まるわけにはいかない。なぜなら、僕には帰りたい場所があるからだ!!




「精霊さん、何かいいアドバイ・・・って、今はいないのか・・・。」




いつも一緒に居てくれた精霊さんは、今はいない。返答はもちろん返って来ず、かえって孤独感が増しただけであった。




「さみC・・・。」




まぁ、異世界来た時は、1人だったし。なんとかなるだろうそう前向きに考える。そうでなければ、この世界の不安や恐怖に押しつぶされそうだった。




「フンフンフンフ~ン♪ おいらは、山に登るよ~~。フッフッフ!! ヘイヨラホッサー!! おいらは、山に登るよ~~。フッフッフ!! ヘイヨラホッサー!! 」




そんな歌を歌いながら、岩だらけの山をエッコラヨッコラと登っていく。




けっこう登って疲労が溜まってくる。しかし、この山、登っても登っても頂上は雲の上で見えてこない。




「あああああああああああああ、つかれたもぉおおおおおおおおおおん!!! 」




と叫んで、石の上に腰掛ける。目の前には、葦原が地平線の彼方まで続いている。けっこう、この世界に来て時間が経つが喉は乾かないし、腹も空かない。




しかし、なぜか心は満たされない。このモヤモヤ感というか、虚無感というか、地味にイライラしてくる。




「なんだこの気分!? めちゃくちゃ気持ちわりぃ・・・。」




そうして、その虚無感は無視できないほどになってくる。




 満たされない・・・、満たされない・・・。そうして、身体を掻きむしり始める。そうすれば、落ちつくかと思って。




少しの痛みが脳内に伝わる。すると、不思議なことに若干落ちつく。だが、すぐにまた掻きたくなる。そして、掻く・・・、掻く・・掻く・掻く掻く掻く。




掻く掻く掻く掻く掻く掻く掻く掻く掻く掻く掻く掻く掻く掻く掻く掻く掻く掻く




掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻掻




気がついた時には、身体中から血が垂れ出す。その光景を目にしても、手は止まらず掻き続ける。




このままでは、駄目だと頭はわかっているのに、身体が言うことを聞かない!!




何か気を紛らわさねば!!! 必死にそのことを考える! 考える!




何か! 何か! ないか!! 




その時、咄嗟にある言葉を口ずさむのであった。

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