268.アキラ、喰われる。
黒き巨体が眼前に迫る。
「グォオオオオオオオ!! 」
その唸り声が森に響く。
「宿主、次の手を!! 」
その声にハッと気付き、すぐに二発目の矢を手に取り構えようとするが、しかし、一手間に合わず、黒い巨体に勢いよく体当たりされる。
痛みを感じた瞬間、身体が宙へと突き飛ばされて、遠く離れていた大木に
『ドガァッ!!』
とぶつかり、身体の至る所に激痛が走る。その痛みで意識が飛びそうになりかける。
だが、黒き巨体は追撃を止めず、こちらに向かって来る。
黒き巨体から、白く光る牙が見える。その場から逃げようとするが、足が思うように動かない。
黒い巨体は、動けない僕の身体に噛みつく。
『メリメリ』
と骨が砕ける音と同時に激痛が走る。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!! 」
激しい痛みにより、声を荒げてしまう。それでも、頭はなんとかこの状況を抜け出そうと腰につけているナイフを取ろうするが、巨体がそれを遮る。
その時、精霊さんが叫ぶ。
「宿主、目を狙ってください!! 目を!! 」
その声に藁にもすがる思いで、黒き巨体の両目を抉る。クマは大きな声を出して、怯み、僕の身体を離す。
地面に叩きつけられながら、ナイフを手を伸ばそうとする。
だが、クマはすぐに怯みから立ち直り、大きな口が再び襲いかかってくる。その時、クマが苦悶の唸り声を上げる。
「グヷァアアアアアアアアアア!! 」
「ボチュ、逃げて!! 」
ハチがクマの足首に喰らいつく。その決死の奮闘により時間を稼いでくれたことにより、咄嗟にナイフを手に取り、電流を込めてクマの胴体に投げつける。
投げナイフは、一回転しながらクマの胴体に突き刺さる。
次の瞬間、刺さったナイフから電流が放ち、クマに渾身の一撃を加える。続けて、二本目も投げようとするが、雷撃に怯んだのか、オヤグマは子供を連れて、一目散に森の中へと逃げていく。
助かったのかと一瞬、安堵するが、自分の中から血が溢れ出る感覚がそれをかき消す。
徐々に意識が遠のく。
「宿主、すぐに止血してください!! 出なければ死んでしまいます!! 」
精霊さんの声かけで、意識を目覚めさせて、すぐに出血部位を電流で焼き切る。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!! 」
鋭い痛みが全身を駆け巡り、再度、意識が飛びかけるが踏ん張りながら、応急処置を行っていくのであった。
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